「これがレベル奪取の恩恵か、病みつきになりそうだ」
「トウッ!」
俺はゴブリンたちとスケルトンらの間に割って入った。
背にはスケルトンたち、対峙するはゴブリンども。
「何だてめぇ!!」
ゴブリンの1体が怒鳴った。
「俺の筋肉が、貴様らを殺せと言っている……」
「はぁ!?」
「問答無用っ!!」
俺はゴブリンの1体に狙いを定め、両手をソイツに向けた。
≪スライム体術 鉄砲突き≫!!
ゆったりとした袖から10本の触手が弾丸の如き速さでゴブリンに襲いかかる。
「がっ!?」
衝撃でヤツは後ろに吹き飛ぶ――。
≪スライム体術 粘水捕縛≫!!
吹き飛ぶゴブリンを魔手羅が絡め捕る。
「こっち来いよっ!」
俺の方にヤツを引っ張った。
足下にヤツは無様に倒れ伏す。
呻き声を上げるゴブリンを見下ろしながら俺は、
≪レベル奪取≫!!
ゴブリンの体から青い数字が飛び出し、俺の体の中に入って行く。
よし、いいぞぉ!
俺はチラッと他の者たちを見やった。
セティは率先して戦うというよりは、ゴブリンを止めようとしているようだ。懸命に話しかけている。相手もゴブリンの王子の登場とあって、狼狽えていた。
ダークエルフの娘たちはそれぞれセティの周りで戦い始めていた。見えない風の刃でゴブリンたちを次々と薙ぎ払っている。やっぱ、強えなぁ。
バイコーンたちは、高く嘶き、ゴブリンの集団へと突進して行った。うん、好戦的なヤツらだ。
「おらぁ!!」
ゴブリンの叫び声に、俺は咄嗟に前に転がった。立っていたあたりに斧が叩きつけられていた。
危ねぇ……。よそ見している場合じゃなかった。
俺に向かって襲いかかって来るゴブリン2体。俺は地面に両手を付く。
≪穴掘り≫!!
下の地面に穴を空け、足場を悪くしてやる。
タイミングを見計らって後ろに飛ぶ。
ゴブリンたちは構わず突進してきて、見事に穴に嵌りバランスを崩した。
チャァーンス!!
≪スライム体術 鉄砲突き≫!!
ゴブリンたちは避ける事ができず、モロに俺の攻撃を受けた。
おら、ダメ押しにもういっちょ!
再び鉄砲突きを行い、確実にダメージを与える。
ぐったりとするゴブリンたち。
≪レベル奪取≫!!
青い数字が俺の中に入ってくる。
へへ、レベル奪い放題だぜ! っと!
火球が俺に迫っていた。
俺は横に飛び避ける。だが、
「死ねやぁ!」
別のゴブリンが剣を振るってきていた。
「うわっ!」
辛うじて避ける俺。だが、別のゴブリンたちも加勢してきて、4体のゴブリンと対峙する事になってしまった。
これはさすがにな……。
俺は後ろへと退くが、ちょうど、壁の残骸に阻まれてしまう。
ゴブリンたちは好機とばかりに突進してきた。
「おりゃ!」
俺は袖から魔手羅を出して、壁へと食い込ませる。その要領で、壁をどんどんよじ登って行った。
「てめぇ! 降りてこいやぁ!!」
「誰が降りるか、アホ!」
ゴブリンたちは口から煙を出し始める。
火球を出すつもりだな。させるかよ!
≪穴掘り≫!!
片方の魔手羅を壁に突き付け、破壊する。壁の上端部が崩れ始め、ゴブリンたちの上に倒れていった。悲鳴を上げ、彼らは散らばって行く。
俺は壁から降り立ち、背を向けて逃げ去るゴブリンに火球を放ってやった。
その光景を呆然と見ていた別のゴブリンたちが我に返り、俺に襲いかかってくる。真ん中を先頭に、他の2体が少し遅れてくる。
「てめぇ!!」
3体か、やれるか?
それぞれ斧を振り上げるゴブリンたち。俺はヤツらの懐に突進した。
飛び上がり、真ん中のヤツの顎に膝蹴りを入れる。
「っが!!」
着地すると、両腕を左右に広げる。
≪火球≫!!
他の2体が俺の横を通る時を見計らって魔鬼理を放つ。ヤツらも勢いを付けて走っていたので止まる事ができなかった。火だるまになり、悲鳴を上げる。
俺はダメ押しに顎を押さえているゴブリンの脇腹に回し蹴りを入れた。
≪レベル奪取≫!!
