最終話 11
「ねぇねぇ、話をまとめると、靖雄さんが、清十郎おじいちゃんの遺志を引き継いで、一樹をずっと捜してたってことなの?」
「うん。でも清十郎さんは生きてるからね。『故人の遺志を継ぐ』の『遺志』じゃなくて、『意志を貫く』の『意志』だからね」
「分かった、分かった。だから、店を開いたのは知ってたけど、どこに開いたのかまでは知らなくて、靖雄さんがハンバーガーショップ巡りをして、やっと一樹を捜し当てたってことなんだ」
「そういうこと」
「じゃあ、うちの店以外で出逢ったりしてたのはなんで? 靖雄さんが一樹の後を付けてたんじゃないの?」
「あれは単に、僕と靖雄さんが洋食好きだったから」
「え? それだけ?」
「うん」
「なんだかまだ解せないなぁ。他にも謎が隠されているような気がする……」
「別に謎なんかないよ」
「だって、靖雄さんは『秘密が隠されている』って言ってたんでしょ?」
「だから、靖雄さんが清十郎さんの息子さんで、僕を捜してたということでしょ。でも、確かに、靖雄さんは不思議な感じの言い回しをする人だとは思う。清十郎さんのことは抜きにしても、いろんなところで偶然出会うから、縁みたいなものは感じてたのかもね」
「あー、分かった! 靖雄さんが清十郎さんの遺書みたいな手紙を一樹に渡したときに、まだ清十郎さんは生きてるって言わなかったから、話がややこしくなったんじゃない?」
「そう言われればそうだね。サプライズをしたかったのかも……。でも、待てよ。あ、今、思い出した……」
「え? 何を?」
「靖雄さんは前は渋谷区に住んでたらしいんだけど、僕の店を見つけてから文京区に移り住んで来たと言ってた、確か……。僕の店を探してたとき、この辺をウロウロしたらしいんだけど、住環境がいいから気に入ったんだって。それに、職場が台東区だそうだし、文京区から通うのにも近くて都合がいいからそうしたって言ってたよ。だから、頻繁に近場の洋食店で出逢うようになったんだと思う」
「そっか! そういうことか! ああ、すっきりした!」
そんな他愛のない会話を、今日も僕は佐都子と二人で交わしていた。
上京してから、いろんな人に出逢い、いろんなことがあった。いつも楽しいことばかりではなかった。そんなとき、どうして自分は不幸なんだろう?と一人悩むこともあった。人の思いは目には見えない。見えないから存在しないと思うこともある。けれども、思いは確かに存在しているのだ。自分が「あの人は今幸せでいるだろうか?」と考えることがあるように、自分のことをそう考えてくれる人がいるかもしれないのだ。しかも一人ではなく何人もの人が……。それは、現実にあり得ることじゃないか。僕は僕のことを考えてくれたすべての人に感謝して生きていきたい。
この大都会、東京の空の下で……。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
しあわせってなんだろう?と、時々考えます。
人によってそれぞれ違うのかもしれないけれど、
やはり自分のことを理解してくれる人がいることが
幸せなんだろうなと思います。
どうか、皆様もしあわせでありますように。
そう願っています。




