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「俺をあなた様の配下にさせてくださいっ!!」

 お世辞にも快適とは言えない空の旅を、リリアンナとの愉快な会話で乗り切った俺。


 大体、2時間くらい経っただろうか?

 リリアンナが前を指さす。


「ほら! 見えてきましたよ!」

 

 リリアンナが示す先には光の塊がある。それはすり鉢状を形成しており、先端は空高く突き出していた。


 ワイバーンはそこに向かって真っ直ぐに飛ぶ。


「アレが魔王城?」

 

 俺の問いにリリアンナが頷く。


「はい! その下に広がるのが魔都【デモナ=カルディア】です!」


 城の下に街か、城下町みたいなモノかな?


「リリアンナちゃんはあの魔都に行くのが楽しみだったんだよね?」

「はい、一番盛んな街ですからね。色んな魔族が集まってるし、色んな物が溢れてます。楽しいところですよ!」

「へー……って、あれ何!?」


 俺は驚き、声を上げた。前方の魔都上空に岩の塊が何個も浮かんでいるのだ。ソレは魔都上空に円形を成すよう配置されている。


「あぁ、あれは"見張り岩"ですよ。たぶんもうすぐ――」


 リリアンナが答え終わる前に、一番近くの岩から何者かが現れた。

 ソイツの頭は鳥のモノだった。鷲かな? 鳥の種類はようわからん。とにかく、こいつは現数力を使わなくても正体がわかる。鳥人だ。


 鳥人は岩に着地するよう誘導した。

 ワイバーンが岩に降り立つと、鳥人はレーミアの前まで飛んできた。


「レーミア将軍、話は聞いております。しかし、規則ですのでコレを……」


 鳥人はそう言って、水晶玉のようなモノを差し出した。


「あぁ、わかっているさ」


 レーミア様はその水晶に手をかざす。すると、水晶は青色の光を発した。鳥人は頷き、今度はリリアンナのところに来る。

 同じく水晶玉を差し出され、リリアンナも手をかざす。先ほどと同じ青色だった。


「そいつはまだ登録していない。これから魔王様の下に連れて行く」


 次は俺の番かと身構えていたのだが、レーミア様の言葉で、鳥人は俺のところには来なかった。

 登録ねぇ。通行認証システムか何かだろうか? 後で訊いてみよう。


 鳥人の検査はその程度で終わり、ワイバーンは再び飛び立った。

 眼下には魔都が広がっている。光に溢れており、その賑やかさがここまで伝わってくる。

 魔都の外側は平坦な地形、内側に入る程に上り斜面になっており、中心の一番高いところに大きな城があった。すり鉢状の先端部、そこが魔王城のようだ。ワイバーンはそこに飛んでいく。


