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「そう、人魔技術を融合させた新生ユグベリタスを誕生させるのだ!」

「戦艦ゼムリアスに対抗だと!? そんなの無理に決まっている!」


 ダーナムにいた愚者の男が呆れたように言う。

 ……面倒なのでダナ男1と呼ぶわ。


「別にゼムリアスに戦いを挑めというわけじゃありません。それぐらいの性能を目指してもらわないと意味がないと考えているだけです」


 そう答えるが、ダナ男1はあまり納得していないようだ。


「これだけの人数であの戦艦を修理するなんて無理に決まっているぞ。それに部品や時間も足りない。確かに船があるに越したことはないが……」


 ダーツも追い打ちをかけてくるんだな。

 まぁ、そう言われるのは想定済みよ。


「じゃあ、その全てが揃っていれば戦艦を修理にすることに賛成してくれるんですね」

「なにを……?」


 俺は戦艦の方を向き、声を張り上げた。


「おーい! ガレットさーん!」


 すると、戦艦の中から何者かがひょっこりと姿を現した。


「ダーツさん、ユグベリタスはもっと水龍に破壊されていませんでしたか?」

「……言われてみれば確かに。それに元よりも小型になっているような」

「その通り! 実はコレを発見した時から魔族の者たちに修理をし続けてもらっていたんです」

「魔族に?」


 俺がガレットと呼んだ者は戦艦とカメを繋ぐロープから器用に滑り降りて来た。

 俺たちの側に降りった彼は、人間の腰までの身長しかない。特徴的な栗色のもじゃもじゃした髪を後ろに束ねている。


「ご紹介しましょう。彼はドワーフのガレットさんです。今は彼を中心にユグベリタスを修理してもらっています」


 ガレットははぐれ魔族の長老ドワーフの息子だった。モノづくりが得意らしい。少なくとも俺よりは。


「おいおい、奴力もなしに無茶じゃないか!」


 ダナ男1が憤慨したように言う。

 その様子を見ていたガレットが俺のことをツンツンしてきた。


「おうアルティメット、こいつらが戦艦のスペシャリスト共なのか?」

「はい、それはもうスペシャリストです!」


 ガレットはダナ男たちに詰め寄ると、品定めするようにジロジロ眺めた。


「な、なんだお前?」


 身構えるダナ男1。


「おう、操舵室の下にある壊れた箱は何だったんだ?」

「それは、奴力伝導装置のことか? それをどうした?」

「外しちまったよ。わけわかんねぇし。代わりに魔テアリル機関をぶち込んでおいたぜ!」

「な、なにぃ!?」


 ダナ男1は叫び声をあげた。まるでおやつを取り上げられた子供のようだ。


「何てことをしてくれんだ!? それではまともに動かないぞ!」

「あぁ? この俺の魔テリアル機関の方が圧倒的に性能が良いに決まっている。おら、お前らさっさと来い! どれ程素晴しいモノか見せてやるぜ」


 ガレットはそう言って戦艦に戻っていく。


「あぁ、くそ! このままじゃあのドワーフにめちゃくちゃにされるぞ!」


 ガレットの後をダナ男123が追っていく。どうやら戦艦の内部の様子を見てくれる気になったらしい。


「ほう! さすが技術者! 早速修理に取り掛かってくれるとは!」


 俺は呆気に取られているダーツに顔を向けた。


「人手不足は魔族が補ってくれます」

「だが、奴力も知らんヤツらではないか」

「それでいいじゃないですか。人間の技術だけではゼムリアスには対抗できない。しかし、魔族の技術も取り入れればどうなるかってことです」


 そう、人魔技術を融合させた新生ユグベリタスを誕生させるのだ!


「あぁ、あと時間や部品の問題ですがね。まず、この出来損ないの世界は時間の流れが違うことは言いましたね? 実はこの辺りは他と比べて時間の流れが速いのです。だから、効率良く作業ができます。そして、部品に関しては調達するアテはありますし、ここでもある程度見つけられるんですよ」


 俺は戦艦の方に眼を向けた。


「彼らならきっと完成させてくれると思います。もちろん、この俺もできる限り手伝いますし」

「クリプトンよ……」

「見て下さいよ、ダーツさん。彼ら、もう喧嘩していますよ。それだけ仲が良くなる余地があるってことですよ」

「クリプトン、それはいいとして、奴ウ力を使おうとしているぞ」

「え?」


 言われて見れば、確かにダナ男1が奴ウ力を使おうとしている。

 待て待て、今奴ウ力を使ったら飛び散っている源数の砂に連鎖してしまうぞ!


「おい、待てダナ男1! 水の膜を張るから奴ウ力は使うな!」


 俺は慌てて戦艦に向かって飛び立った。


 やっぱり失敗するかもしれん……


 ◆


 ダーツたちを案内し終えた俺は、出来損ないの世界を飛んで王都付近のゲートに向かっていた。

 すると、懐に忍ばせている法螺貝に反応があった。ダークエルフ姉妹からの連絡だ。


 俺は近くの巨石に降り立った。

 てか最近俺、巨石に降り立ってばっかだな。だからどうしたってわけじゃないけど。


 俺は法螺貝を耳に押し当てた。


『ダーティ? 聞こえる?』


 妹のシャーナだ。ちょっとせっかちなところがあるから、声のトーンとかですぐにわかる。


「やぁ、シャーナちゃん元気してる?」

『はいはい、私は元気です! で、そっちはどうなのよ? 何か有益な情報あったの?』


 俺は合同演習会の会場完成お披露目会の話をした。


『うーん、それは例の包囲作戦が迫っているってことね』

「だね。俺も一応王女の護衛で参加するわけだけど。魔王軍としてはどうするのかな?」


 そう尋ねてみたものの、シャーナは答えに窮していた。


『どうって……私たちとしては静観するしかないわよ。ノーベンブルムの王族たちが参加するのでしょ? 厳重な警備が敷かれるでしょうし。攻め込むメリットがないわ』


 うむ、そうだよねぇ。


『私たちはアーリルフ将軍の部隊を見張らないといけないの。同じ魔王軍同士なのにね』

「彼らはまだ何か不穏な動きをしているわけ?」

『やたらとコソコソ動き回っているのよね……あ、ちょっとお姉さまと変わるわ』


 ガサゴソと物音がした後、今度は姉のセリスの声に変わった。


『ダーティ、アーリルフ将軍の部隊もだけど、最近はファントム将軍もこのノーベンブルムを訪れる頻度が多くなっている』


 おっと、さすがに怪しまれてきたか?

 この前も無理して来てもらったからな。


『ダーティ、何か心当たりはない?』


 うーむ、どう答えるか……


「さぁ、わからないな。レーミア様はどう言っているの?」

『レーミア様は……放っておけばいいと……』

「なら、そうするべきなんじゃない?」

『あんたはっ……』

「なに?」

『いや、何でもない。話はこれで終わりね』


 セリスは何か言いかけていたが、すぐに言い直して連絡を切ってしまった。

 アレ、俺なんか機嫌損ねるようなことしたかな?


 まぁ、それは置いといて、ファントムのことをレーミア様が放っておけと言ってくれたことに感謝しないとな。


 さて、急いで王都に戻ろうかね。



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