蹴りを入れたヤツからまずはレベルを奪う。
そして、残りの2体からもレベルを奪おうとしたのだが、
俺に向けて振り下ろされる斧。
「くっ!?」
いつの間にか背後を取られていたのだ。
袖の中の左右の魔手羅で受け止める。そのまま掴み、蹴りを入れて斧を弾き飛ばした。
顔を歪ませるゴブリン。
俺はその体に普通の拳をぶつけた。だが、簡単に受け止められてしまう。
今度は歪んだ笑顔を見せるゴブリン。
甘いぜ、お前。
俺を掴んでいる腕を、今度は魔手羅で掴み返す。
ゴブリンは不意の感触にギョとしているようだ。
俺はヤツの腕を外側に捻ってやった。ゴブリンは苦痛に仰け反ってしまう。その隙だらけの顔面を思いっきり蹴りあげてやった。
ヤツは数歩、後ずさった。
コイツは他と違ってしぶといな。
ゴブリンは大きく息を吸い込む。鼻の孔から煙が噴出し始めた。
そして何と、自分の両手を口の中に突っ込んだ。
口の中から出てきた手には、炎が燃え移っている。ヤツはその炎の手を威嚇するように構えた。
俺はヤツの攻撃に身構えていたのだが、横から別のゴブリンが襲いかかってきた。同じく炎の腕で俺を切り裂こうとしている。
「くっ!」
俺は身を強張らせた。
「ボボボ、ボォーン!」
「ぐっ!」
突然スケルトンが飛び出してきて、ゴブリンに体当たりをした。他のスケルトンたちも俺の周りに集まってくる。
「ボ、ボボボ、ボボ、ボォーン!」
スケルトンの1体が俺に話しかけてきたのだが、何て言ってるのかわからない。翻訳が機能してないみたい。
「あの、何て言ってるかわからないけど、助けてくれてありがとうね」
「ボボボボ、ボボ、ボォーン!」
「……」
さっぱりわからん。俺の言ってる事伝わっているのかな?
「君の骨でダシを取りたい、いいね?」
「ボォーン!! ボボ、ボォーン!!」
あ、何か怒ってる。言ってる事は理解してるみたい。
「どけ、どけ、どけええぇぇ!!」
乱暴な声に振り返ると、あのしぶといゴブリンが俺を目指してやって来ていた。途中に出くわす者は、ゴブリンだろうが、スケルトンだろうが関係なく炎の手で殴りつけている。
スケルトンたちがヤツに立ち向かおうとするのを俺は手で制した。
「大丈夫だ、俺がやる。任せてくれ」
スケルトンたちは脇にどいてくれた。
俺とゴブリン、お互いに近づき、対峙する。
「殺してやるよ、仮面野郎!」
「寝言は寝て言え。そんなマッチ棒程度の火でどうするつもりだ?」
「マッチ……何だそりゃ?」
「お前が知る事はないよ」
≪火球≫!!
先制したのは俺。
ヤツは火球を左右の炎の手で受け止める。
その隙に俺はヤツの脇腹に蹴りを入れた。
「ぐっ!」
呻くゴブリン。だが、すぐに体勢を立て直し、炎の手で俺の顔面を切り裂こうとする。俺はしゃがんで避け、ヤツの腹に≪鉄砲突き≫を打ち込んだ。
ダメだ、倒せない。一撃が軽すぎる。
ヤツの炎の手が俺の右肩を掠る。
≪火纏爪≫
頭の中に浮かぶ。肉体学習が発動したのだ。
「ちっ!」
接近戦じゃ分が悪い。
だけど、今の俺には遠距離攻撃の手段がほぼない。ゴブリンの火球か尤者の灼滅槍葬くらいだ。前者は効果が薄いようだし、後者はそもそも使えるレベルじゃない。さてどうするか……。
俺は避けながら、蹴りを入れ、また避ける。
そういや、レーミア様から学習した魔鬼理があったな……。アレを使ってみるか。
俺は後方へと下がり、周りを見回した。ゴブリンとスケルトンばかり、ダークエルフの娘たちは見当たらない。よし、使って大丈夫だろう。
さすがに将軍の魔鬼理を使っているところは、見られるとマズいよね?
「どうした? 怖気づいたか?」
後ろに下がった俺にゴブリンがニヤニヤしながら言う。
「いやいや、お前の攻撃が文学の講義くらい単調だったんで、飽きてきたんだよ。そろそろケリ着けようぜ!」
俺は指をクイクイと動かし、挑発してやった。
「てめぇ! また訳の分からん事をぉー!!」
ゴブリンは俺に向けて突進してきた。
俺はそんなヤツに魔手羅を向ける。
≪血界≫!!
ヤツの足下が赤く輝く。
ゴブリンはギョとしたかと思うと、ブルッと震え、前のめりに倒れはじめた。どうやら意識を失っているようだ。
≪レベル奪取≫!!
ゴブリンの体から青い数字が飛び出す。いつもより多く数字が出てくる。
レベル奪取を終えると、改めて倒れたゴブリンを見た。
一瞬で野郎の意識を奪っちまったぜ。どういう仕組みなんだろう? と、考察は後だ。今は他のゴブリンどもからレベルをガッポリ奪わないと!
