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「伐士隊は標的を見誤っているかもしれん!」

 ルクスアウラの巨大馬車から降り立った。近くに林があるので、そこに急いで身を隠す。


「プリマス、どこだ?」


 しゃがみ込み、小声で尋ねると、地面がズモッと盛り上がった。

 土の中からデカモグラに変身したプリマスが這い出して来た。


「大変なことになりましたね」


 デカモグラプリマス、略してモグマスが言った。


「おうよ、グズグズしている暇はねぇ。例のモノは?」


 そう問い掛けるとモグマスは穴の中から自らの体よりも大きな巾着袋を引っ張り出した。

 その中には俺の巫女忍者服が入っていた。


「伐士の誰かに変身するつもりだったんだがな。おう、モグマス……じゃなくてプリマスよ。分身体はどれくらいあるんだ?」


 巫女忍者服を羽織りながら尋ねると、プリマスは4体だと答えた。


「よし、分身体を全部連れて行く。本体のお前は土中から伐士隊の動きを報せてくれ」

「マスターは?」

「俺は鳥に変身して行く。建物に行くまでに伐士隊の間を進まなきゃいけないからな」


 シェイプシフターの魔鬼理を使って鳥に変身する。


「よし、行くぞ!」


 鳥になった俺の背に分身体プリマス(羽虫型)が飛び乗る。

 羽根を羽ばたかせて林から空へと飛び上がる。

 空の上から会場周辺を見回してみる。

 林の近くにはルクスアウラの馬車が停まっている。その少し離れた後方にやたら白い巨大馬車が停まっていた。

 あれがヲイドニアの奴ウ父の馬車だろう。


 そして会場の前の草原地帯には伐士隊の馬車が何台も停まっていた。

 慌ただしく伐士たちが行き来しているのが見える。

 そこから東に向かった先に黒っぽい塔が見える。あれが監視塔だろう。


「どこから侵入します?」


 耳元でプリマスが言った。


「連絡橋から突入するぞ」


 大きく羽を動かして、旋回し、壊された連絡橋へと突入する。

 中は薄暗かった。


「よし、分身体たちは各階に散らばるんだ」


 羽虫型プリマスたちがそれぞれの階へと飛んで行く。

 自分の位置を確認しておこう。連絡橋から突入したわけだから、ここは3階だ。観覧席はここと上の階だから、そのどちらかにエヴァ嬢たちはいたはずだ。


 俺は変身を解いた。

 近くの物置へと身を隠す。


 オーガが2人、破壊された連絡橋の淵に立っている。

 彼らの足下には人質らしき人間が2人跪いている。


 うーん、オーガとかがいるとなると、一般の伐士じゃ手こずるかもな。


 そんなことを考えていると、プリマスから連絡が入った。


「マスター、分身体がそれぞれの階に到着しました」

「わかった。視覚を同調させてくれ。他の階の様子を知っておきたい」


 一瞬視界がブラックアウトし、分身体プリマスたちの視界と同調する。

 言うなれば4つの画面が映っている状態だ。欲張りセットだね。


「マスター、人質たちはそれぞれの階に配置されているようです」


 プリマスの言葉に俺はうなずいた。

 4つの画面にそれぞれに座らされている人質たちの姿が見える。その周りには見張りの魔族たちが立っている。

 エヴァ嬢の姿を探したが、見つけることができない。分身体からの視線だけじゃ厳しいみたい。


「にしても、奴らはなんで人質たちを全ての階に分けているんだ? もっと言えば、そもそもこんな立て籠もりなんてやる意味ってなんだ?」


 もはや、殺される前提で動いているようにしか思えない。不思議だ。ルクスアウラたちの本当の目的は何なんだろう。

 それに、人質たちを見張っている魔族だけど、ただボッーと突っ立っているだけなんだよね。おかしいよ。


 と、おかしいと言えばあっちもだ。


 俺は同調を切り、物置から連絡橋の側に立っているオーガたちを見やった。

 微動だにしていない。

 うん、変だ。

 外から丸見えだ。人質がいるが、あれじゃ狙ってくれって言っているようなモノじゃないか。


「……うーん」

「どうしましたマスター?」

「あのオーガたちの様子変じゃね? 俺、ちょっと様子を見てくるわ」


 俺は鳥の姿のままソロリとオーガたちの所に近寄った。


 ――≪現数力≫!!


 後ろ姿のオーガから、青い数字や文字が浮かび上がる。


 ―――――――――――――――――――――――


 ヤーセン・ナインス 27歳 男 レベル:35


 種族:人間


 ――――――――---------------


 ん?


 人間?

 なんで?


 見た目はオーガなのに……特殊なガンマ線浴びた?


「プリマス、どうやら厄介なことになっているようだ」


 今度はオーガたちの足下に跪かされている人間に現数力を使った。


 ――――――――――――――――――――

 モーディー 20歳 レベル:50


 種族:シェイプシフター


 ――――――――――――――――――――


 やっぱりシフターか。

 あのオーガたちはシフターによって変態させられた人間なんだ。

 たく、ダ〇クナ〇トみたいじゃないか。


 以前、シフターたちが姿を消しているってシャーナが言っていたな。

 それはこの襲撃に彼らが参加している為だったわけか。

 なら、ポーもいるかもしれないのか? いや、あのポーが参加するとは思えない。


 まぁ、考えるのは後だ。


「よし、他の人質たちも調べるぞ」

「……マスター、その時間はあまりないようです」


 本体のプリマスからの連絡だ。


「今まさに伐士隊たちが突入しようとしています」


 なんてことだ……


「マズいぞプリマス、伐士隊は標的を見誤っているかもしれん!」












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