第三話 5
こんな風に夫婦二人で話していたら、寝ていたはずの光が「ぎゃーっ」と言って起きた。子供たちは二間続きの和室に雑魚寝させているので、光の隣りに寝ていた澪が眠い目を擦りながら光を抱っこして、僕たち二人がいる台所にやって来た。佐都子は「多分お腹が空いてるんだよね」と光のミルクを作ったが、澪がミルクを光に飲ませてくれた。僕たちはその光景を目を細めながら見ていた。
やがてお腹が一杯になった光は、ニコニコしながら澪の膝の上に座っていた。すると澪が「ひかちゃん、こちょこちょこちょ」と言って、光をくすぐり始めた。光は「きゃっきゃっ」と言って笑い、それを見て三人で大笑いした。するとますます光は興奮して目が爛々と輝き、澪がますます調子にのってあやしまくって、真夜中なのに大変な事態になっていた。子供って、なんでだか夜に興奮するけどなんでなんだろう?
「いい加減にしなさい、澪!」と佐都子は笑いながら叱ったが、「女系家族ってなんだか平和でいいね」とも言ったので、僕も思わず頷いてしまった。しかし、「わー、あの三人はいらん子なんだ」と澪が言ったので、僕は「そんなことないよ!」と慌てて取り繕った。「でも、澪もいいお姉ちゃんになったよね」としみじみと佐都子が言った。
「そうだね。もう立派にお母さんができるじゃん。最初はどうなることやらと思ったけど」
「そうだよ。ねぇ、澪、爾の顔を真っ白にしてたのを覚えてる?」
「えー、覚えてないよ」
「あれだけ滅茶苦茶やってたのに、覚えてないんだ!」
「うん」
それを聞いて僕と佐都子は大笑いしたが、佐都子が突然、度肝を抜くようなことを言った。
「それで、日曜日は悟志君とデートに行くの?」
「うん! 行くって!」
「そう! 良かったね!」
はぁ? 今なんて言った? 確かデートだと言ったな? 小学五年生でデートだと? 許さんっ! と思ったけど、これを口に出したら、険悪なムードになることは間違いなしだと思ったので黙っていた。だけど、やっぱり女系家族は嫌だなと思った。だって、父親は年中娘の心配ばっかりしなけりゃならないってことじゃないか。息子がいると、娘ばかりに気を取られなくていい、とこのとき正直思ったのだった。




