第一話 10
まったく、あんなやつらに少しでも期待した僕が馬鹿だった。結局、自分のために人に親切にしてたってことじゃないか。情けは人のためならずとは言うけど、あいつらは本能丸出しの物欲の塊じゃないか! そりゃ、お小遣いが一月五百円というのは少ないと思うよ。だけど、悪いことに使わない限り、使い道に文句を言ったことなんかない。ゲームのソフトだって、毎月五百円を使うのを我慢して貯めて買うのなら、全然OKだと思っていた。だけど、小学三年と二年のチビが、そんな風にして荒稼ぎをしているなんて思いも寄らないことだった。
腹が立って寝られないので、みんなが寝静まった後、台所で一人で缶ビールを飲んでいると、佐都子が起きてきた。
「あのさぁ、そんなに怒らなくても大丈夫だと思うよ」
「はぁ? なにが?」
「あの子ら、そんなに悪い子じゃないよ」
「そうかね? 俺はさ、あいつらが人のためにいいことをしてると思って、今日はすごく嬉しかったんだよ。あいつらが生まれてこの方、こんなに嬉しい日はないと思ってたの。いつも碌なことをしないから」
「うん、そうだね。だから、すごいがっくり来たんだよね」
「うん」
「でも大丈夫だよ」
「大丈夫じゃないよ!」
「さっきね、輝がね、寝言で言ってるのを聞いちゃったのよ」
「何を?」
「『おばあちゃん、お菓子、いらない』って言ってた」
「……」
「わたしゃ、さすがに一樹の息子だと思ったよ」
僕はそれを聞いて、佐都子と二人で、明け方近くまで飲み明かした。佐都子は台所から「とっておきのワインを飲もうよ」と言って赤ワインを出してきた。よくよく聞いたら、近所のスーパーで九八〇円だったそうだけど。でも、今日はやっぱりいい日だった。
次の日の仕事が寝不足で地獄だったのは言うまでもない。




