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異世界侵略っ!? ~魔人転生した俺は、邪神様の為に今日も働くのだ~  作者: 一本坂苺麿
第2章 ゴブリンのゴブリンによるゴブリンのための戦い
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「どこの世界にもくだらん差別はあるんだな」

「……ゴブリン領ですか?」

「そうよ」


 ゴブリン領か。そう言えば、昨日の会話でもそんな事言ってたな。


「ゴブリン領で何をするのですか、レーミア?」

「レーミア?」

「あっ……」


 しまった! 昨日のンパ様との会話のせいで、呼び捨てしてしまった!


「ジェネラル・レーミア! ボンサーイ!」


 俺は適当に誤魔化した。


「……まぁ、いいわ。でも、今度気安く呼び捨てにしたら覚悟しなさいな」


 レーミア様の手が鞭に触れる。


「肝に銘じておきますデス」


 レーミア様が頷く。


「よろしい。では、先程の質問に答えてあげましょう。ゴブリン領では、このセトグールの戴冠式を行うわ。私たちがその儀式を取り仕切るの」


 俺はセトグールの方を見た。

 物静かに佇むその姿は、確かに王の威厳を備えているのかもしれない。


「では一度館に戻って打ち合わせをしましょう。ダーティ、セトグール、あなたたちもついて来て」


 レーミア様はそう言うと、広間にある階段から下りていく。俺たちも後に続いた。

 階段を下りると、上と同じような広間になっていた。

 いくつか魔族の姿が見える。

 彼らの視線は俺とセトグールに向けられていた。レーミア様の後に付いて歩く俺たちを失礼なくらいジロジロ見てくる。

 俺に対する視線は好奇によるモノだろう、まぁ仕方ない事だ。だけど、セトグールに向けられるあの視線は何だ? 嘲りや嫌悪の眼差しに思える。


「この魔王城を、醜いゴブリンが歩いている。何と汚らわしい」

「ゴブリンの王は勝手な行動を取って殺されたらしいぞ、愚か者さ」


 などと言う会話が聞こえてくる。わざわざコチラに聞こえるように言ってやがるな。

 後方のセトグールを見ると、平然とした面持ちであった。彼の心の中にどんな思いが渦巻いているのかはわからないが、ソレを全く表情に出していない。慣れているのかな?


 俺たちは広間を抜け、再びを回廊を進んだ。

 すると、前方から魔族の一団がやってくる。先頭の魔族はでっぷり太った体を赤い甲冑で覆っている。


「よう、レーミア!」


 先頭の魔族がレーミア様に声を掛けた。


「……ベルトール」


 レーミア様の声には感情が籠っていない。


「聞いたぜ、面倒な事になったらしいな、気の毒になぁ!」

「お気遣いどうも。だけど私はやるべき事を遂行する。ただそれだけよ」

「ケッハッハッ! 相変わらずだな」


 ベルトールは話しながらも、レーミア様の体を舐め回すように見ている。このクソ野郎。


「そうだ、俺も手伝ってやろうか? 簡単なお礼をしてくれるだけで――」

「結構よ」


 レーミア様はベルトールを通り越して行った。俺たちも慌てて後に続く。だが、


「ぐっ!」

「おらぁ! ちゃんと前向いて歩けや! そんな事も知らないのか、ゴブリンって奴はよ?」


 横を通り過ぎようとしたセトグールにベルトールがわざと肩をぶつけたのだ。セトグールは床に倒れ伏している。


「てめぇのクッセエ体臭が移ったらどうしてくれんだよ? ちゃんと風呂入ってんのか、あ?」


 ベルトールが鼻を抓む仕草をすると、取り巻きの魔族どもがゲラゲラと下品な笑いを上げた。


「……すいません、以後気を付けます」


 セトグールは地面に倒れ伏したまま、頭を下げた。

 それを見たベルトールは鼻を鳴らして踵を返そうとしたのだが、俺がジッと見ている事に気づき、睨んできた。


「おい! 何見てんだよ? 何か文句でもあんのか?」

「いえいえ、とんでもございません」


 俺も軽く頭を下げた。


「そもそもお前は誰なんだよ?」


 ベルトールが俺の方に近づいてきた。

 どうする? 魔手羅でヤツの鼻っ柱を折ってやるか? 


「ベルトール!」


 振り向くと、レーミア様が腕を組んでコチラを見ていた。


「私の部下たちにちょっかいを出さないで」


 ベルトールは再び鼻を鳴らすと今度こそ踵を返し、取り巻き共々歩き去って行った。


 俺はセトグールの元に駆け寄った。


「大丈夫ですか? えと、セトグール王子?」


 王の子供だから王子でいいんだよな?


「はい、大丈夫です。1人で立てます、ありがとう」


 セトグールは愛想笑いを浮かべている。その姿が逆に痛々しい。

 俺はベルトールたちの後ろ姿を目で追った。


「……ありゃ、チンピラだな」


 思わず声に出してしまった。

 それを聞き咎めたセトグールは口に指を当てる。


「そのような事を言ってはなりません」


 彼は背後のベルトールたちを伺いながら言った。


「そうですぅ、ダーティさん」


 背後からリリアンナの声がした。


「あの方は南方将軍ベルトール様ですぅ。つまり、レーミア様と同等の地位であるのですよ」


 あのチンピラが将軍ねぇ。

 てか、南方将軍もいるのね。じゃあ、やっぱり東西南北にそれぞれ将軍がいるようだな。


「彼は高魔族出身で、生粋の種族主義者ですぅ。高魔こそ正義! 他は虫ケラだぁ! って感じですぅ」

「へー」


 どこの世界にもくだらん差別はあるんだな。

 高魔族と低魔族の溝は深い。魔族社会が抱える厄介な問題であろう。

 しかし、俺にとっては実に好都合だ。鬱屈した低魔族に反乱を起こさせる、もしくは、現魔王の実力主義に反感を持つ高魔族を煽るのもいい。

 どちらかを実行するにしろ、まだ情報不足だがな。


「……それに、あの方は時々、リリアンナやレーミア様をいやらしい目つきで見てくるですぅ、リリアンナ、ちょっと怖いんですぅ」


 おうおう、あの野郎、さっきもレーミア様の事を舐め回すように見てたもんな。


「心配すんな、リリアンナちゃん! いざって時は俺が守ってやるぜ!」

「きゃ! きゃ!」

「ちょっとあんたたち、早く来なさいよ!」


 ダークエルフのお姉さんに急かされちった。


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