第一話 6
二人が集めた空き缶を、とりあえず高木のおじいちゃんの家に持って行くことにした。そうしないと輝と黎は発狂しそうな勢いで怒るからだった。高木のおじいちゃんの家に向かいながら、僕は二人に聞き取り調査をした。とりあえず輝に喋らせた。
「なんで空き缶を集めてたの?」
「おじいちゃんが集めてるから」
「おじいちゃんはなんで空き缶を集めてるの?」
「空き缶がないとご飯が食べられないから」
「空き缶でご飯を食べてるの?」
「バカじゃないの? だったら一個あればいいじゃん。たくさん拾う必要なんかないでしょ?」
「ああ、そういう意味じゃなくて・……」
「どういう意味?」
「だから……えーと」
ふと輝の顔を見たら物凄い恐い顔をしていた。
「空き缶が収入源なの?ってこと」
「収入源ってなに?」
「それでご飯を食べてるのか?ってことだよ」
「だから食べてないって言ってるでしょ!」
「違うってば! 空き缶をお茶碗代わりにしてご飯を食べてるんじゃなくて、高木のおじいちゃんのお仕事が空き缶拾いで、それをお金に換えてご飯を食べてるのか?ってこと」
「そうだよ! だからさっきからそう言ってるじゃん、バカじゃないの?」
「はぁ?」
「だから、お父ちゃん……」
ずっと黙っていた黎が口を開いた。
「なに?」
「あのね、おじいちゃんに空き缶を持って行ってあげないと、おじいちゃんが困るんだよ」
「うん、それは何となく分かる」
「それは分かるんだ」
「あー、分かった。こう言えば分かってもらえるかな? 高木のおじいちゃんはお仕事が空き缶拾いで、それしかお仕事をしてないの?」
「そう!」
「だったら、なんで今日は二人がおじいちゃんの代わりにお仕事をしてるわけ?」
「そんなのも分かんないの!」
そう同時に輝と黎が叫んだ。