表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
244/249

「いいや、こっからっすよ!」

 将軍トゥーレは、閉じ込められた部下たちの方に歩いていく。

 解放させようとしているのか?


 俺は火球をトゥーレに向けて放った。

 飛んでくる火球を、ヤツは軽く払い除けた。


「悪いけど、そいつらを自由にさせるわけにはいかないんですよね。あなたを相手するので精一杯ですから」


 トゥーレはゆっくりとコチラを振り返る。


「俺と戦おうってのか?」

「その為にここに来た」


 挑むように睨みつけていると、不意にトゥーレは笑い出した。


「ダーティ、やっぱりお前は面白いヤツだ」


 何がそんなに面白いのかさっぱりわからないが、これで大人しく引き下がってくれることだけはありえないだろうね。


「……随分と派手に大暴れしてたみてぇだな」


 トゥーレは周りを示す。そこらに魔族や合成魔人たちの遺体が転がっている。


「これを俺たちがやったと本気で思っているんですか?」


 まぁ、本当の事がどうであれ、トゥーレのやることは変わらないだろうけどな。


「それを判断するのは、お前らをとっ捕まえてからだな」


 俺は魔手羅を展開して構えた。


「前までの俺と一緒とは思わない方がいいですよ」

「……みてーだな」


 ーー《水馬の行軍》!!


 湖から水馬三体が飛び出し、トゥーレに突進していく。さっき水魔から学習した魔鬼理だ。


 オーガの戦闘スタイルは体術主体の超近接。だからこっちは距離を保った立ち回りでいく。


「水遊びか?」


 トゥーレは迫り来る水馬たちを弾き飛ばして突進して来た。


「うぉっ!?」


 咄嗟に奴ウ力で壁を創り出してガードするが、簡単に突破されてしまう。


 《豪鬼閃突》


 肉体学習が働くのと同時に衝撃で建物まで吹き飛ばされた。またかよって感じだぜ。


 お返ししないとな。


 ーー魔奴ウ《獄王の指輪》!!


 破壊された建物の破片群を高速回転させてトゥーレに飛ばす。

 ダメージを与えられるなんて思わない。牽制になればいいってわけよ。

 けど、トゥーレの野郎は避けなかった。あろうことか破片を鷲掴み、こちらに向けて投げ返してきやがった。


「ドッジボールじゃねぇんだぞ!?」


 威力が増した破片群を避けながら、俺は湖に着水した。

 

 距離とって戦っても、これじゃ意味がない。避けることも、掴むこともできない攻撃を仕掛けないと。


 ならば!


 ーー《貴光の鳴弦》!!


 辺り一面が眩い光に包まれる。

 先程イーティスから学習した魔鬼理だ。

 俺の魔手羅がハープのような形状に変化し、音撃を飛ばす。


 先程のイーティス戦と同じく洞窟を音撃が反響していく。


「次は目眩しと音遊びか?」


 トゥーレはあらぬ方向に攻撃を仕掛けている。

 魔鬼理で感覚を研ぎ澄ませているから、無駄に音や光に反応しちまうんだろう。


 この間に大技の準備だ。

 湖の水に魔力を流し込む。


 ーー《蛇水巣》!!


 水魔から学習した魔鬼理を発動する。

 水で創り出された大蛇たちがトゥーレを取り囲むように鎌首を掲げる。


 光と音撃にまだ気を取られているトゥーレに向かって水蛇たちが襲い掛かる。


「しゃらくせぇ!!」


 トゥーレは鎌のような蹴りを連続で繰り出して水蛇を消し飛ばす。


「これがお前の全力か?」

「いいや、こっからっすよ!」


 時間を稼いでいる間に俺は湖から発している光をできるだけ掻き集めていた。


 ーー光奴ウ《月光槍(ルナ・カンデランス)》!!


 光の槍をトゥーレの方に放つ。ただし、ヤツに直接狙いを定めてはいない。周囲に飛散して浮遊している水蛇の残骸、俺の魔力が込められた数えきれない程の水粒にだ。


 ーー魔奴ウ《狂月宴の冥女神(ルナティック・ケリドウェン》!!


 光の槍は魔水粒を通して分散する。

 光のシャワーとなって全方位からトゥーレに降り注ぐ。避ける事のできない光撃だ。


 いかにトゥーレと言えど光のシャワーで焼かれてはただでは済まないだろう。そこを螺旋槍で追撃してやる。


 俺は魔手羅槍に変形させてトゥーレに突進した。


「これは、いい技だなっ!!」

「そりゃどうも!」


 瞬間、視界が黒く染まった。


「あ!?」


 何が起きたのかわからなかった。

 洞窟内が暗闇に包まれた?

 それとも、俺の視界が奪われた?


 否。

 それは黒い炎だった。

 トゥーレから発せられた黒い炎が光のシャワーを焼き尽くし、さらに俺の魔手羅槍をも焼いていた。


 なんだこれは?

 新しい魔鬼理を使われたのか?

 しかし、俺の肉体学習は働かなかった。初見の技なら必ず会得できるはずなのに。


 得体の知れない炎を発するトゥーレから俺は距離を取った。


 燃え盛る魔手羅を湖に浸した。


「っ!?」


 しかし、黒い炎は消える事なく魔手羅を焼き続けていた。


 おいおい、ただの炎じゃないとは思っていたが、これはヤバいぞ。


 俺は魔手羅を根本の部分から切断した。一個武器を失うことになったが、仕方ない。


「あぁ、その魔手羅ってのは魔力の塊だったんだな。だったら消えないわけだぜ」


 トゥーレが焼き尽くされた魔手羅を見ながら話を続ける。


「この炎は《覇鬼炎》ってんだ。魔力や奴力なんかの超常なる力を焼き尽くす効果があるんだぜ」


 何じゃそりゃ?

 それってつまり、魔鬼理や奴ウ力を無力化できるってことかよ。


 あぁそうか。それが肉体学習が働かなかった理由か。発動する前に焼き尽くされて無効化されちまったんだな。


 にしてもーー


「魔族のくせして、対魔族の技を持っているんですか? まさかオーガ族にそんな切り札があったなんてね」


 俺の言葉にトゥーレは否定の意味を込めて首を振る。


「いや、これは他のオーガたちは使えんぜ。俺も詳しくは知らねぇが、"鬼神"と呼ばれる特別なオーガだけが使えるんだとよ」


 鬼神?

 これまた物騒な名称だこと。


 いや、参った。とんでもなく強いことはわかっていたが、ここまでとはな。


「覇鬼炎は負担がでけぇから、あんま使いたくないんだよ。それを使わせたんだから、お前はえらく強くなったもんだな」


 トゥーレは嬉しそうに俺のことを褒めてくるが、どうでもいいわ。


 魔鬼理や奴ウ力が通じないこの鬼神相手にどう立ち向かえってんだ?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