閑話 ある少女の物語Ⅱ
少女の名はイヴアリス。
彼女の豊かな黒髪は野を駆ける度に踊り、彼女の金色の眼にはあらゆるモノに対する好奇心で輝いていた。
その小さな手には白い花が握られていた。
野を駆け下りる彼女の側には、金色の小さな竜が飛び回っている。
彼の名はシャル。
イヴアリスの一番の遊び相手だ。
シャルは帝竜と呼ばれる種類の竜族であった。
帝竜は、翼竜や火竜、地竜や氷竜と言った他の竜族よりも強大な力と気品を持った種族だ。
その金色の鱗は太陽の光を反射して輝きを放っている。
今、彼らは丘の上の大樹での遊びから家に帰るところであった。
イヴアリスは野を駆け下りながらシャルに話しかけた。
「ねぇ、シャル! 明日は海岸に行ってみましょうよ?」
彼女の言葉に子竜は狼狽えた。
「それはダメだよ、イヴ。海岸で遊んでいたら、グルガンおじさんに怒鳴られちゃうよ」
するとイヴアリスはキッとシャルの方を睨み据える。
「なによ! 帝竜の癖して意気地なしね!」
「なっ、ぼ、僕は意気地なしじゃないやい!」
シャルは言い返すとイヴアリスの脇腹を突っついた。
「まぁ! やったわね、シャル!」
イヴアリスはシャルを捕まえようとしたが、彼は空高く飛び上がった。
「へへん! イヴと違って僕は空が飛べるんだもんねぇ」
「あ!ズルいわよシャル。降りて来なさいよ!」
彼らははしゃぎながら下のお城へと駆け下りて行く。
大好きな家族や使用人たちがいるお城だった。




