第二話 6
それはそうと、早く届けないと、作ったハンバーガーが冷めきってしまう。僕は次第に焦り始めた。
「ねぇ、爾、お昼にお店の外で火傷のおばちゃんを見かけたことがあるの?」
「うん。瀬里奈ちゃんのところへ遊びに行くときに見た」
「ふーん。じゃあ、瀬里奈ちゃんちの近くなんだね」
「うん」
「でも、瀬里奈ちゃんちってたしか、通りの反対側じゃなかった?」
「あ」
「お母ちゃんが『瀬里奈ちゃんちは通りの向こう側だから、危ないからちゃんと横断歩道を渡りなさい』、っていつもうるさく言ってなかった?」
「そうだね」
「違う子の家じゃないの?」
「うーん、そうかもしれない」
「こっちって、啓太君の家じゃなかった?」
「そうだった……」
二人でそんなことを話しながら、十字路に来たので、僕は「まだ、真っ直ぐでいいの?」と爾に訊いたら彼は「うん」と答えた。それでどんどん進んでいったら、道がどんどん狭くなってお終いには無くなり、家に突き当たってしまった。僕は「ほんとにこっち?」と訊いたら、爾は「うーん、わかんない」と答えた。
えーっ、マジで? そう思ったが、保育園児に期待するほうが間違ってたかと思って、「分かった。もう帰ろう」と言って、二人ですごすごと家へ帰った。仕方がないので、このハンバーガーは僕の夕飯だなと思って残り十分の休憩時間に、押し込むようにして台所で食べていたら、風呂から上がった佐都子が「あれ~、夕飯、ちゃんと作ったのに! しかも一樹の好きなミートローフ!」と言った。
「もう、早く言ってよ……」
「だって出掛けてたじゃん。帰ってきたら、すぐにあっためてあげようと思って、電子レンジの中にもうセットしてあったのよ」
「ふーん」
「じゃあ、ミートローフは明日の私のお昼ご飯ね」
と嬉しそうに佐都子が言った。
「あ、それとね。バイトの武智さんが言ってたけど、あの火傷の痕の奥さんて、三好さんていうらしいんだけど、その三好さんから電話が掛かって来たわよ」
「え?」
「今度また、お店に行くときに、タダにして貰ったらいいって言ってたらしいわよ」
「もう、なんでそれを早く言わないの!」
「だって、携帯に電話しても繋がらないからおかしいと思って、輝と黎が大喧嘩してたのに、わざわざ事務所に調べに行ったら、机の上に置きっぱなしだったもん」
「あ、そうか……」
「もうほんとに一樹っておっちょこちょいというか、ぬけてるというか、携帯くらい持って出ればいいのに……。なかなか帰ってこなかったから、結構遠くまで行ってたんでしょ?」
そう佐都子に言われて、どっと疲れが出たが、今まで黙って横で聞いていた澪に「バカじゃん!」ととどめの一発を言われて、僕はもっと疲れた。




