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異世界侵略っ!? ~魔人転生した俺は、邪神様の為に今日も働くのだ~  作者: 一本坂苺麿
第2章 ゴブリンのゴブリンによるゴブリンのための戦い
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「ゴブリン勢VSスケルトン勢。世紀の魔物バトルやね」

 ワイバーンの鞍上、俺たちの間には重苦しい雰囲気が漂っている。

 それは、前方に見えてきたスケルトン領から黒煙が漂っている為だろう。時々赤い光も見える。ゴブリンどもの魔鬼理によるモノに違いない。

 空はいつの間にか厚い雲で覆われており、さらに不安を募らせた。


「……えぇ、わかったわ。もうすぐ着くから」


 ミカラは見えない誰かと会話している。彼女たちダークエルフが使う風の魔鬼理によるモノだ。


「今からあのあたりに降りるわ。そこでセリスたちと合流するの」


 彼女は真下にある林を指した。

 そこからなだらかな斜面を降り切ったところ、広い盆地になっているのだが、そこを中心とした一帯がスケルトン領らしかった。


 ワイバーンはゆっくりと林のすぐ近くに降り立った。

 俺たちが下りると、ワイバーンは地面に這いつくばった。どうやらここから動くつもりはないらしい。


「ちょっと、ワイバーンは一緒に戦わないんすか?」


 俺は林に分け入って行くミカラに声を掛けた。

 だってさ、ワイバーン強そうじゃん。ゴブリンの暴動を抑えるのにコイツの力もいるんじゃないの?


「ワイバーンは長距離移動の為に体力を温存しておく必要があるのよ。戦闘には参加させないわ」


 答えてくれたのはミカラではない、林の奥からやってきたセリスであった。


 てか、ワイバーンってタクシー扱いじゃないか! それでいいのか、翼竜よ……。


「ご苦労だったわね、セリス、シャーナ」


 セリスの隣にはシャーナがいた。昨日と同じく長い銀髪を後ろで束ねている。


「そこのゴブリンがセトグール王子ね、そして……ダーティ? 随分と見た目が変わったわね? そんな顔してたんだ」


 そうか、セリスたちは髪切る前の俺しか知らないんだったな。

 俺は顎に手を当てた。


「惚れたっすか?」

「言ってろ、バーカ!」


 シャーナちゃん、ひどい……。


「それで、状況は?」


 ミカラが2人に問い掛けた。


「五分五分ね。ゴブリン約800体に、スケルトンが約1000体ってところ」


 セリスが答えた。


「これからどうする?」

「まずは廃城の"リッチ"と合流しましょう」


 セリスの提案にシャーナとミカラが頷く。

 ちょい待ち、話についていけてない。


「あの、"リッチ"って誰ですか?」


 すかさず話に割り込ませてもらった。


「骸骨の巫女よ。スケルトンは彼女が統率しているの」


 答えてくれたのはシャーナ。

 なるほど、つまり、スケルトンの女王的な存在か。


「まずは彼女と合流し、スケルトンたちと連携してゴブリンたちを食い止める、レーミア様が来られるまでね」


 俺はセティを見やった。彼の表情は硬い。


「大丈夫か、セティ?」

「……はい。統率者として、同じ同胞として、彼らの行いを見過ごす事はできません! 私も戦います!」


 その表情は硬いながらも強い意思を秘めていた。

 お前は強いよ、セティ。いやマジで。


「その活きよ、セトグール。じゃあ行きましょう!」


 セリスを先頭に俺たちは林の中を駆けた。

 鋭い口笛を吹くセリスとシャーナ。すると、バイコーン2匹が右手の木々の間を縫うように走って来る。


「シャーナはダーティとミカラはセトグールと乗って」

「えー! またこいつと一緒に乗るの?」


 セリスの指示にシャーナが不満下な声を上げる。


「わがまま言わないの! 時間がないのよ?」

「わかってるけど……」


 俺はシャーナの横に並ぶ。


「まぁ、そう言わないでよ、シャーナちゃん。昨日ちゃんとお風呂入ったからさ、臭くないよ? ほら!」

「ちょ、ちょっと! そんなにくっ付いて来ないでよ!」


 ウヒョヒョヒョ! やっぱ、シャーナちゃんはええなぁ! おいたんハッスルしちまうわい!

 だがこの瞬間、俺はロイの事を思い出す。シスコンのロイ、厚い胸板の持ち主であるロイ。そういえば、あいつも別働隊として来てるんだったな……イチャイチャタイムはちょっと控えとこう。


 俺たちはバイコーンに跨り、林の中を一気に駆けだした。

 横にはミカラとセトグールが乗るバイコーン、そして後ろには宙を滑空するセリス。


「ちょ! セリスさんが宙に浮いてるよ!?」


 前のシャーナに向かって声を張り上げた。


「風の魔鬼理よ。魔力の消費が激しいから普段は使わないの」


 セリスの動きは優雅で、まるで踊っているようだ。

 それにしても、ダークエルフの魔鬼理って強力じゃね? なのに彼女たちも低魔族なのか。


「林を抜けるわよ」


 シャーナの言葉で、俺は前方に視線を集中させる。

 最後の1本の木を通り過ぎると、眼前に広がるのは緩やかな斜面。そしてその奥底の盆地には大きな廃城に、いくつかの崩れかかった建物が密集している。ところどころに枯れ木が立っており、陰鬱な雰囲気のアクセントになっていた。このどんよりとした雲もいい。クラシックなオカルト要素満点だぜ。

 だが、その雰囲気を塗りつぶすような黒煙が、曇り空へと昇って行く。


 俺たちは林の端で立ち止った。


 廃城の周辺、乾いた大地には数多くのゴブリンたちが手に武器を携えて、城の中へ入ろうと突進して行く。統率された動きではない。自らのしたいように暴れまわっているようだ。

 そして、その暴れまわるゴブリンと対峙しているのは、動く骸骨たち……。


 骨だけの体にボロ布を纏い、手には錆びついた剣や槍を握り締め、ゴブリンたちに立ち向かっていた。喧噪の音がここまで響いてくる。

 スケルトンたちだ。こちらも数が多く、ゴブリンとスケルトン、あっちこっちで戦いを繰り広げていた。


「私、ステファニー! 見て! 探偵さんがあんなにたくさんいるわ!」

「お前、何言ってんの?」


 女の子の声マネをする俺。それにツッコむシャーナ。

 あぁ、ちゃんとツッコんでくれる、俺は幸せだ。


「ありがとう、シャーナちゃん!」

「はぁ? 頭おかしいじゃないの?」


 うん、その反応や、良し。


「そんな事より、これってもう戦争じゃない?」

「いやいや、この程度は戦争とは呼べないわ」


 シャーナが苦笑する。

 マジ? こんな規模なのに?


 見ろよ。大勢のゴブリンとスケルトンが戦っているんだぜ?


 ゴブリン勢vsスケルトン勢。世紀の魔物バトルやね。


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