第六話 5
「もう、お願いだからいい加減にしてよ……」
佐都子がぼやいた。
「え? 俺に言ってんの?」
「両方よ!」
「あ、俺と子供らってこと?」
「うん」
「あーあ、また、捜しに行くか……」
「当然でしょっ!」
僕は光を背負い、佐都子と二人で、あてもなく三人を捜して回った。この間と同様、近所中を捜しまわったけど全然見当たらなかった。
「おかしいなぁ」
「おかしいね」
「ねぇ、佐都子、三人は不忍池に落ちたって言ってたよね?」
「うん」
「上野にいるのかな」
「え? 昼に行ってたのに? でも結構ここから遠いよ。夜なのに上野まで行くかな」
「俺が子供だったら、行くかもしれない」
「あ、そうなんだ」
「行ってみようか?」
「うん」
佐都子と光を背負った僕はとぼとぼと歩き不忍池に到着したが、そこには誰もいる気配がなかったので公園の中に入っていった。夜の上野公園は不気味だった。昼間はまだ動物園や博物館を訪れる大勢の人で賑わっているが、夜は姿を消していた浮浪者が戻って来てねぐらにしているのである。
「こんな薄気味悪いところにいるのかな……」と思いながら三人を捜していたのだが、公園の中ほどまで行くと、宴会でもしているのか笑い声が聞こえて来て、その声を聞いていたらなんだかほっとした。その宴会をしている浮浪者の人に子供のことを訊いてみようかと思って、声のする方に近付いて行ったら、なんとそこに、輝と黎と寝ている爾と、物凄い悪臭を放っているぼさぼさ頭でぼろきれを纏った浮浪者のオジサンがいた。それと、大量の野良猫! 僕と佐都子は、呆気にとられてその場に立ち尽くした。
「な、なにしてるの……」
やっと口にした言葉だった。僕がそう言うと、子供たちは僕たちのほうを振り返り、「うわーっ、お父ちゃんだーっ! 逃げろーっ!」と言って、走って逃げようとしたが必死で捕まえた。
「何やってるんだ! 今、何時だと思ってるんだ!」
僕がそう言うと、浮浪者のオジサンは「まぁまぁ、お父さん、ワシも悪かったんですよ。怒らないであげてくださいよ」と言った。僕は興奮がなかなかおさまらなかったのだが、佐都子も「まぁ、いいじゃない、無事だったんだから」と言って、その場をおさめてくれた。
辺りを見回したが、やっぱり不気味だった。樹木が鬱蒼と茂っていた。夜に、こんなところに子供だけで遊びに来るなんて信じられない。けれども、その浮浪者のオジサンは、その場に相応しくない明るい口調でこう言った。
「あのね、お父さん、実はね、輝君がワシと猫に食料を持って来てくれてたんだよ」
「え?」
「お父ちゃん、兄ちゃんがね、お店の賞味期限切れのパンを美津子おばちゃんからもらって、それをオジサンと猫にあげてたの」
黎がそう言った。
「そうなんだよ。すごく助かってたんだよ」
オジサンはニコニコしながらそう言った。




