第3話 デート
色々計画を練っている内に、あっという間に日曜日になった!結局、映画見て昇の進めてくれたと事でご飯食べて、いつもの喫茶でお茶するぐらいしか考えられなかった・・・・。多分才能が無いのだろう。大丈夫だ!大丈夫なはず!大丈夫だよね?だんだん不安になって来るが、もうすぐ約束の時間なので外に出る。デートで気を付ける事《第1番待ち合わせでは15分前には着いておく》を目指して早めに家を出た。
早すぎたかもしれない――25分前に着いてしまった。仕方なくスマホを弄りながら時間を潰す。
「何だお前、今日デートなのか?」
「あ、はい」
「店の前にいつまでも突っ立てるんなら、珈琲の一杯ぐらい飲んで行けよ。掃除の邪魔だ」
彼女はここの店員の香月楓だ。少し口調は荒っぽいが、結構かわいい。ショートヘアーで少し茶色掛かった綺麗な髪をしている。昇がしょっちゅう声を掛けるので、僕までバッテリ覚えられている。ナンパ野郎の親友として・・・・・なんか嫌だ。
「すいません。もうすぐ来ますので。帰りに飲んで帰りますね」
「チッ、ナンパの親友が色気好きやがって」
このとうり、昇はナンパと呼ばれている。綺麗な女性を見つけたら、すぐに声を掛けるからだ。まあ自業自得なのだが。しかもナンパが成功しているところを見たことない、本人曰く現在68連敗中らしい。まあ見ていてイラッとくるナンパなので、当然なのかも知れない。顔は結構いいのに何だかもったいない。
「あ!朝霧さん」
「すいません、待ちました?」
「いえ、今来たところです」
ボソッ「二十分以上前からいるくせに」
王道の会話だ。楓さんには、何か言われた気がするけれど、気にしないでおこう。とにかくこの会話は絶対にデートで必要なものだ!と信じている。映画の中の待ち合わせでも何度も見たから間違っていないはずだ。
デートで気を付ける事にも書いてあった次にする事は、相手の服装を褒める!朝霧さんの今日の服は落ち着いた感じに仕上がっている。つまり大人っぽいという事だろう・・・・たぶん。ファッションにはそこまで自信がないけれど、当たっているはずだ!突撃~~~!!
「その服、大人っぽくて良く似合ってますね!」
「まあ、ありがとう!」
僕の顔が火を噴くほどに赤くなっているのが分かる。鼓動も相手に聞こえてしまうか心配になる程、大きな音を立てて鳴っている。ばれると恥ずかしいので、顔を思わず伏せてしまった。絶対変な人と思われてる。でも言えただけましだろう。相手の服を褒めるだけでこんなに緊張するとは思わなかった。そう思うと誰彼構わずナンパできる昇って結構すごいんだな~。まあ尊敬はしないけど。
「せっかくお友達になれたのだから、麗って呼んで?」
「れ、れ、いさん」
「私もまもるくんって呼ぶわ。じゃあ行きましょうか」
「はい」
ちょっとした会話で、胸が躍る。僕は本当に彼女のことを好きになってしまったのだろう。最近は寝ても覚めても麗さんのことを考えている。一目ぼれで人を好きになることは無いと思っていたけれど、自分がなってしまった。一目ぼれは大体顔を見てするものだから、なんか嫌だったんだけど・・・・・。朝霧さんは性格も良さそうだから良いはずだ!
