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「新型戦艦がどの程度の脅威か見極める必要がある」

 ある日の朝、ルクスアウラ王女の近衛伐士が全員集められた。場所は王宮側に設けられた近衛伐士専用の事務所だ。


「我々は10日後、工業都市ダーナムに向かう」


 全員集まったのを確認するとキリアン・ヴァルコ副隊長はそう言った。


「ダーナムで新型戦艦の進水式に王女は向かわれるのだ」


 ちらほらとその新型戦艦に関する情報は耳に入っていた。

 こうしてそちらから招待してくれるってんならありがたくその情報を頂戴しよう。


 ◆


 俺はまず魔王軍のシャーナたちに報告した。

 しかし、彼女たちはその戦艦についてはあまり心配していないようだ。


「たかが船1隻じゃない。海を渡って攻めようとしたところで大海の主に沈められるだけよ」


 と彼女たちは言う。

 確かに大海の主がいる限り中央大陸に攻めることはできないだろう。それに魔王軍は空か地上戦が主で、海上で戦うことなど最初から考慮していない。魚人やセイレーンは魔王軍に所属していないからね。戦艦が彼らに与える影響はそんなに無いのだ。


「まぁでも、脅威であることに変わりはないから、ちゃんと調べてね」


 と、まぁ魔王軍勢としてはそれで良いが、はぐれ魔族としてはそうもいかない。


「このノーベンブルム王国の伐士隊や賢楼を出し抜くには出来損ないの世界はもちろん海も利用するつもりでしたもんね」


 とプリマスは言った。

 彼は今俺の部屋の窓辺に小鳥の姿で佇んでいる。これはプリマスの本体だ。俺の魔力と奴力を彼に供給しながらダーナム行きの事を話し合った。


「そのつもりなんだがなぁ……」


 俺はため息を吐いた。

 海は魔王軍の勢力範囲外だし、人間たちも大海の主が怖くて伐士隊をあまり展開できない。おまけに大海の主ははぐれ魔族を救ったことがあるのだ。ここを利用しないことは考えられない。


「その新型戦艦が仮に海の覇権を取れる程のモノなら、それが普及する前に決着をつけないとな」


 とにかく新型戦艦がどの程度の脅威か見極める必要がある。それに――


「もしかしたら愚者が何かしらの行動を起こす可能性もあるしな」


 その時は接触するチャンスだ。


 ◆


 その日の夜。

 俺は久しぶりにルシアンたちと食事に出かけた。

 場所はクリスが通う東地区にある料理屋だ。湖畔の辺りに立地している落ち着いた雰囲気の店であった。


「はぁ、やっとこうしてみんなで会えたな」


 席に着くなりルシアンが言った。

 広大に広がる湖を見渡せる屋外席に俺たちは座った。俺、ルシアン、クリス、ジーンキララの4人で集まっていた。


「王都周辺って本当に魔族が多いんだな。俺ら入隊したばっかなのにもう何十回と戦っている気がするよ」


 ステーキを頬張りながら喋るルシアン。行儀が悪いぞ。


「だよねー。あたしも今まで王都で暮らしてきて、魔族を気にした事なかったよ。それは王剣器隊の人たちが戦ってくれていたからなんだって実感したよ」


 苦笑いを浮かべながらジーンキララが言った。

 魔人のくせに、白々しいぜ。


 そんな彼らに心配そうな視線を向けるクリス。


「2人ともホント気を付けてね」


 いつだって彼女は他者を気遣っている。特にルシアンだけど。


「心配ねぇよクリス。なんたって俺たちの隊長はあのエリック・フォース様なんだからな。それに王剣器隊はみんな強者揃いだし」


 ルシアンは胸を張って言った。

 こういうの何て言うんだっけ?

 虎の威を借るアンルチ?


「中でもイーザウさんは凄いんだ」


 ルシアンが挙げた名前には聞き覚えがあった。


「アル、お前も知っているだろ? ランス・イーザウさんだよ」


 あぁ、思い出した。

 カルスコラのお茶会でローウェイン・シックスとのいざこざを仲裁してくれた。そして、選抜試験の時に遅刻しながらも参加を認めてくれた王剣器隊の隊員だ。


「あの人、見た目はそんなに鍛えているようには見えないけど、奴ウ力の扱いが凄いんだ。俺もあんな風にできたらいいなぁ」


 どうやらルシアンの尊敬者リストに新たな名前が刻まれたらしい。

 ま、そんだけ強いヤツらがいるんならルシアンの身を心配する必要はない。だけど、魔王軍ダーティ、侵略者アーティとしては厄介なヤツが現れたという悩みが増えてしまった。


 ◆


 そしてダーナム行きの日がやってきた。

 専用のロイヤル馬車が3台用意されている。


 今回の進水式に参加する者は、ルクスアウラを含む王族数名。そして伐士団長であるフォースも同行する。しかし、ルシアンたち王剣器隊はどうやら来ないらしい。

 馬車の準備を手伝っているとフォースに声を掛けられた。


「やぁ、君は確かクリプトンだったな?」

「はい、フォース伐士団長」


 俺は答えて頭を下げる。


「ルシアンやジーンキララは君の友人だろう?」

「はい、そうです」

「2人とも頑張ってくれている。すぐに彼らは一人前になるだろう」


 ルシアンが聞いたら泣いて喜ぶだろうな。


「君も栄誉ある役目を任されているんだ。期待しているよ」


 俺は再び頭を下げた。


「ありがとうございます。精進いたします」


 お前らをぶっ倒す為にな。


 フォースは俺の元から離れていった。

 その後ろ姿を目で追っていると、彼は別の人物と話し始めた。

 その相手は賢楼長官アイザック・コシュケンバウアーであった。表向きの顔である王立奴ウ力協会会長として参加するようだ。


 こいつはやはり何か起こるかもしれないな。

 そんな予感めいたことを俺は感じていた。



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