第一話 3
今日も朝から、いつもモーニングを食べに来てくれるお客さんも全員来てくれたし、売り上げも夕方の時点で目標額を超えたし、いい日だなぁと悦に入っていたら、小学生三人の子供たちが学校から帰宅する時刻になった。
「ただいま~」
「澪、お帰り! 輝と黎はどうした?」
「知らな~い。帰り道で道草食ってたから、そのうち帰るんじゃないの?」
「道草って?」
「ゴミ箱を漁って、ペットボトルのキャップと空き缶を拾ってたよ」
「はぁ? なんでゴミ箱を漁ってるんだよ!」
「知らない」
「知らないって、ほんとにもう!」
「バカだからじゃないの?」
「そんなことはとっくに分かってるよ」
「なぁ、澪……」
「やだ!」
「まだ何も言ってないぞ」
「あんな汚い奴らに関わりたくない」
「そこをなんとか……」
「そこをなんとかできません」
「頼むから」
「頼んでも無理」
「なんで?」
「あいつら小汚いし、ごみ箱漁ってるやつなんか、知らんぷりして通り過ぎるのが常識でしょ? それにね、もうすぐリサが来るの!」
「……」
僕は、思いっきりため息を吐いた。
「……じゃあ、すまんが、お母ちゃんを呼んできてくれ」
「ほ~い」
「冷蔵庫の中に、プリンがあるから食べていいよ」
「サンキュー」
リサちゃんとは澪の仲良しの近所の友達である。それと、僕は店が暇になる午後二時から四時の間に、子供たちのためにおやつを手作りするのが日課で、プリンも僕が作ったものだった。だいたい、子供たちは友達を家に連れてくることが多かったし、佐都子も僕が作るおやつをいつも期待して待っているので、大抵は子供の人数より多目の数を作っていた。
「店長も、毎日ほんとに大変ねぇ」
パートの六十歳の美津子おばちゃんが言った。
「は、はい……」
「最近、ちょっと痩せたんじゃない? ねぇ、香苗さん」
「そうね。店にいっぱいお肉があるんだから、ちゃんと食べたほうがいいですよ」
そう美津子おばちゃんとバツイチ独身四十歳の香苗さんは、二人で高らかに笑った。