 城に近づくと、その造りが見えてきた。城の真ん中には黒い大きな塔が、高く伸びており、その周りに5つの塔が立っている。

 ワイバーンはその5つの塔の1つに近づいた。そこにはヘリポートのようなモノがせり出している。そこに着地するつもりらしい。


「……あれは、トビアス殿か」


 レーミア様の声。

 俺が下を見ると、塔から兵士2体とキッチリとした服を身にまとっている中年の男がやって来きていた。


「あの方は、魔王補佐役のトビアス様です」


 リリアンナが囁くような声で言う。レーミア様を気にしての事だろう。

 それにしても、魔王補佐役ねぇ。名前だけでも面倒臭そうな職だとわかるぞ。


 ワイバーンが着地すると、まずはレーミア様が、その次にリリアンナ、最後に俺が降りた。


 レーミア様は塔の中からやって来た男、トビアスと話を始めた。


「トビアス殿、セリスたちから、話は聞きましたか?」

「はい、話は聞いております。いやぁ、参りましたね」


 トビアスはその灰色の髪を撫でつけた。困惑した顔をしている。なんか、いかにも中間管理職って感じだな。地味に親近感が湧くぞ。


「えぇ。念の為、ゴブリンの領域にはセリスたちを向かわせましたわ。何か動きがあればすぐに知らせてくれるでしょう」

「迅速な対応、感謝します……それで、そちらの方が例の……?」


 トビアスが俺に視線を向ける。

 この男も魔人の事は知っているようだな。


「はい。それで、魔王様は……?」


 トビアスは真ん中の大きな塔へと視線を向けた。


「子供部屋です。ご子息たちの遊び相手をなさっておいでです。私も一緒に同行いたしますよ」


 随分アットホームな魔王やな。


「ありがとうごさいます……では、行きましょうか?」


 レーミア様が俺たちに合図する。

 ヘリポートのような場所から塔の中に向かう。先頭からトビアス、レーミア様、俺、リリアンナ、兵士2体の順番だ。ただ、兵士たちは塔に入り口で立ち止り、見張りについた。

 塔の中は螺旋階段になっていた。降りていく途中途中に鉄製の扉があるが、一団は気にせず降りていく。


 螺旋階段を降り切ると、広い回廊へと出た。前方と右方に伸びている。【巨神ガメの甲羅】で見たモノよりも大きくて壮大だ。ちなみに、柱には例の光の塊が浮いていた。


 トビアスは回廊を前方に進んだ。

 左右の壁には鉄製の扉が並ぶ。トビアスはその中でも一際大きく、豪華な扉の前で立ち止った。見張りの魔族たちが立っている。

 トビアスが合図すると、彼らは脇にどき、扉を開いた。


「ここは魔王様が居住する塔です」


 リリアンナがこっそり囁いた。

 へぇ、この塔丸ごとかい、さすが魔王やな。


 俺たちは再び螺旋階段を上がった。1階分上がったところにまた扉があった。

 トビアスはその扉に付けられているノッカーを鳴らした。

 すると、内側から扉が開かれ、中から女性が顔を覗かせた。リリアンナと似た服装をしている。彼女も使用魔なのだろう。


「やぁ、メリナ。魔王様はまだ子供部屋かな?」


 トビアスが女性に尋ねた。


「はい。魔王様は勝手に上がってきて構わないと仰られています」


 女性の言葉にトビアスは礼を述べた。


「では行きましょうか?」


 そう言ってトビアスは中に入った。俺たちも後に続く。

 メリナという使用魔は俺が横を通るとき、まじまじと見てきた。こんな不潔なモノが存在するなんて信じられない、と言った具合だ。

 失礼な使用魔だな。教育がなってないんじゃないの、魔王?


 中は洒落たテーブルやソファで溢れ、ゆったりとした雰囲気だ。客間かな?

 俺たちはその部屋を通り過ぎ、奥にある螺旋階段からさらに上へ向かった。

 階段を上ると、木製の扉が右手にある。俺たちはそこも通り過ぎる。

 上へ上へと登る。そして、最後の塔頂上の部屋の前で立ち止まり、トビアスはノックした。


「入れ!」


 扉の奥から力強い声が響く。


 トビアスは断りを入れ、扉を開けて中に入った。俺たちも後に続く。

 塔の最上部という事で、星明かりが良く差し込んでくる。

 部屋のあちこちに子供用の遊具が置かれている。壁には色んな動物の絵や海や星の絵が描かれている。

 なるほど、確かに子供部屋だ。だが、俺の注意を引いたのは、部屋の中央にいくつか浮かんでいる球体とその下に佇む男の姿だった。


 その球体は直径5メートルはあるだろうか? 上から下に無造作に浮かんでいる。


 球体には様々なバリエーションがある。

 その表面がゴツゴツとした岩で覆われ、小高い山が隆起し、中では溶岩で満たされている物、氷で覆われている物、その氷が溶けだし、真下から滴り落ちて、下の球体に吸い込まれている。その下の球体は緑豊かで小川が流れている。小川は真下で滝のように下の球体に流れ落ちている。下の球体はその全てが水でできていた。ヤシの木が生えた小さな浮島がポツンと浮かんでいる。


