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東京の空の下で  作者: 早瀬 薫
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第一話 8

 おばあちゃんの話をよくよく聞いてみると、あの通りに自動販売機を置いている店主には、空き缶を持って帰っていいと了承済みらしく、それを聞いてほっとした。話をしていて、ちょうど機動戦隊サイバーレンジャーが終わったので、輝と黎に「もう、おいとましなくちゃ。それにまだ、缶拾いの仕事が残ってるんだろ?」と言ったら「うん、裏通りが残ってる」と言ったので、おばあちゃんにビニール袋を貰って、今度は三人で空き缶拾いに行くことにした。大人の僕なら、ビニール袋は一個ではなく、両手に二個ずつの四個は持てるだろうし、チビ二人でやるよりよっぽど効率はいいだろう。


 裏通りに入っても小さな飲食店があちこちに点在している地区のせいか、自動販売機もかなりの数があった。そこを一軒一軒回って、空き缶を集めた。途中、持ち主が現れて「お前! 勝手に何を盗んでいるんだ!」と僕の顔を見て怒鳴ったが、「高木のおじいちゃんの代わりに集めてるんです!」と言って、輝と黎を前に差し出すと「あ、ごめん、ごめん」と言って、許してくれた。そんなこんなで、大量の空き缶を持っておばあちゃんに届けたら、おばあちゃんはものすごく喜んでくれたが、時計を見たら時刻はもう夜の七時になっていた。


 やばい、店をほったらかしにしてたんだった、と思ったが、今日の僕のシフトは朝から夕方までで、夜は三十三歳独身の池上君と李君と玲子さんだった、ということを思い出しほっとした。ほっとしたのはいいが、家に帰ったら、「帰るのが遅い!」と光を背中に背負った佐都子がカンカンになって怒っていた。しかも僕と輝と黎は飲み残しのジュースを浴びたドロドロの恰好をしており、その恰好のせいでさらに怒りに拍車がかかったようだった。「お父ちゃん、お帰りっ!」とニコニコしながらそのドロドロの恰好にひるむことなく爾が飛びついて喜んでくれたのだが、佐都子の顔を見たら、これまたさらに顔が赤くなっていた。仕様がないので、お腹がぐうぐう鳴るのを我慢して、四人で大急ぎで先に風呂に入った。なんだか、四人で風呂に入っていると、顔がにやけてしまった。やっぱり、いいことをするのは気持ちがいい。高木のおじいちゃんやおばあちゃんの役に立てて本当に良かったと思った。


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