第九話 9
「それでね、昨日ね、朝起きたら、王さんが今日は僕がご馳走してあげようと言ってくれてね、二人で自転車を漕いで、池袋の献血ルームに行って来たんだよ。そこで、ハンバーガーとアイスクリームを食べて、お菓子とジュースも貰って食べた。全部タダなんだよ! すごいでしょ? それから、公園でキャッチボールして遊んで、中国の話をいっぱいしてくれたんだよ。紫禁城は広くてすごいとか、パンダ動物園は子パンダがうじゃうじゃいて面白いとか、万里の長城は塀があるだけだからつまらないとか、餃子はお祝い事があるときに作るものなんだとか、中国は水餃子で食べるのが普通で、余ったら次の日に焼いて食べるんだとか、上海は北京より都会だから李君も劉君も王さんも上海出身の周さんに最初はビビってたけど、普通に優しい女の子で拍子抜けしたとか。それで、公園で遊んでたらまたお腹が空いたから、デパートの地下の食料品売り場に行ってお菓子とおかずを試食して、今度は秋葉原の献血ルームに行って、漫画を読んでたの。秋葉原の献血ルームって凄いんだよ! 宇宙センターみたいだったもん! そこでまたお菓子を貰って食べてた。すんごい楽しかった!」
次の日の夕方、みんなで夕飯のお好み焼を食べているときに、輝が興奮状態でみんなに話した。
「えーっ? 僕も行きたかった……」
黎が残念そうに言った。
「僕も!」
爾も言った。
「ね、輝、ちょっと訊いていい?」
僕は恐る恐る口を開いた。
「なに?」
「王さんて、献血ルームで献血してたの?」
「うん」
「もしかして、一日二回も献血したの?」
「うん、そうみたい。あ、でもね、王さん、いっぺんにしないで、半分ずつしたんだよって言ってたよ、確か……」
僕はそれを聞いてほっとした。
「でもね、なんでだか、王さんは僕にお菓子とかジュースとか全部くれて、王さんは持ってきた塩むすびを食べてた」
「……」
やっぱり、王さんには平謝りに謝らなくちゃならない。




