第三話 8
木曜日の午後は、小学校が終わるのが早い。なので、今日もいつものように、一番最初に澪が帰宅した。帰ってきた澪に、「輝と黎は?」と訊いたら、「道草」と言ったので、僕は「連れて帰って」と言おうとしたが、先に澪が「リサが来るからダメ」と言ったけど、よく考えたら、高木のおじいちゃんの手伝いをしてるなら、ま、いいかとは思ったが、とりあえず、「一旦家に帰ってから手伝いに行くように」と二人に言おうと思ったので、香苗さんと崔さんに一言言って、少しの時間、抜けようとしたら、二人は全部分かってると言わんばかりに、笑顔で手を振りながら、「行ってらっしゃーい!」と言ってくれた。ほんとに、うちの従業員さんたちはよく出来た人ばっかりで助かるなぁと思いながら、また出掛けた。
今回は輝と黎をすぐに見つけられたし、二人も素直に僕の言うことを聞いてくれた。三人で家に帰りながら、「今日学校で何をしたの?」と訊いたら、黎が「交流会があったよ」と言ったので、「なにそれ?」と言ったら、高学年と低学年の生徒の交流会らしい。
「それで澪とリサちゃんが黎のクラスに来たんだね」
「うん。六年生は一年生のクラスに来て、五年生は二年生のクラスに来たんだよ」
「ふーん。面白かった?」
「ねえちゃんがいなかったら面白かった」
「え?」
「だって、いっつも僕のほうを睨み付けてるんだもん」
「まぁ、しようがないよ。どうせ碌なことをしてなかったんだろ?」
「まぁね。でもリサちゃんは優しかった」
「そうだろうね。なんであの二人が仲良しなんだろ? 澪もちょっとはリサちゃんを見習えばいいのにね」
僕がそう言ったら、二人は同時に「ほんとだよ!」と言ったので笑ってしまった。
店に帰ったら、澪はリサちゃんといつものように香苗さんに作ってもらったポテトと僕が作った今日のおやつのティラミスを食べながら、一緒に宿題をしていた。毎週木曜日は、澪はリサちゃんとこうやって店で過ごすことにしているようだった。やっぱり、なんだかんだ言いながら、澪はお姉さんだし、女の子だし、輝や黎と比べるとしっかりしてるなと感心してしまう。
時計を見たら、午後五時十五分前で、五時から崔さんと入れ替わりに勤務になっている池上君が店にやって来た。もう少し気を遣って、崔さんと池上君が一緒になれるようなシフトにしてあげればよかったな……と一瞬思ったのだが、そう言えば、池上君は崔さんから振られたのだということを思い出して、いや、これで良かったんだと思い直した。でも、この二人は二人ともいい人だし、気が合いそうなのになとやっぱり残念に思ってしまった。