 小さな惑星のようだ。

 あの1つ1つに惑星と同様の力が働いているようだ。

 良く見ると、金色の動物2匹がその惑星群を駆け回っていた。飛んだり跳ねたり泳いだり、縦横無尽に遊んでいる。

 その金色の生物は翼の生えたトカゲに見える。あれは何か? と問われれば、俺は間違いなくドラゴンの子供と答えるだろう。


 その子供ドラゴンたちは、一番上の火山が噴火し始めたのを見ると、勢い良く球体を駆け上がり、嬉々としてその様子を観察していた。

 そんな彼らを見上げている男。

 そいつはトゥーレ将軍程の大男ではなかったが、ガッチリとした体格をしている事がゆったりとした服の上からでもわかる。頭はスキンヘッドできれいな丸い頭をしている。

 

 俺は直観的に理解した。この男が魔王だ。


 彼はゆっくりとコチラを向いた。彼の口元にはサルバドール・ダリのような髭がピンと立っている。

 付け髭かな? 笑っちまいそうになるんだが……まるで海坊主だ。


「レーミアにリリアンナよ、久しぶりだな!」


 魔王が声を掛けた。

 彼女たちは魔王の下に跪く。俺も一緒に跪いた。


「おいおい、そう畏まるな。ここは俺の私室の1つだ。そんな形式ばったモノをされると息が詰まるぞ」


 魔王の言葉に、彼女たちは一瞬戸惑ったが、変わらず跪くままだった。


「これは魔王様への敬意の証です。お許し下さい」

「……右に同じくぅ」


 レーミア様の言葉にリリアンナも便乗した。


 魔王はやれやれと言うように首を振った。


「物好きなヤツラだなぁ、見ろ! トビアスは平気で立ってるぞ?」


 言われてみれば、確かにトビアスは平然と立っていた。


「魔王様にあれだけしつこく止めるように言われれば、誰だって止めますよ」


 彼は苦笑いして言った。


「そうだったな。アレはお前もなかなか強情だったぞ」


 魔王も苦笑いする。


 すると、背後の球体群から2匹の幼ドラゴンが飛び出して来た。

 彼は魔王の背後から抱き着いたのだが、その姿はいつの間にか人型になっていた。金髪の男の子と女の子だ。女の子の方が年上のようで、6歳くらい。男の子は4歳と言ったところかな。


 魔王の子供たちだろうか?


「レーミア、どうだ、大きくなっただろう?」


 魔王は子供たちを両手で抱え上げた。


「はい。私が以前お会いしたのは1年程前でしょうか? あれからお二方とも大きくなられていますね」


 レーミア様が微笑みながら言った。

 そんな顔もできるんだなぁ……。


「そうだったな、本当に子供の成長は早いモノだなぁ……そう言えば、レーミア、お前も小さい頃はこの球体で遊んでいたっけな。覚えているか?」」


 レーミア様の顔がぎこちないモノになる。


「む、昔の事ですので、覚えておりませんわ……」

「何を言う! ほんの十数年前の事ではないか! 思いっきり駆け回り、泳いでいたのを覚えているぞ?」


 レーミア様が何か言いかけたところで、トビアスが割って入った。


「恐れながら、魔王様、昔話もよろしいですが、ここはレーミア将軍の報告を聞いてはいかがでしょう?」


 魔王はすっかり失念していたと言う顔で、子供たちを床に降ろし、使用魔を呼んだ。


「メリナ! 子供たちを頼む!」


 先程のメリナが駆け寄って来ると、魔王は子供たちの頭をポンポン叩いた。


「すまんな、ちょっと用事があるから、メリナと遊んでな」


 子供たちは不満そうだ。


「ねぇ、お父様ぁ、すぐに戻って来る?」


 女の子の方が小首を傾げて問い掛けた。


「あぁ、できるだけ早く戻る」

「うん! 待ってるから!」


 何と微笑ましい家族の会話だろうか? すまんな、お嬢さん。俺が現れたばっかりにテテ親との遊ぶ時間を削ってしまったよ。


 メリナに連れられて行く子供たちを見届けた後、魔王は下の部屋に移動しようと言った。

 俺たち一行は、塔の一番最初にあった、客室のような部屋まで下りた。


「まぁ、お前らも座れ」


 魔王は大きなソファに腰かけ、俺たちにも座るよう言った。


「その方が話しやすい」


 俺たちは躊躇いがちに、テーブルを挟んだ向かいのソファに腰かけた。

 真ん中に俺、左にレーミア様、右にリリアンナといった具合だ。トビアスは扉付近に佇んでいる。

 

