第十話 3
別に東京で新しくできた友達になじめなかったわけじゃない。僕と同じように地方から出てきて下宿して頑張っている気の合う友達も結構いたし、年齢もバラエティに富んでいて、一度社会人を経験している人もいたりして、そういう人の話を聞いているのは、随分興味深かったし勉強にもなった。だけど、なんでだか西田とは特別な縁みたいなものを感じていた。だから、電車で彼と顔を合わせて以来、僕たちはしょっちゅうお互いの下宿を行き来するような仲になった。
高校生の頃、僕たちは同じ高校の普通科の理系クラスに所属していたのだが、西田と僕は特に仲が良かったというわけではなかった。
理系クラスだったから、女子より男子の数が圧倒的に多くて、同性の友達の数も多いわけだから、女子みたいにいつも決まった少人数のメンバーで固まっているというより、毎日入れ替わりの激しい寄せ集めのメンバーで大雑把に仲良く付き合っているという感じだった。だから、西田とも学校外で十人くらいのメンバーで集まって遊んだこともあったが、一対一で親密に付き合った経験がなく、かといって疎遠でもないような関係だった。
でも、なんだか僕は当時から西田に対して好感を持っていて、多分コイツはいい奴なんだろうなと思っていた。なんでそう思っていたかというと、彼はクラスで一、二位を争うくらいの成績の良さを誇っていたのに、一度もそれを鼻に掛けたことがなく、いつも控えめな態度を取る奴だったからである。
掃除の時間の終盤に、ゴミ出し当番をジャンケンで決めて大騒ぎになっているとき、トイレ担当の西田が外から教室に帰って来て、床の隅っこに集められたままほったらかしになっているゴミを箒と塵取りで集めて、いつもゴミ箱にいつの間にか捨ててくれていた。教室の掃除なんて自分に関係ないんだからほっとけばいいのに……。僕はバカ大勢に混じって騒いでジャンケンをして、なんでだかいつも負ける星の元に生まれているらしく、その後、ゴミ箱を抱えて走って焼却炉に捨てに行っていたから、西田がそうやってすでにゴミをゴミ箱に捨ててくれていることに何度も感謝する羽目になっていた。
あのとき、僕は西田に面と向かって、「ありがとう」と一度も言ったことがなかったが、実は彼に対していつも心の中で感謝していた。だから、偶然にしろ何にしろ、絶対に会うことがないだろう思っていた大都会で、西田に会えて本当にびっくりしたし、彼と親しくなるチャンスを与えられたような気がしてなんだか嬉しかった。僕は、あの頃の恩返しがこれから彼にできたらいいなと内心思っていた。




