第二話 4
はぁ~、困った……。どうすればいいんだろう? 彼女は常連のお客様だし、また絶対に来てくれるだろうから、そのときにサービスをすればいいかなと一瞬頭を過ぎったが、これがきっかけで店に来なくなる可能性も無きにしも非ずだし、うちの従業員はおしゃべりが多いから、本社の人間が来たときに、そのままほったらかしにしたとかなんとか今日の事態を漏らすこともあるかもしれないし、できることならやっぱり自宅に届けるべきだなと思案していたら、「プップー」と二階の佐都子がインターフォンを鳴らしてきた。
「はい」
「ごくろうさま~。もうすぐ休憩でしょ? ご飯を食べに上がる?」
「いや、ちょっと……」
「え? 何かあったの?」
「うーん、ちょっとね」
「うん、それで?」
「あのさ、佐都子、顔に火傷の痕がある中年の女性のお客さんのことを知ってる?」
「あー、あのいつも旦那さんと二人で来る人?」
「うん」
「えー、よく知らないなぁ」
「はぁ……そうなんだ……」
「その人が何かあったの?」
「うん、忘れ物」
「お財布とか携帯?」
「違う……」
「……もしかして、お持ち帰りのやつ?」
「うん」
「またやったの?」
「うん」
「この間もやったばっかりじゃん!」
「うん」
「私は、やだよ」
「何が?」
「だから持って行くのはいやだって言ってるの!」
「だって、よく知らないんでしょ?」
「うん……」
すると、電話の向こうで子供たちが大声で騒ぎまくっていて、佐都子は「うるさい! 聞こえないでしょ!」と叱っていたのだが、「あれ? そうなの?」と言ってるので、僕は「何が? 何の話をしてるの?」と言ったら、「火傷のおばちゃんの家なら、爾が知ってるって言ってるよ」と言ったので、爾に代わってもらった。
「爾、知ってるの?」
「うん、知ってる」
「ほんとに?」
「うん。だっておばちゃんが、家に入るところを見たことがあるもん」
「えー、ほんとに?」
「うん」
「だったら、お父ちゃんに教えて」
「うん」
「今から二人で届けに行こう」
「うん!」




