第二話 9
玄関の呼び鈴を押した。すると家の中から奥さんの「はーい」と言う声が聞こえた。そして玄関扉を開けると、そこに見覚えのある僕の顔があることに気付いて彼女は驚いていた。そして僕は、「どうもすみませんでした!」とハンバーガーの入った袋を彼女に差し出した。奥さんは「あ!」とまた驚いていたが、クスクス笑いだした。
「わざわざ届けてくださったんですか?」
「はい」
「私は、持って帰るのを忘れてることを忘れてました。店長さんの顔を見て、今思い出しましたよ。また、お店にお邪魔すると思うから、そのときで良かったのに……」
「いえいえ、何度もご迷惑をお掛けするわけにいきませんから。本当に申し訳ありませんでした。では失礼します」
と二人で深々とお辞儀して帰ろうとしたら、奥さんが「あ、ちょっと待って下さい」と言って、僕たちを引き留めた。
「あのぉ、ご迷惑かもしれないんですけど、隣りの方にケーキをたくさん頂いたんだけど、良かったら食べて帰られませんか?」
「え?」
「うちはいい歳した大人二人だから、そんなにたくさん食べられないんですよ。だからもしよろしければの話ですが……。ね、僕、ケーキ好きよね?」
そう言いながら奥さんがしゃがみこんで爾に聞いたら、爾は元気よく「うん!」と答えていた。
ほんとに子供はどんなときでも正直である。断れるような雰囲気ではなかったので、僕たちはそのまま三好さんの家に上がり込んで、ケーキを頂く羽目になってしまった。家の中に入ると、旦那さんも爾を見て、すごく嬉しそうな顔をし、「どうぞどうぞ、こちらへ」と居間のソファーに案内してくれた。




