第七話 4
そしてまた次の日の夕飯が終わってから、澪がまた僕たちに言った。
「あのね、今日学校でね、どこで知ったのか分からないけど、クラスのみんながリサの万引きの件を知ってて、リサがみんなにシカトされてた」
「ええっ!?」
「多分、浩輔の仕業だと思う。だって、アイツ、いっつも人の話を盗み聞ぎして、みんなに言いふらしてるもん。今、職員室の掃除当番をやってるから、掃除してるときに先生の話を聞いたんだと思う」
「え……」
僕が言葉に詰まって何も言えずにいると佐都子が言った。
「そんな奴、ぶっ飛ばしてやればいいじゃん!」
「うん。だからぶっ飛ばしておいた」
僕は開いた口が塞がらなかったが、この二人は超頼もしいというか、危なっかしいというか、佐都子も澪もおっとりしているかと思ったら、突然驚くような暴力的なことを口走り、しかもいつも意見がぴったりと合う。つくづく親子だねぇと思って聞いていた。
そしてまたまた次の日の夕飯が終わって、また三人で同じような会話をしていた。
「今日ね、クラスで盗みがあったの」
「はぁっ!?」
「それでね、みんなで寄ってたかってリサのせいにしたから、私は一人ずつ締め上げたの」
「……」
さすがに二回も同じことを聞かされると、今日は一言も言葉が出なかった。
「だってね、健太郎が『俺の財布の中の金が無くなった』と言ってたけど、リサが人のお金なんか盗むと思う? リサはお金なんか盗まなくたっていっぱい持ってるし、人に嫌がらせするような子じゃないんだよ。この間の漫画は捕まるために盗んだのよ」
「わざと盗んだの?」と僕が訊くと佐都子は「そうだろうね」と言った。そして「お祖母ちゃんを困らせてやろうと思ってしたんでしょ?」とも言った。
「うん。私も多分そうなんじゃないかと思う」
「それで、クラスの騒動はおさまったの?」
「分かんない。今日のところはおとなしくみんな帰ったけど……」
「はぁー、明日、何も起こらなければいいね……」
と僕はげっそりしながら言ったのだった。
そして、またまたまた次の日、またもや澪がびっくりするようなことを言った。
「今日、また学校で健太郎のお金が無くなったんだけど、今度は私のせいにされた」
「……」
「でもね、私が盗むわけないから、その場で鞄をひっくりかえして、鞄と机の中の物を全部床の上にぶちまけてやった」
「……」
「出てくるわけないよね。だって、学校に自分のお金を持って行けないくらい貧乏なんだもん」
「……」
「だけど、その後、やっぱりリサが疑われてた」
「……」
そして、またまたまたまた次の日、澪が言った。
「今日……」
「ちょっと待って!」
僕は、思わず澪の言葉を止めて先に口を出した。
「今日また健太郎くんのお金が盗まれたの?」
「うん」
「それで、また、澪とリサちゃんが疑われたの?」
「うん」
「あのな、お父ちゃん、明日仕事が休みだから、学校へ行って先生に話をしてくる」
「え? マジで?」
「マジ! 担任の先生はこのことを何も知らないんだろ?」
「う、うん……」
「人の物を盗むなんて、これはれっきとした犯罪だ。大人だったら、監獄行きなんだよ。そのくらい罪は重いってことを子供らに分からせなきゃ」
「私もそう思う。先生だって、本当のことを知っておかなきゃいけないと思うし」
佐都子がそう言った。
ということで、次の日の授業が終わった午後三時半頃、学校に電話を掛け、担任の森本先生と午後四時半から話をすることになった。




