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東京の空の下で  作者: 早瀬 薫
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第六話 2

 それで、今日もうちの三バカ息子たちは、家の中で暴れまわっていたのだが、今日はいつもと違って、大変なことが起こってしまった。僕はそのとき、一階で仕事をしていたのだが、佐都子からインターフォンで連絡があった。


「一樹、大変っ! 黎の頭が割れたーっ!」

「はぁっ!? 頭が割れただって!?」

 横で聞いていた真知子さんと藤田さんがびっくり仰天していた。もちろん僕もびっくり仰天していた。

「黎の頭から血が噴き出してるっ! 早く来てーっ!」

「わ、わ、わかった! すぐ上に上がるからっ!」


 僕はそういうことだからと、真知子さんと藤田さんに告げて、店の厨房から慌てて飛び出た。

 部屋に入ると、黎の頭の皮がぱっくり割れて血が噴き出していた。黎の顔はまるでプロレスラーみたいに血まみれになっていて、澪も輝も爾も恐怖で部屋の隅に固まっていた。


「なんでこんなことになったのっ!」

「輝が突き飛ばしたら、黎が転んで、窓枠に頭をぶつけたの!」

「そんなことより、救急車! いや、俺が車に乗せて病院へ行って来る!」

「うん!」

「後のことは頼む!」


 そう言って、取るものも取りあえず急いで形成外科に連れて行ったが、診察の結果、頭蓋骨に損傷はなく皮膚が一センチほど割れているだけだと分かったので、その場で二針縫って治療が終わった。髪の毛も傷口付近だけをカットし、髪の毛が覆いかぶさって絆創膏が目立たないように、先生が気遣ってくれた。


 傷が酷いとあまり痛くないのか、黎は泣きもせずに案外平気な顔をしていて、頭を針で縫うところを真横に立って見ていた僕のほうが卒倒しそうになった。本当に、子供が生まれてから、何回病院に車を走らせたことか……。脱腸やら気管支炎やら肺炎になりかけやら、真夜中の救急センターに何度も駆け込んだ。


 しかし、子供というのはどうしてこんなに病気や怪我ばっかりするのだろう? しかも肺炎になりかけて体温が四十一度にもなっているのに、真っ赤な顔をして部屋中を走り回って暴れていたりするので、小児科の先生に「お願いだから、薬の中に睡眠薬を入れてください」と泣きついたことがあると佐都子が言っていた。とにかく今回の黎の怪我は、頭蓋骨骨折とかいう大きなものではなかったので、一安心して家路に着いた。



 黎を連れて家に帰ったら、佐都子も澪も爾も最初は神妙にしていたが、案外平気そうな黎を見てそのうち笑顔が出るようになったが、輝だけはいつまでたっても、葬式みたいな顔をしていた。やっぱり、責任を感じているんだろうな……。


「輝、黎に何か言うことがあるんじゃないのか?」

「ご、ごめんなさい……」

 そう言ってじっと俯いているので、佐都子が「輝だけじゃなくて、黎も悪かったのよね。あれだけ、家の中で走るなと言ってたのに走ってたんだから。ね、黎?」と言ったら、黎も頷いていた。


 そこで、今日はみんなで静かにしてなさいということで、佐都子が押し入れの天袋から年代物の人生ゲームを取り出してきて、みんなですることになった。その様子を見届けて、僕は再び店に戻った。真知子さんと藤田さんは僕がげっそりしているのを見て「大変ですね……」と二人同時に言葉にしたのだった。


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