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「何だか嫌な予感がするぜ」

「これが、我々が手に入れることができるロディマス・ショウの情報だ」


 キリアン・ヴァルコから差し出された水報板に目を通す。

 今俺は彼の部屋にいる。

 ルクスアウラが言っていた通り、ロディマスに関する情報を提供してもらったわけだ。

 さっと目を通したところ、彼に関するプロフィールなどが一通り揃っていた。しかし、特に目ぼしい情報は得られそうにない。

 俺は水報板から顔を上げる。


「ヴァルコさんはロディマス・ショウと面識があるんですか?」

「あぁ。しかし、ほんの数える程度しか会っていないがな」


 俺はジッとヴァルコの眼を見つめた。

 ダーツの時のようにあのリライブが起きないかと期待したが、何も起きなかったんだな。


「どうした?」


 ヴァルコが怪訝な顔つきで尋ねてくる。


「あ、いえ何でもないです」


 やべ、つい見つめすぎちゃった。

 でも、いいや。この際気になることは聞いておこう。


「ちょっとお尋ねしたいんですが……」

「何だ?」

「ルクスアウラ様の近衛伐士は全て魔人というわけではないのでしょう?」

「そうだな」

「人間の者たちはルクスアウラ様の正体に気づいていないのでしょうか? さすがに隠し通すのは無理があるように思います」

「その通りだ」


 あっさり認めたよ、コイツ。


「では、ルクスアウラ様が魔人と知りながら、彼らは忠誠を誓っていると? 人間なのに?」

「信じられないか?」

「いやー、なんというか。人間社会も一枚岩じゃないんだなと」

「魔族が単純すぎるだけだろう」


 ヴァルコは口元に笑みを浮かべて言った。


「単純な方がいいこともありますよ」


 そんなヴァルコに俺も笑みを返す。

 俺、コイツ苦手だな。


 ◆


 自分の部屋に戻った俺はベッドに仰向けに倒れ込んだ。


「ふぅ」

「疲れているようだな、アーティ」

「あぁ、そうなんだよ……ん?」


 久しぶりに聞いたその声に俺は飛び上がった。

 正座で着地し、頭を下げる。


「お久しぶりでございます、ンパ様!」


 顔を上げると、金色の一つ目が俺をジッと見つめていた。

 ホント油断できないね。神出鬼没だよ。まぁ、邪神ではあるんだが。


「順調に進んでいるか?」

「えぇ、はい。一歩進んで、二歩下がって、三歩進んでいるような、いないような――」

「ふざけているのか?」

「すいません、突然の事で混乱してしまいました」


 慌てて俺は謝った。また触手責めされるのは勘弁だからね。


「お前は危険に突っ込んでいる。ヤツらは油断ならないぞ」

「えぇ、もちろんです。えぇ」


 俺は恐る恐るンパ様を見上げる。


「あのぅ、ンパ様は彼女たち魔人のことは心当たりはないんですよね?」

「あぁ、ない」


 即答だよ。


「しかし、お前はそれで納得しないのだろう?」

「え?」

「あれは私と同種の力を持つ者の仕業だろう」

「えぇ!?」

「もう一度言うが、油断はするな」


 さらに問い掛けようとしたが、既にンパ様の姿はどこにも見当たらなかった。

 

 むぅ、それを言うだけの為にわざわざ現れたのだろうか?

 ンパ様がそこまで警戒するってことは、連中は俺の想像以上にヤバいヤツらなのかもしれない。


 ◆


「久しぶりシャーナちゃん」

『あいかわらずふざけた態度ね』


 呆れたような彼女の声に俺も苦笑いを浮かべる。


「毎度そんなツンデレ発言しちゃって。飽きないの?」

『はぁ!? お前がもっと真面目だったら、私もそんなこと言わないもん!』


 ぷぷっ、むきになっちゃって、可愛んだ。ぷぷっ!


『お前、今私のことバカにしてるでしょ!?』

「いーや、そんなことはないさ。それで、報告なんだけど――」


 俺は彼女にお披露目会のことを話した。

 これから俺は、ルクスアウラに従って演習会場に向かうことになっている。

 そうやって着々と合同演習会に向けて盛り上がりを見せているわけだが、実際は静寂の森包囲作戦の為の布石みたいなもんだろう。


 こんな手間な事をしなければならない理由は1つ。

 大海の主のせいだ。

 主は戦いの意思を持った者が海を渡ることを許さない。

 そんな者たちが渡ろうとすれば海の底に引きずりこまれてしまうらしい。

 だから、海を渡る他国の伐士たちには作戦のことは一切知らされていない。


 ノーベンブルムに着いたら、訓練ではなく実戦に投入されちゃうわけだね。

 ちょっと同情するわ。


『……うーん、状況は悪化しているみたいね』


  シャーナは深刻そうな声音で言う。


「到着したらすぐに、ということはないだろうけどね」

『けど、時間の問題なんでしょう?』


 彼女は大きくため息を吐いた。


『こんな時に、よりによってあいつらは……』

「? あいつらって?」

『あぁ、そういえばお前にはまだ言ってなかったわね。アーリルフ将軍の部隊の連中だよ』


 アーリルフという名前だけで大体察してしまった。

 彼らは以前、勝手に序数狩りを行っていた。それに俺も巻き込まれて大変な目に遭った。サラマンダーに追いかけられるのはもう勘弁して欲しい。


「で、今度は何をしようとしているんだい?」

『具体的にどうこうってわけじゃないんだけど。あいつら、兵隊たちを集めているのよね。きっと何かしでかすつもりなんだよ』


 まぁ、前例がある以上放置はできないよな。


「また巻き込まれるのはごめんだからな。こっちでも注意しとく」

『そうして。ただ、問題はそれだけじゃないんだよ』

「というと?」

『シェイプシフターたちが姿を消しているんだ。実はポーも行方不明になっているんだよ』

「ポーが?」


 ポーも何にでも姿を変えることができるシェイプシフターだ。俺がアルゴン・クリプトンとして人間社会に潜入する時などに手助けしてくれた。


 そのポーや他のシフターたちが行方不明だって?


「まさか伐士のヤツらに……?」

『わからない。他の砦ででも聞いて回ったけれど、あまり情報は得られなかったわ』

「むぅ、それは心配だな」


 何だか嫌な予感がするぜ。

 気のせいだといいんだけどな。


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