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「見た目に反して甘さ控えめなところが奥ゆかしいですな」

 近衛伐士に入隊してから二週間程が過ぎた。

 ルシアンたちがいる王剣器隊はどうかわからないが、この近衛伐士ってのが驚く程退屈なんだよな。


 ルクスアウラ王女の側にいることを義務付けられた俺は彼女の公務にひたすら付いて回る毎日だ。


 王立文遊館の視察だとか、他国の客との会食だとか、王女は毎日働いている。王族ってのも大変だなと思う。まぁ、俺はそのような場で得られた情報を魔王軍のシャーナたちやはぐれ魔族のミラたちに流しているんだけどね。


 んで、今日は湖の中心にある教会にお供していた。

 ヲイドニアからやって来た司祭の講演会があるらしい。


 ルクスアウラは講演開始まで別室でお菓子とお茶を楽しんでいた。

 俺ともう1人の護衛は扉の付近に待機している。


 この王女様は甘い物が大好物なのだということを最初の数日で知った。

 こうして食べている姿を見るのは今日で何回目だろうか?


「アルゴン、こちらにいらっしゃいな」


 不意に名前を呼ばれた俺は王女の元に駆け寄る。


「あなた、このお菓子を食べたことがある?」


 彼女が示した菓子はプリンに似たモノだった。それが何でできているのはわからないが甘い匂いが漂ってくる。


「いえ、ありません」


 そう答えると王女はスプーンでその菓子をすくい取った。


「まぁ、この菓子の味を知らないなんて人生損しているわ。はい、お食べ」


 ルクスアウラはスプーンを俺の方に向けてきた。


「いえ、滅相もございません。このアルゴン如きにそのような……」

「この私がお食べと言っているのよ?」


 まただよ。

 この王女は毎回俺に菓子を味見させようとする。他の近衛兵にはそんなことはしないのに、なぜか俺はルクスアウラに気に入られていた。


「では……」


 もう1人の近衛伐士の視線を気にしつつ俺はパクリと頂いた。

 うん、普通に美味い。


「どう、美味しい?」

「見た目に反して甘さ控えめなところが奥ゆかしいですな」


 などと適当にそれっぽいことを言ってみる。


「うふふ、アルゴンは奇妙な言い回しばかり使うのね」


 ルクスアウラは口許に手を当てながら笑った。


 外の扉がノックされ、部屋の中にキリアン・ヴァルコが入って来た。

 俺がルクスアウラの側にいるのを見てとると苦笑を浮かべた。


「姫さま、あまりクリプトンを甘やかさないでください」

「だってアルゴンはとっても美味しそうに食べるのですもの。ほら、もう一口――」

「残念ですが、もうお時間です。ご準備を」


 ヴァルコの言葉にルクスアウラは渋々頷いた。

 なんか、この王女は外から見るのと今とでは大分印象が変わる。茶目っ気があり時に配下の者から窘められる。そんな王女も悪くないと俺は思った。


 ◆


 講演会が終わり、城に戻った後はひたすら雑務をこなした。

 で、自由になると俺は湖畔近くにある公園に向かった。誰もいないのを確認したところで懐から法螺貝を取り出す。


『今日も王女様とベタベタしてたんでしょ』


 いきなりシャーナの不機嫌な声が法螺貝から聞こえてきた。


「そ、そんなわけないじゃん!」


 いや、そうだったんだけど。


『もう……レーミア様に言いつけちゃうからね?』


 それはマジで勘弁して欲しい。


『で、何か有益な情報はあった?』


 今度はセリスの声が聞こえてきた。


「うんにゃ、今日は特になかったね、残念だけど。そっちはどう?」


 セリスたちは王都近辺にある魔族の基地にいる。この大陸では巨神ガメの甲羅に次ぐ規模を誇っているらしい。まぁ、俺はまだ行ったことはないけどね。


『そうね。アーリルフ将軍の部隊がまた動きを見せ始めたくらいかな』

「アーリルフ将軍の?」


 前は序数狩りなど好き放題暴れていた連中だ。今度は王都周辺で何かしでかす気じゃないだろうな。


 そんな少し気になる情報を得つつダークエルフ姉妹との連絡を終えた。


「さーて、お次はっと」


 法螺貝をしまい、片耳をプリマス本体と同調させた。


「ようプリマス」

「ようマスター、今日の菓子は何だった?」

「今日はプリンみたいなヤツだった……って、俺の真似すんな」


 すいませんと謝るプリマス。


「えぇ、私やはぐれの魔族のみなさんで出来損ないの世界のゲートポイントを探している間、マスターは美しい王女様にお菓子を恵んでもらっているというふざけた事実に憤ってしまい、しょうもない真似をしてしまいました」


 めちゃくちゃ早口で言い切るプリマス。


「いやいや、アレはアレで神経すり減らしてやってんだぜ?」


 だが、まぁプリマスの方が負担が大きいのは確かだ。

 一度入れ替わってみるのもいいかもしれん。後々のためにな。


「ゲートポイントどのくらい見つかった?」

「3つですね。海底、深い森の中、そして洞窟の中」

「おっけ、俺も後で確認するわ」


ゲートのことはまぁいいとして探しているモノは他にもある。


「愚者に関して何かわかったことは?」


反ヲイド教組織らしい愚者たち。俺とプリマスそれぞれで調べていたが、特に収穫はなかった。

ここいらで彼らと接点が欲しいところなんだが……






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