周りを窺うと、バイコーンの1匹が物凄い速さで、ゴブリンどもを蹴散らしていた。2本角が青白く輝いている。アレも魔鬼理だろうか? いいな、アレ……。
俺は途中で出会うゴブリンを殴りつけながら、バイコーンへと近づいた。彼女はジグザグな軌道でゴブリンだけを的確に蹴散らしている。
コチラに近づく瞬間を見計らって彼女の前に飛び出した。当たり屋の要領やね。
「おっと、ゴメンよ!」
俺はバイコーンの角に軽く触れた。
≪弐槍閃突≫
学習完了!
俺は着地すると、近くにいたゴブリンを殴りつけ、レベルを奪った。
ふぅ、調子に乗って魔鬼理を使いすぎたな。ちょっとステータスを確認しとくか。安全な場所は……。
その時、俺の近くをスケルトン・ライダーが通りかかった。
俺は魔手羅を使って、骨の馬に一緒に乗り込んだ。
「ちょっと相乗りさせてもらうよ!」
「ボボボ、ボボボ、ボォーン!」
「うん、ありがとう」
俺は適当に答え、現数力でステータスを確認した。
ふむ。レベル16。魔力は残り38。生命力はちょびっとだけ減っていた。
レベル奪取のおかけで魔力が増えている。だから、思ったより残っているんだな。
よし、確認完了!
俺はライダーに再び礼を言い、骸骨の馬から飛び降りた。
近くにいたゴブリンの腰に蹴りを入れて、走り去る。
こんなに戦っているのに全然疲れない。いや、それどころかどんどん力が沸いてくる。
これがレベル奪取の恩恵か。病みつきになりそうだ。
左右からゴブリン2体が斧を振るってくる。
俺は飛び上がり、魔手羅で斧を押さえつける。そして、両足を広げてゴブリンたちの顔面に蹴りを入れた。彼らは衝撃で倒れ伏す。
奪った斧2本を、今にもスケルトンに襲いかかろうとしていたゴブリンに向けて投げつける。
斧は見事に命中、ゴブリンは悲鳴を上げて倒れた。
まずは手前に倒れているゴブリン2体からレベルを奪う。
その次に斧で倒したヤツに近づこうとしたのだが、3体のゴブリンが俺を通せんぼした。その内の1体はしゃがみ込み、倒れているゴブリンを介抱し始めた。
仲間を守ろうってか。
だが、俺には関係ねぇ、お前らからもレベルを奪ってやる!
《火球》!!
右袖から火の球を放つ。
驚くゴブリンたち。
だが、すぐに我に返ったのか、口から火球を放った。
火球同士がぶつかり合い、燃え上がる。
《スライム体術 粘水捕縛》!!
俺はすかさず次の魔鬼理を発動。
3体のゴブリンをまとめて拘束した。
そして、
《血界》!!
だが、魔鬼理は発動しない。何で?
「ウオオオォォォ!!」
背後から雄叫びが上がる。
俺は咄嗟にしゃがみ込む。俺の頭スレスレを炎を纏った手が掠めた。
火纏爪か。
俺は後ろに向かって思いっきり蹴りを入れた、が、力が入りきらなかったのだろう、簡単に受け止められてしまう。
炎の手が俺の足を焼く。
「っ!!」
俺は粘水捕縛を解除し、背後のゴブリンに腕を向ける。
≪血界≫!!
今度は使えた。俺たちの足下が赤く輝き、ゴブリンが俺に向かって倒れて来る。
「うわっ!」
俺は避け切る事ができず、ゴブリンの下敷きになってしまった。
クソっ! 早く退かさないと!
「てめぇ! よくもやってくれたな!!」
頭上にはゴブリンの顔。やべ……。
「死ねやぁ!」
ゴブリンは斧を振りあげる。このまま首を切断する気なのだろう。
≪穴掘り≫!!
空いている手を地面に突き立て、すくい取った土の塊をゴブリンの目に向かって投げつける。
ヤツは斧を振り上げていたので、庇う事ができなかった。
「ぐあ! て、てめぇ!」
俺は粘水捕縛で、のし掛かっているゴブリンの体を掴み脇へとどけ、素早く立ち上がった。
すると、周囲には怒れるゴブリンの顔、顔、顔――。
いつの間にかゴブリンの集団に囲まれていた。
さすがにこの数を相手にするのはきついな。
俺が打開策を考えていると、突然、地面が赤く輝く。
しかもその輝きはこの周辺だけではない。戦場全てが赤い輝きに包まれている。
ゴブリンたちを見ると、恐怖で顔を引き攣らせて、空中を見ている。
俺もつられてソチラを向くと、
バサッ、バサッ……。
ワイバーンが翼を羽ばたかせながら、戦場へと近づいて来る。
その背には、手をかざしている女性……。
レーミア将軍が到着したのだ。
戦闘シーンを書くの難しいですね。