映画館への道中ではやはり映画の話で花を咲かせ、ペチャクチャと止まることなくしゃべり続けている。デートがこんなに楽しいなんて!まるで夢の中に居るようだ。
「映画、楽しみですね」
「そうね、私××××監督のファンだからすごく楽しみね」
「僕は××××監督の作品は、最初の作品□□□□が一番好きなんです!」
「実は私もなのよ!なんだかすごく気が合うわね!」
「はい、なんか嬉しいです!」
色々と喋っている内に、南映シアターと言う映画館に着いた。家から比較的近い場所にあるので、いつも利用している映画館だ。少し年季が入っているが、他より空いていることが多いので重宝している。まばらに入っていく人達も、一人やお年寄りが多い傾向にある。つまりカップルが少ないのだ。他の映画館だとイチャイチャを見せつけられたリ、騒がしかったりするので、ここもポイントが高いだろう。
「大人2枚でお願いします」
「おやまあ、今日はデートかい?」
「いえまあ・・・えへへ」
受付のおばあさんとは、良くお喋りをしているのでからかわれてしまった。おばあさんも、映画好きなので、まあまあまともに会話ができるので、暇なときに良く相手をしてもらっているのだ。初めて会ったのは僕が小学1年生のころで、戦隊物の映画を見たことを覚えている。それが僕の映画館デビューだ。その後はこの映画館におこずかいを費やしてきた。常連さんになったおかげか、たまにサービスしてくれることもある。
ちなみに、おばあさんはこの映画館がたった時からずっと受付で働いているらしい。計算すると大体40年ぐらいだろうか?昔は美人受け付け嬢で、自分目当てで来ていたお客さんもいると豪語している、ほんとかな?それは良いとして早く映画を見よう。
2時間30分後
映画はすごく面白かった。オタクの僕を唸らせる出来だった。好きな映画TOP20には入っただろう。え?低いって!何百と映画を見てきたんだから、これでも高い方なんだよ。
「ふわぁあーーーーー面白かったですね」
「ふふ、そうね」
ずっと暗いところのせいで、思わず欠伸が出てしまった。恥ずかしぃ・・・・。
「じゃあお昼にしましょう!おすすめの場所があるんです!」
「まあ、楽しみ!」
「僕の友人がおすすめしてくれた場所なんですけどね」
店は歩いて5分ほどの所にあり、僕が映画館に行くことが読まれていたことが分かる。悔しいような嬉しいような気持ちが出てきた。簡単に僕のパターンを読まれたのは悔しいが、そこまで分かってくれるのが昇ぐらいだからだ。
早速店に入ると、写真よりもお洒落で隠れた穴場みたいな感じだ。観葉植物や照明が絶妙な加減で設置されており、ここだけゆっくりと時間が流れているように錯覚してしまう気がする。入り口が余り店っぽく無いせいか、それなりに席は空いていた。看板すら出ていないのだからしょうがないだろう。しかしこんな店を見つけるとは昇も中々やるなぁ。とっておきと言うのも、頷けるおしゃれさだ。
「コーヒーとティラミスを二つずつお願いします」
ティラミスを少しづつ食べながら今日見た映画の感想を交流する。人によって映画の感じ方が違うので、新しい意見を取り入れることができて非常に面白い。気付かなかったことや、気になったことを質問し合うのも楽しいだろう。喋りながら珈琲を啜るが、残念ながら橄欖の木の味には遠く及んでない。まあ、橄欖の木の珈琲が美味しすぎるだけかもしれないが、ちょっと残念だ。珈琲好きの僕から言えば焙煎の仕方が甘いと感じてしまう。
「それで、あそこがこうであれがぺチャラクチャラ」
「なるほど!あれがああでそこがそうなってピーチクパーチク」
途中でパスタなどを頼みながら、マシンガンのようにしゃべり続ける。気付くと映画の上映時間より長く映画に着いて話してしまった。映画一個でここまで会話できる人はそう居ないだろう。スマホを見ると既に6時半を過ぎており外の日は陰り始めていた。計算すると4時間以上話したことになるだろうか?ちょっと喋りすぎたと後悔してしまう。せめてもう一か所ぐらい行けたらよかったんだけど・・・・まあいっか。
お会計を済ませて外に出ると太陽が既に沈み切っており、うっすらと西の空が光っているだけだ。暗くなった空では星が光り始め、冬の大三角をかたどっているのが分かる。気温は下がり始め、大きく吐いた息が白くなり、少し形を変えた後に消えていく。冬の空は澄み切っており、多くの星が光り始めていた。
「ねえ、今から行きたいところがあるんだけど、いい?」
「はい!大丈夫です」
本当は少し疲れたけれど、ここで帰るのは無いだろう。一生後悔する気がする。
「少し歩かなきゃいけないんだけど・・・・」
「大丈夫です!」
こうして僕は何処かへ行く事になった。