 何だか面接を受けている気分だな。


 そんな事を考えていると、魔王が喋り出した。先程とは違って真剣な口調であった。


「……それで、クラムギールが殺されたそうだな」


 クラムギールってのはゴブリン王の事だったな。


「はい、尤者に殺害された可能性が高いと考えています」


 魔王の問いにレーミア様が答えた。

 

「あぁ、尤者か……」


 魔王はため息を吐いた。ダリ髭がぴょんぴょん揺れている。


「厄介なヤツだ……レーミア、正直なところ、お前でもヤツは倒せないだろうな?」

「はい」


 レーミア様は即答した。


「だろうな。他の将軍が束になってもヤツには勝てない。俺もヤツを倒せるかわからん……」


 魔王も倒せないのだとしたら、一体誰なら勝てるんだ? 俺か?

 まぁ、あの強さを目撃したのだから、魔王たちの言う事も過剰ではないとわかる。


「で、その尤者と遭遇しながらも、生き延びた魔人というのが、お前なのだな?」


 魔王は急に話を俺に振ってきた。ちょ、いきなり話しかけないで……。


「は、はい! そうでありまする! 魔王様さま!」


 魔王はしげしげと俺を眺めた。何か俺の内面を見透かされている気分だ、海坊主のくせに生意気な!


「お前、名は?」

「オ、オサダ・アルティメットです!」


 俺の答えに魔王は不思議そうな顔をした。


「ダサオ・アルティメット……? 変わった名だな」

「私たちはダーティと呼んでおります」


 レーミア様が割って入った。


「ダーティ、か」

「ポウッ!」


 俺はすかさず現数力を使った。

 驚く魔王の顔から、青い文字が浮き出す。


---------------------------------------------

魔王 ビゾルテ 220歳 男 レベル:996

種族:帝竜ドラコデウス


【基礎体力】

生命力:997 魔力:996


攻撃力:998  防御力:999(+3)  速力:994 


【魔鬼理】

 表示不可


【装備】

・マルクルの衣 防御力(+10)


----------------------------------------------


 種族は海坊主ではなかったか……。

 まぁ、子供たちがドラゴンなのだから、親も当然そうか。なんか残念だ。


 魔鬼理は"表示不可"ねぇ。俺と魔王の力の差によるモノだろうか?


 にしても、このステータスですら尤者に勝てるかどうかわからんとは、どれだけ強いんだ、あいつ?

 それとも、あれか、テスト勉強してないから自信ねえわぁ、とか言っちゃうヤツか?


 それと、気になる事がもう1つ。

 それは防御力だ。

 装備によって+10されるはずの防御力が、実際は+3しかされていない。これはつまり、ステータスは999でカンストしてしまうと言う事かな。


 俺がその数秒の間思案していると、レーミア様以外の者たちがポカンとしていた。

 レーミア様が軽く咳払いし、


「これは、この者の故郷の挨拶だそうです」


と言った。


「"神聖な"が抜けてますよ」


 すかさず俺は訂正した。

 嘘は細部にまで拘らないとね!


 レーミア様がギロリと睨みつけてきた。

 ひえぇ! でもその姿もソソるモノがあるな……。


「魔王様、失礼しました。この者は礼儀に疎いのです――」


 魔王は手を上げて制した。


「よいよい、興味深い挨拶ではないか! ……えっと、こうか? ポウッ!」


 魔王が俺の真似をする。

 

 こいつアホや!!


