第五話 4
ある日の午後八時、今日の遅番のシフトは僕と玲子さんと周さんになっていた。男性一人に女性二人のシフトなので、比較的穏やかに仕事が出来たのだが、僕がそろそろ仕事を上がろうかと帽子を取ったら、「あのぉ……」と妙に深刻な顔をして玲子さんが僕に声を掛けてきた。
「はい?」
「ちょっといいですか?」
「ええ、いいですけど、どうしたんですか? 深刻な顔をして……」
「あのですね、水元さんと李君のことなんですけど、連絡ノートを読みました?」
「え? ああ、そう言えば、ここ二、三日、読むのを忘れてたな……」
「あの二人、すごく仲が悪いのを知ってます?」
「えっ?」
「ね、周さん」
「はい、私も李君から話を聞きました」
「えー? どんな?」
「水元は、ハンバーガーの作り方が汚くて酷いって、言ってました」
「えーっ?」
「ちゃんと野菜の種類ごとに分けてステンレスバットに入れているのに、あいつがハンバーガーを作った後を見たら、ごちゃ混ぜになってるって言ってました」
「……」
「それに、冷凍庫のポテトの蓋をちゃんと閉めないから、ポテトが解凍されてることがあるそうです」
「そうなんだ……」
「それでですね、昨日、真横に水元さんがいたのに、『あんまり腹が立ったから、流しにステンレスバットを思いきり投げつけてやった』とか言ってました」
「そ、そ、そうなんだ……」
僕がそう言うと、周さんが事務所から連絡ノートを取って来て見せてくれた。そこにはこう書かれていた。
先輩を先輩とも思わぬ横柄な態度! 俺が何をしたって言うんだ!
先輩って何ですかー? 中国人なので意味がわかりませーん。
どうみても水元君と李君の書き込みだが、二つともすさまじく汚い字で書かれていて、僕はそれを見て爆笑しそうになった。
「ねー、大変でしょ?」
玲子さんが深刻な顔で僕に言ったが、僕は「そうですね」と言うのが精一杯だったが、「どうにかしなくちゃいけないですね」と返事した。




