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「なんであんな野郎の為に命を張るんだ?」

「覚悟しろ、だとぉ!?」


 ベルトールの体中に血管が浮き上がっている。本気で怒らせたっぽい。


 さっきはカッコつけちゃったけど、相手は魔王軍の将軍クラスなのだ。クソ野郎とはいえ、油断はできない。


 マジで片腕落とせといて良かった。ホントは不意打ちで始末できればよかったけど、さすがに無理だった。


「調子にのるなよガキがあぁぁ!!」


 ベルトールの皮膚が隆起し始める。竜形態に変身しようしているのだろう。


 させるかよ。


 俺は魔手羅2本を湖に叩きつけて加速、ベルトールの側まで一気に詰め寄った。


「なっ!?」


 ベルトールは面食らった顔をしている。俺はそんなヤツに向かって魔手羅槍を突き出す。狙うは負傷している右側の腕の付け根!


 すると、黒い槍とベルトールの間に不意に割って入る影があった。


「ごふっ!」


 ベルトールの部下の3人の内の1人がその身を呈して野郎を庇いやがった。


「こんのっ、クソがあぁぁ!!」


 ベルトールは巨大な尾を払って部下諸共俺を弾き飛ばした。


 湖に叩きつけられる。まじ痛い。

 あの野郎。自分を庇った部下を何だと思ってやがる。


 半身まで浸かった湖に違和感を覚える。

 俺の真正面に対峙するベルトールの部下に向かって水が流れていくではないか。


「アーティ、気をつけろ! 水魔だ!」


 ファントムの声と共に湖の水がせり上がり、それは何頭もの馬の形となって俺に突撃してきた。


 《水馬の行軍》


 肉体学習が働くと同時に俺の体は水底の月の建物まで吹き飛ばされた。


「グチャグチャにしてやるぞ、小僧ォォ!!」


 完全な竜形態となったベルトール。

 それは竜というよりも、醜く巨大化したワニのような形態だ。Z級モンスターパニック映画に出てくるようなタイプね。


 Z級ベルトールは俺の方に向けて大きく口を開けると、その中から巨大な岩石を吐き飛ばして来た。


「ったく、どんなゲロ攻撃だよ!」


 迫り来る岩石を飛び避ける。岩が当たり建物の支柱がいくつか破壊されてしまった。


 ベルトールの攻撃に合わせるように水魔も攻撃を仕掛けてくる。避けてばかりじゃ埒があかない。


 飛んでくる岩石に向かって2本の魔手羅槍を構える。


 ーー《螺旋槍閃突》!!


 ドリルで岩石を破壊する。

 周囲に飛び散る岩石の破片。


 ーー《獄王の指輪(サタンズ・リング)》!!


 破片となった岩石群が俺の周囲を高速回転する。


「お返しするぜ?」


 岩石群をベルトールたちに向けて飛ばす。

 水馬を弾き飛ばしながらそれらはベルトールたちに着弾する。


「ぐおおぉぉぉッ!?」


 ベルトールが痛みに雄叫びを上げる。

 いかに硬質化した地竜の皮膚といえど、獄王の指輪の破壊力ではタダで済むまい。


 俺は滑空しながら、両手を湖に浸す。奴力を湖に流し込む。


 ーー《水煉・瀑》!!


 底から迫り上がるように水が盛り上がり、爆発的な勢いでベルトールたちに襲いかかる。


 これで水魔の魔鬼理を一時的に抑え込めた。それにベルトールの視界も逸らすことができた。


 魔手羅槍を構えて一気にベルトールの懐に向かう。


「でめぇ! うざんげんじゃねえぇぇッ!!」


 ベルトールの凶悪の尾が振り下ろされる。だが、前足の一本を失っているので踏ん張りが効かないようだ。勢いは弱く、狙いも外れている。不意打ちで切断できていてよかったぜ。


 ーー《スライム体術 粘水捕縛》!!


