最終話 10
それから、また水曜日になり、友近さんが店に会いに来てくれた。今度は、彼に来て欲しいと僕のほうから誘ったからだった。店のみんなも事情を知って、水元君も李君も美津子おばちゃんも香苗さんも彼が来るのを心待ちにしていた。僕は友近さんに「是非奥さんもご一緒にいらしてください」とお願いしていた。だから、みんなであれやこれや二人分の特別メニューを用意していたのだが、友近さんは二人ではなく三人で現れた。奥さんと、車椅子に乗った年配の男性を伴って……。
その光景に最初は少しびっくりしていたが、その年配の男性を一目見て、すぐに理由が分かった。随分変わり果てた容貌になっていたのに、あの優しい瞳だけは、十九年前と何も変わらなかったから。その場には保育園を休んだ爾もいて、「生きてたんだ!」と口走ったので、佐都子は慌てて爾の口を塞いだ。
「来てくださって嬉しいです」
僕は一言彼にそう言うと、他に言葉が見つからなくて、絶句してしまった。彼もただ、僕を見て涙を流していた。
感激の対面を果たした後、僕とみんなで精一杯心を込めたメニューを三人分作り、友近さん一家と店のみんなも僕も佐都子も爾も光も楽しく過ごした。清十郎さんは「うまいハンバーガーだね」と褒めてくれた。その清十郎さんの短い言葉こそが、僕にとって最高の褒め言葉であることは言うまでもない。
夕方になり、友近さん一家も帰り支度を始めたころ、ちょうど、うちの小学生たちも帰宅する時間になった。いつものように、何故だか年長の澪が一番先に帰宅したのだが、驚いたことに、澪はこの間公園で助けてもらった高校生のお兄ちゃんと一緒だった。なんでも帰宅途中にばったり出逢ったらしく、お礼がしたいから是非うちに来てほしいと澪が誘ったのだった。そうしたら、その高校生男子を見て、友近さんが「あれ? 卓也じゃないか!」と叫んだ。
なんと! その高校生のお兄ちゃんは、偶然にも友近さんの息子さんだった。僕を救ってくれた清十郎さんは僕に救われたと言ってくれたが、我が家こそ、友近家の三世代にお世話になりまくっていたという事実が判明したのだった。




