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第八話 9
「お母ちゃん! お父ちゃん! 大変、大変!」
黎が血相を変えて店に入って来た。黎は今日は自転車で東京ドームにデイゲームのセリーグ対パリーグのドリームマッチを友達のお父さんに引率されて友達と見に行っていて、その後、秋葉原の古本屋へ行くと言っていたのだが、秋葉原へは行かずに途中で帰って来たらしい。
試合を見た後、東京ドームを出て、神田川沿いに自転車を漕いでいたら、川に人が浮いていて大騒ぎになっていたと言うのである。浮いている人を一目見ようと黒山の人だかりを掻き分けて見たら、ブリブリの真っ白なドレスを着た女の人で、きっと爾が言っていた月子さんじゃないかと思ったと黎は興奮して言っていた。
「それでっ!? それで、その女の人は助かったのっ!? 生きていたのっ!?」
「大丈夫だと思う。助け上げるときに、動いていたから」
「そ、そうなの……ああ、良かった……」
佐都子は、その場にへなへなとしゃがみこんだ。