 スライム状になった魔手羅をベルトールの尾に巻き付ける。

 ベルトールは口を大きく開けて俺に喰らい付こうとしてくる。それをさらに飛び上がって避けて、今度はヤツの口に魔手羅を巻きつける。

 強制的に口を閉じさせられたベルトールはくぐもった唸り声を上げながらギラついた目線を向けてくる。

 残った方の前足の爪を振り回してくるが、そこにも魔手羅を巻き付けてやる。


 歪な姿勢で身動きが取れなくなったベルトールは何やら喚き散らそうとしている。


 おそらく、


「この程度で俺を捕まえたつもりか!」


 とでも言いたいのだろう。


 もちろん、この程度で終わらせるつもりはない。


 ヤツに巻きついている魔手羅にはいくつか仕込みをしておいた。


 ーー《瀑爆丸》!!


 瞬間、ベルトールの体の何箇所かで爆発が起きた。


「うぎゃあああああ!!!?」


 ベルトールは絶叫を上げ、蒸気を放ちながらその場に倒れ伏した。

 その体は縮小していき、人型形態に戻っていく。


 俺は魔手羅槍を構えてベルトールに突進する。


「だ、だすげてくれっ!!」


 息も絶え絶えなベルトールがそう叫ぶ。

 むろん、俺はそんな情けをかける気はない。恨み怒り云々もあるが、コイツを生かしておくメリットより、デメリットの方が大きいと判断した。


「終わりだベルトール!」


 魔手羅槍をヤツの胸の辺りに向けて放つ。

 突き刺さった感触と共に血飛沫が上がる。


「てめぇ!?」


 だが、それはベルトールのモノではなかった。

 ヤツの部下である水魔が直前になって割って入って来ていた。


 流れ出た血が湖に拡散する。

 すると、いきなり俺たちの周囲にいくつもの水柱が立ち昇る。


「なんだぁ!?」


 それらは意思を持っているかの如くゆらゆらと揺れ動き、いきなり俺の方に襲いかかってきた。


 《蛇水巣》


 肉体学習が再び働く。水魔の別の魔鬼理らしい。さっきの水馬よりも強力そうな技だ。


 水蛇たちの攻撃を避けながらベルトールの方を見ると、もう1人の部下に抱えられる形で洞窟の奥へと逃げ込もうとしている。


「待てやベルトール!!」


 ベルトールに向けて追撃を放とうとするが、水蛇たちに邪魔をされて上手くいかない。

 さらに、水蛇たちは傷を負ったファントムたちにも向かおうとしている!


 不本意だが、ベルトールは後回しだ。

 まずは水魔を片付けないと。


 ーー《獄炎犬の息吹(ヘルハウンド・ブレス》!!


 熱風で数匹の水蛇を吹き飛ばす。

 真正面に水魔を捉え、炎を纏わせた魔手羅槍を構える。


 ーー《火炎槍閃突》!!


 残りの水蛇も火炎槍で焼き斬り、水魔に突き刺す。

 水魔はビクンと痙攣し、ファントムたちに迫っていた水蛇たちはただの湖の水に戻っていく。


「なんであんな野郎の為に命を張るんだ?」


 思わず問いかける俺のことを水魔は見上げてくる。その瞳はどんより濁っている。


「わだじは! 栄誉ある将軍のためにぃー!! にくにくにくにくの盾になりまするぅ!!」


 突然、水魔はそう叫んで、動かなくなった。

 正気とは思えない。錯乱しているかのようだった。


 こんな様子のヤツを前にも見たぞ。

 そう、魔都の巨神祭の時だ。古音虎のタマが暴走した事件。山中に造られていた秘密の施設にいた研究員たち。彼らの様子がこの水魔と同じような感じだった。


 セイレーンとはまた違った洗脳方法。あの時もベルトールが関わっていたが、ヤツの魔鬼理ではない。


 一体何者の仕業なのだろう?



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