第五話 10
家というか店に着いて、このハンバーガーを持ち込むかどうか真剣に迷っていた。だって、これを持って帰ったら、また水元君が落ち込むじゃないか。落ち込むどころか、今度は二度と浮上できないかもしれない。取りあえず、店じゃなくて家に持って帰ることにした。
玄関に着いてハンバーガーが入った箱を置いた。その箱の中身を見て、佐都子が呆れかえっていた。でも、佐都子は暫くして、「あ! いいことを思いついた!」と言った。
「ねぇ、一樹、お昼はどうする?」
「決まってるでしょ。そのハンバーガーを食べるよ」
「仕出しを取ったんじゃないの?」
「あれは、みんなの分だけ。僕のは取ってないよ」
「そうなんだ……。じゃ、一樹の分も取っておくね。三個は食べるでしょ?」
「うん……」
「そんなに落ち込まなくて大丈夫だよ。私がなんとかするから」
「えー……」
「今から仕事に出なきゃいけないんでしょ?」
「うん」
「行ってらっしゃーい!」
そんな感じで笑顔で佐都子に送り出されて、僕は一階の店舗に舞い戻って、無表情で仕事をしていたら、みんなに怪訝な顔をされたけど、やっぱりいくらなんでも笑顔で仕事はできないよな。あれだけ一生懸命働いて損害を被ったんだから。
午後一時になって、昼休憩になったので、家に戻ったのだが、家の玄関扉を開けてびっくりした。扉を開けると同時に、大量の子供の運動靴が雪崩出てきたのである!
「なっ、なにこれっ!?」
「あ、お帰り~っ!」
爾はいつものように僕に飛びついてきたのだが、その後ろから大量の子供がくっついてきた。僕は思わず「うわあああああ」と叫んでいた。暫くして、佐都子も大量の子供たちを掻き分けて玄関に出てきたが、「コーヒー、入ってるわよ」と言った。僕は開いた口が塞がらなかった。
「明後日、輝の誕生日でしょ? だから、電話して、誕生日会をするからって、友達に来てもらったのよ。でも、それじゃあ人数が足りないから、澪と黎と爾の友達にも来てもらったの。ハンバーガーを食べてもらえて良かったでしょ?」
「あ、う、うん……。それで、家の中に何人くらい子供がいるの?」
「五十五人」
「数えたの?」
「うん、数えた」
僕は子供でびっしり埋まっているリビングを見渡しながら、ただ「あ、そう……」としか答えることが出来なかった。
たしかに、ハンバーガーは無駄にはならなかったけど、でも、佐都子さん、やっぱり君には毎回びっくりさせられるよ……。