「ふむふむ、面白いじゃないか。レーミア、お前もやってみろ」

「え?」


 レーミア様が虚を突かれた顔をする。


「いいから、やってみろ」


 魔王が催促する。

 レーミア様はぎこちない手つきで鼻を抓む。


「ポ、ポゥ……」


 その鈴のような声で奇声を発した。

 俺は吹き出しそうになるのを必死に我慢する。隣から殺意を感じたからだ。


「ポウッ!」


 リリアンナも面白そうに真似をする。


「ポウッ」


 なぜか、トビアスも奇声を発した。


 この部屋にいる者たちが、次々と鼻を抓まんで奇声を発する。

 何ともシュールな光景だな。


「ハッハッハッ! すまんすまん、話を戻そう」


 魔王はにやけ顔から、真剣な表情に切り替えた。忙しい顔だな。


「それで、クラムギールの最後の様子はどんな感じだった、ダーティ?」


 俺は見た通りの事を話した。


「……ヤツはゴブリンの将来の為に動いていた、そう言ったのだな?」

「はい」


 魔王は一瞬間を開け、今度はレーミア様に尋ねた。


「それで、クラムギールに命令した者については? ゴブリン王に取引を持ちかけて従わせるとなると、それなりの力を持っている者に限られるが……」


 レーミア様は首を振る。


「調査中ではありますが、まだ何も判明しておりません」


 魔王は腕を組んだ。


「ふむ、クラムギールか……。同族の将来の為に良く働き、部下たちから慕われているヤツだったな……」


 俺にはムカデを喰わせたクソ野郎だけどな……。


「わかった。その事については将軍たちを集めて話し合おう。ゴブリン領には誰か派遣しているのか?」

「はい、ダークエルフたちを向かわせました」


 魔王は満足そうに頷いた。

 そして、視線を再び俺に戻す。


「……それで今後のお前の事についてだが――」


 俺はゴクリと唾を飲み込んだ。


「お前はどうしたい?」

「え?」


 今度は俺が虚を突かれた。


「どうって……?」

「俺の軍に加わるなり、余所でやって行くなり、好きにしろ。お前を強制するつもりはない」


 そんな甘くていいのか?


「でも、俺はここまで来るのに様々な情報を知りました。もし、人間に――」

「重大な情報はお前に漏らしていない、そうだろ、レーミア?」


 レーミア様が頷く。


「お前がここで成し遂げたい事があるのなら、加わればよい」


 でも……


「しかし、そんな簡単に俺を信用してよろしいのですか?」


 魔王は首を振る。


「信用する、しないじゃない。俺は力ある者を受け入れる、それだけだ」


 俺は他の者に目を向けた。

 レーミア様とトビアスは無表情だ。別に関心がないという感じ。リリアンナは目を見開いて俺をジッと覗き込んで来る、って近い近い!


 視線を魔王へと戻す。


「俺は……」


 魔王はジッと俺の目を見ている。マジで面接みたいやな。


 これはまたとないチャンス、だと思う。たった1日にして、俺は一大勢力の中枢に潜り込めるのだ。ここで色んな情報を集め、工作活動を行う。それが俺の成し遂げたい事だ。となれば、返事は1つしかない。


「俺を、あなた様の配下にさせてください!」


 俺は頭を下げた。


「……いいんだな?」


 俺を顔を上げ、頷いた。


「はいっ!」

「……いいだろう」


 魔王は満足そうに唸った。


「お前は……そうだな、レーミアの部下になってもらおう。その方が色々と都合がいい。それでいいか、レーミア?」

「はい」


 俺が隣のレーミア様を見ると、ちょうど視線があった。彼女の冷ややかな目が一瞬和らいだような気がしたけど、気のせいかな?

 反対を見ると、リリアンナがニコニコしていた。


「よぉし!」


 魔王が腕組みを止めて、姿勢を正した。

 俺たちもつられて姿勢を正す。


「魔人ダサオ・アルティメットよ、今宵から、お前は正式な魔王軍の一員となった。強くなれ、賢くなれ、そして勝利を掴み、己が目的を果たせ!」

「はいっ!」


 俺は再び深く頭を下げた。


 こうして俺は、魔王軍北方将軍レーミア様の部下という肩書きを得た。魔人ダサオ・アルティメットとして……。


 

これで1章は終了です。


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