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東京の空の下で  作者: 早瀬 薫
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第三話 2

 だから雇い主のほうは、男性だろうが女性だろうが若かろうが歳をとっていようが日本人だろうが外国人だろうが、時給千円で真面目に働いてくれるのならOKってことで、外国人の従業員も東京の飲食店では本当によく見掛ける。とくに中国、韓国の留学生が多かった。


 うちの店も例外ではなく、中国、韓国の留学生と元留学生が合わせて五人もいた。しかし、彼らは本当に凄い。何が凄いって日本語の読み書きが普通に出来る。日本語って、漢字、平仮名、片仮名と三種類も文字があるので、超めんどくさいと思うのだが、そのことを留学生のみんなに訊いてみたら、みんな一様に「めんどくさい」と言っていた。でも、この読み書きが出来ないとレジ操作が出来ない。レジスターはWindowsを基に開発した専用のシステムを搭載したタッチパネル式のもので、オンラインで本部と繋がっていた。このシステムを開発するのに一体幾らくらい費用が掛かっているんだろう? 想像するだに恐ろしいが、コンビニや宅配便システムも昨今ではみんなそうらしい。とにかく、そういうものに金が掛かっているから、人件費を抑えたいわけで、だから外国人留学生を多く雇うということになる。


 話が逸れてしまったが、うちの外国人留学生、元留学生のアルバイト生の中で、四人は中国人で、一人だけ韓国人の崔さんがいた。彼女は見た感じ、華奢な可愛い人で、とてもじゃないが三十二歳には見えなかった。しかも、崔さんは、うちの外国人アルバイト生の中でも抜群に日本語がうまかった。ネイティブジャパニーズと言ってもいいくらい流暢な日本語を話した。僕はびっくりして、「もしかして日本で生まれ育ったの?」と訊いてみたら「いいえ、生まれも育ちも韓国です。大学が日本語学科だったんですよ」と返事が返ってきた。いや~、それにしても、素晴らしい。発音も、助詞、助動詞の使い方も完璧だった。余程努力家なんだろうなと思う。


 しかし、一つだけ、僕には彼女に対する大きな疑問があった。大学を卒業して大学院にまで行き、韓国に帰ったら超エリートだと思う彼女が、なんで結婚もせずに、ハンバーガー店で一日八時間も労働しているのか? もちろん、崔さんがたくさん働きたいと言ったから、一日八時間も働いてもらっているわけである。崔さんに、これまた「なんで?」と訊いてみたら、「日本が好きなんです」と言っていた。他にも何か理由を言ってくれるのを期待したが、彼女はそれしか言わなかった。本当にそれだけなんだろうか?


 でもやっぱり、日本人でも東京で就職するのは困難だから、夢を抱いて日本に来たのに、彼女もきっとまともな会社に就職することが出来なかったんだろうなと思う。そう言えば、彼女の履歴書には大学院を出てすぐに、ある飲食店経営の有限会社に二年ほど勤めたと記載されていた。あの会社って、きっと今流行りのブラック会社だったのかもしれない。


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