「さぁ、これからどうなる事やら」
「やぁ、みなさん、突然呼び出してすまないね」
俺たち訓練生6人の前で、背の高い男が愛想よく微笑んでいる。だが、その風貌は威厳に満ちていた。
彼がセブンス家当主であり、エヴァシェリンの父親でもあるラムフェザー・セブンスだ。
ドゥリ教官と合流した俺たちは、彼に連れられてセブンス区内のとある高級宿泊施設に入った。
身嗜みがキチンとした従業員にこの広い豪華な応接間へと案内されると、セブンス家当主とダーツ教官が待っていたわけだ。
「さぁ、どうぞ腰掛けて」
セブンス氏は部屋中央に据えられている円形テーブルを示した。
とても大きなモノで、今いる人数なら余裕で腰掛けられる。俺たちは落ち着かなげに席に着いた。まだこの集まりの理由は聞かされていなかった。
「ふむ、ギュロッセから聞いたが、まだこの子たちには例の件は伝えていないそうだね?」
セブンス氏の問いにドゥリ教官は頷いた。
「はい。色々とゴタゴタ続きでしたので……」
教官はバツが悪そうに言った。
一体何の話だろう?
俺たち訓練生は互いに顔を見合わせた。
「ふむ……では、私から話してしまって良いね?」
2人の教官に確認を取ると、セブンス氏は俺たちの方を向いた。
やっと集まりの目的が説明されるのだ。
「率直に言おう。君たちは王剣器隊への入隊候補に選ばれたのだよ」
は?
王剣器隊ってフォース直属の部隊だろ。この国中の精鋭で構成されているのだ。その最強部隊の入隊候補だって?俺たちが?
「ふふっ、さすがに驚いているようだね。君たちも知っているだろうが、王剣器隊はフォース様が直接隊長を務めている精鋭部隊だ。選ばれる者は当然百戦錬磨の伐士たちだった」
セブンス氏は落ち着いた調子で語り続ける。
俺たちは対照的に驚きを隠せないでいた。特にルシアンは興奮しきっているのがわかる。
「しかし今年から新しい試みとして、伐士候補生の中から見込みのある者たちを入隊させ、より優秀な伐士を育て上げる計画が持ち上がったのだ。詳しい事は言えないが、魔族との争いは新たな局面を迎えようとしているらしいからね。戦力を増強させたいのさ」
新たな局面か。もしかして、【静寂の森包囲作戦】の事だろうか?
なんにしても、これは結構思い切った試みだろうな。
「候補者は国内の各養成所から優秀な上位6名が選ばれている。ちなみにこのベネルフィアの第1候補はローリングさん、君だ。第2候補はクリプトンくん、君だよ」
セブンス氏は俺とジーンキララに目を向けてきた。
あ!
俺は気づいた。
夜海の時の仮面舞踏会で、サイラスとデズモンドが言っていたのはこの事だったのか。
それとローウェイン・シックスが示唆していた事もコレに違いない。ヤツは敵情視察に来ていたのでは、と勘繰られていたな。実際にそうだったのかもしれない。
王剣器隊への入隊はフォースの名を授かるのに必要不可欠な事だ。各養成所やその街としては、将来のフォース候補を創り出すという実績を得られるし、選抜候補生は世界の上から4番目に偉い地位へと大きく近づけるのだ。
ふん、サイラスも息子を受けさせたかったろうな。あの時の愚痴も今ならよくわかるよ。せっかくのビッグチャンスを逃す事になったわけだからな。
「選抜試験は3ヶ月後、養成所が修了した後に行われる予定だ。試験内容や開催場所はまだ公表されてはいないよ……まぁ、このベネルフィアは正直言って不利な立場だ。あの夜海の攻防のせいで養成所は休止しているのだからね」
確かに。
ってか、俺としてはどうなんだろう?
正直、養成所修了後の事なんてあんまり考えてなかった。街に潜入する為のモノでしかなかったからなぁ。
王剣器隊に入隊となると、活動拠点は王都キュロアになるわけだろ?
うーん、それは今後の活動にモロ影響出るな。悩ましいところだな。て、受かる前提の話だけど。
そんな俺の考えを見透かした……わけじゃないのだろうけど、
「まぁ、受ける受けないは君たちの自由意思だよ」
と、セブンス氏は付け加えた。
「……」
俺たちはみな押し黙ってしまった。それぞれ考える事があるのだろう。俺はチラリとジーンキララに視線を向けた。
彼女はどうするつもりなのだろう?上からの命令で決めるのだろうか?
その顔はまったくの無表情で何を考えているのかわからない。
「あの……」
沈黙を破ってルシアンが声を上げた。
「質問をしてもよろしいですか?」
セブンス氏は頷いて先を促した。
「はい、あの、選抜試験から何名くらい選ばれるのでしょうか?」
至極もっともな質問だ。
セブンス氏は少し考え、
「それは断言できない事だね。フォース様次第なんだよ。ただ、見込みがある者は出来るだけ受け入れたいそうだ」
と答えた。
ルシアンは礼を述べ、再び考え込んだ。
よし、俺も1つ気になる事を。
「あの、僕からも1つ質問をよろしいですか?」
「いいよ」
「この前の夜海の攻防でフォース様が早く救援にやって来れたのは、この選抜試験の件でコチラに向かっていたからなのでしょうか?」
「うーん、まぁ、それもあるのだがね。理由は別にあるのだ。それが今回集まってもらったもう1つの目的だよ」
ここでセブンス氏は懐から取り出した呼び鈴を鳴らした。
すぐに従業員が彼の側にやって来た。セブンス氏は彼に何か耳打ちするとその従業員は、
「かしこまりました」
と一礼して部屋から出て行った。
「実は2日後、カルスコラで序数持ちの娘たちが集まってお茶会を開くのだよ」
カルスコラってのは学術都市だったな。それとルシアンとクリスの出生地だ。
「この茶会は毎年開催されているのだがね。今年はある特別な理由からフォース伐士団長と王剣器隊が護衛としてやって来ているのだ」
特別な理由とは何だ?と聞きたくても聞けないよねぇ。
「そこでだ。君たちはフォース様に一度挨拶をしておくべきだと思ってね。娘のエヴァシェリンとともにカルスコラに向かって欲しいのだ。試験を受ける受けないは関係なく、君たち全員にね」
おっと、急な展開だな。
他の者たちも驚きを隠せないでいる。
すると、扉がノックされる音が響く。
中に入って来たのはエヴァシェリン・セブンスと先ほどの従業員だった。
「やぁ、来たねエヴァ。彼らが今回の旅の同行者だよ」
セブンス氏の中ではもう既に話が着いているらしい。ま、誰も拒否なんかできないだろうけど。
エヴァは順番に同行者たちを眺めていった。そして俺とルシアンに目を留めると軽く微笑んだ。
「あぁ、そうか。既に見知った顔もあるのだったね」
セブンス氏は軽く手を打つとその場から立ち上がった。
「話は以上だ。細かい事は後で水報板で連絡するよ。では、よろしく頼むよ」
さぁ、これからどうなる事やら。
よっ!
俺、アルティメットだ!
もう、年明け前だよ。
俺、年越し蕎麦食ってないよ。
…………。
ンパ様の触手って蕎麦っぽいんだよな、なんて……あ、殺気。
と、とにかく2016年もよろしく!




