第2話 約束
しばらく経つと、朝霧さんが飲み終わったようレジにお会計を払いに行く。
「お嬢さん、忘れ物してるよ!」
「あら、ありがとうございます」
どうやら席に忘れ物をしたらしい。僕の席の前でターンする。その時朝霧さんの手提げが、僕のコーヒーに当たりズボンにこぼれた。さいわいコーヒーは冷めていたので、火傷することは無かった。
「すいません! すぐ拭きます!」
ポケットからハンカチを取り出し僕のズボンを拭き始めた。真っ白なハンカチが茶色く染まっていく。何だかこっちが悪い気分だ。
「大丈夫です、火傷はしてないので! 気にしないでください!」
「でも早くしなきゃ染みが――そうだ! 家が近いから洗濯させてもらうわ」
すごくラッキーだ!今まで話しあぐねていたのに、家にまで行けそうだ!天は僕に味方したのか!
「じゃあお言葉に甘えて」
「私が悪いのだから、気にしないで。じゃあ、早い方がいいから今すぐ行きましょう」
「ああそうだ、僕の分はこれから出しといて」
コーヒー代を昇に渡す。親しき中にも礼儀ありは、大切にしなくてはいけない。すると昇が顔を近づけ
「がんばれよ! 俺は隣のお嬢さんにアタックするから!」
と小さく激を飛ばしてきた。何だか少し恥ずかしい。きっと顔が真っ赤になっているだろう。昇はいつも道理ナンパもするつもりらしい・・・・それだけが昇の欠点だと思う。
「それじゃあ行きましょうか。」
「はい」
「そういえばお名前なんていうの?」
「き、桐生護高2です!」
緊張して声が上ずってしまった。かっこ悪い・・・
「私は朝霧麗というの、よろしく」
「あ、はいよろしくお願いします」
無言のまま店を出て、話のネタをあれこれと考えている内に朝霧さんの家に着いてしまった。
「そんなに綺麗じゃないけど上がって」
「おじゃまします」
家の中は小奇麗にされており、センスの良い家具が置かれている。そして何か嗅ぎなれない臭いが・・・・まあどうでも良い事だがなぜか気になった。
「履けそうなズボンがこれ位しか無いけど大丈夫?」
「だ、大丈夫です」
「じゃあこのズボンに着替えてくれる。ああ、もちろん隣の部屋に行くわよ」
そういって部屋を出て行った。部屋を見渡すと映画グッツが所々にあり、カラーボックスには大量の映画が収納されていた。どうやら映画好きのようだ。少なくとも400枚以上あるだろう。これは僕以上のオタクかもしれない。映画のジャンルも様々で色々手を伸ばしているようだ。所々に僕のお気に入りの映画が見える。観察している内に着替え終わった。
「着替え終わりました~~」
合図してしばらくすると、朝霧さんが戻ってきてズボンを持ってまたどこかへ行った。多分洗濯機に行ったのだろう。帰ってきたら映画の話をしよう!たぶん僕が唯一まともに喋れる話題だ。一分ほどすると戻ってきた。
「ありがとうございます。それで、あの、映画お好きなんですね」
「ええ、私のただ一つの趣味よ。毎日二・三本は見てるわ」
「実は僕も映画が好きなんです!まあ好きすぎて、まともに話し合える相手がいないんですけど・・・」
「そう、実は私もなのよ!映画が好きな人も、マイナーな作品になると一切会話が続かないのよ」
「確かに、何言ってんの(*´Д`)みたいな顔されますからね!」
「じゃあ一番好きな作品は何?」
「やっぱり○○○○ですかね?でも△△△△も・・・・」
「たしかに□□□□監督の作品は良いわよね!私も××××とかをよく見るわ」
「その映画は☆☆☆☆なシーンが感動できますよね!」
「特に私は・・・・・・・・・・・・」
映画について喋っていると三時間以上が経過していた。映画についてこんなに語り合ったのは初めてだ。楽しすぎて、つい長居しすぎていた。それにしても、こんなに馬の合う人は初めてだ。話す話題全部にしっかり乗っかてくれる。難しい話やマイナーな作品についても良く喋った。
「すいません、すっかり遅くなっちゃって。じゃあもう帰りますね」
「まって!まだズボン返してないわ」
「アッ!すっかり忘れてました・・・・」
おしゃべりに夢中になりすぎたせいで、うっかり本来の目的を忘れていた。ズボンを洗濯しに来たんだったな。
「そういえば、今、上月監督の作品が上映されてるんですけど、今度一緒に行きませんか?」
「それ実は私も気になってたのよ!いつだったら良いかしら?」
「明後日の日曜日なんてどうでしょう?」
「用事は・・・・・無いわ!それじゃあ明後日の9時に橄欖の木の前で待ち合わせましょう」
「では、今日はお邪魔しました。すごく楽しかったです!」
外へ出ると既に日は陰り始めており、所々で街灯が灯り始めている。最近まではチカチカと弱々しく光っていた街灯は、LEDに替えられており、暖かみのない白い光がくっきりと僕の影を映し出していた。
家に帰って、ご飯を食べ終わって直ぐに今日の戦果を昇に報告する。
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朝霧さんと映画の趣味が合って、何時間
も喋った!!!
ウオォ~~~スゲーじゃん!その後は?
明後日に映画に行くことになった!
すげーー!恋愛に奥手な護がデートの約
束までいったのか!!わしゃ嬉しいよ!
(´ー`*)ウンウン
なにその保護者みたいな感想(笑)
そうだ!俺のとっておきの店、紹介して
やるよ!
http://www.849223.com/77haruto/bindex
ぜひお願いします<m(__)m>他にも気を付
けるとこ教えて!
デートで気を付ける事40
1、待ち合わせでは15分前には着いておく
2、あらかじめルートを決めておく
3、必ず相手の服を褒める
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40、自分もデートを楽しむ!
多すぎ(笑)ありがとう
これでバッチリだな‼がんばれよ!
ありがとーーーー!(つ∀-)オヤスミー
(-_-)zzz
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この日はデートのことばかりを考え、結局眠る事が出来なかった。