最終話 6
ある木曜日の午後、今日は珍しく上の四人の子供たちは全員で外に遊びに出掛けていた。木曜日というと、リサちゃんが家に遊びに来る日なのだが、最近、学校の女の子たちの間で流行っているゴム飛びの練習をしに公園に行くと言って、澪とリサちゃんは出掛けて行った。ゴム飛びはゴムを持つ人間が二人は必要ということで、黎が駆り出されたのだが、輝と爾もついでにということで、弟たち全員を引き連れて行くことになったらしい。
しかし、家を出て一時間ほど経った頃、爾だけが大泣きして家に帰って来た。しかも爾は顔と体中傷だらけになっていて、おまけに鼻血まで出していたのでびっくりした。そして家に帰って来るなり、仕事中の僕に泣きながら飛びついてきた。それにしても、あまりに悲惨な姿だったので、傍にいた花園さんや香苗さんや真知子さんまでびっくりしていた。
「どうしたっ!? また兄ちゃんにやられたのかっ!?」
「う、うん……」
そう言って爾は大泣きしているので、インターフォンで佐都子を呼んで、爾の世話をしてもらった。僕はまたかと思って大きなため息を吐いたが、爾が佐都子と一緒に店を出るとき、「輝くんも黎くんも澪ちゃんも傷だらけになってるよ」と言ったので「はぁあ!?」と思わず大声を出してしまった。
爾の話をよくよく聞いていると、単なる内輪の兄弟喧嘩ではなく、よその兄ちゃんとうちの兄弟全員で喧嘩になったらしい。僕はまたもや大きなため息を吐いた。しかし、よく考えたら、うちの子供たちだけでなく、リサちゃんも一緒だったことを思い出した。その状況を店のみんなは一瞬で理解してくれて、香苗さんはもちろん、花園さんも真知子さんも「店長! 早く行かなきゃ!」と言って、快く送り出してくれることになった。なんだか泣けた。なんでうちのみんなはこんなに良い人ばっかりなんだろう? 僕は三人に深々とお辞儀をして、店を飛び出し公園に向かった。
公園に着くと、高校生くらいの背の高い男子の姿がすぐ目に飛び込んで来た。しかし、目に飛び込んで来たはいいが、まずリサちゃんが無事かどうか急いで確かめた。リサちゃんは強張った顔で公園の隅っこにいたが、どうやら大丈夫そうだった。それを見て僕は安堵した。
しかし、この高校生男子をなんとかしなくてはならない。ま、まさか、うちの子たちはこんなでかい兄ちゃんに相手に飛びかかって行ったのだろうか? そう思ったら、ぞっとしたのだが、こんな大きい子が小さい子相手に喧嘩を売るなんて!と思うと、余計に怒りが沸々と湧いて来た。それで僕はそいつに近寄り胸倉を掴んだが、その様子を見ていた澪が「お父ちゃん! 何やってるのっ!」と叫んだ。
「何やってるのって、お前らはコイツにやられたんじゃないのか!」
「違うよ! コイツらだよ!」
そう言って、地面に転がっているやや小さめの男子二名を指さして澪は言った。その子らの顔をよくよく確かめたら、澪と同じクラスの健太郎くんと浩輔くんだった。僕は、掴んでいた高校生の男子の胸倉から慌てて手を離した。
「もおっ! お父ちゃん、酷いよ! その大きいお兄ちゃんは、うちらを守ってくれたんだから! 健太郎と浩輔をぶちのめしてくれたんだよ!」
「え……」
「お父ちゃん! お兄ちゃんにちゃんと謝って!」
もう何が何だか訳が分からなかったが、取りあえずその高校生に僕は、「どうも、すみません」と平謝りに謝った。




