第七話 9
そんなこんなでキャンプから帰ってきて、また木曜日がやってきて、リサちゃんが澪に会いに我が家にやってきた。
ところが今日はいつもと少し違っていた。なんと!リサちゃんのお祖母ちゃんも一緒にやってきた。しかも日本橋のデパートで買ったフルーツセットを携えて……。お祖母ちゃんは「リサがいつもお世話になっているから」と言って、その高価なフルーツセットをお礼にくれたのだった。
「よろしければ二階の自宅にどうぞお上がりください」と僕はお祖母ちゃんに勧めたのだけれど、彼女は「どうぞお気遣いなく」と言って、上がろうとしなかった。しかもお祖母ちゃんは、いつの間にかリサちゃんと店のカウンターでフライドポテトをお金を払って注文していた。
こういうときくらい気を利かせてくれればいいのに、うちの店で一番気の利かない藤田さんは、お祖母ちゃんからちゃっかりお金を受け取って会計していた。そして店の奥では、香苗さんがいつものように、フライドポテトを揚げていた。でもその目には、涙が浮かんいたように思う。
出来上がったフライドポテトの載ったトレイに、僕はサービスでベリーのケーキと紅茶三人分を載せて、お祖母ちゃんとリサちゃんと澪に出した。
「お祖母ちゃん、もしかして初めてフライドポテトを食べたんじゃないの?」
リサちゃんが言った。
「ええ、初めて。フライドポテトって美味しいのね」
「うん。だって、お母さんが作ったんだもん」
「そうね。お母さんが作ったんだものね」
僕はその会話を聞いて、言葉に詰まった。店の奥を見たら、香苗さんはタオルで顔を覆って、事務所に引っこんでしまった。澪も二人の会話を聞いて、ずっと笑顔だった。




