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「ほら、映画とかドラマでさ、冒頭を緊迫した場面から始めるってヤツあるじゃん?」

 やぁ!

 言わんでもわかると思うけど、アルティメットだよ。


 実は今、結構ヤバい状況でさ、追手に追われているんだよね。

 場所は静寂の森。北大陸の魔族の砦【巨神ガメの甲羅】付近にある森だ。

 雲に覆われた闇夜は一層暗い。お陰で木々の間を駆け抜けるのも一苦労だぜ。


 俺は木陰に身を潜めた。


 どれだけの奴らが俺を追っているのだろう?

 背後を覗き込んでも気配を感じられない。

 奴らもできるだけ静かに動いているようだ。なんせこの森には伐士隊や魔王軍の奴らが目を光らせているからな。


 こんな時プリマスの目や耳が使えたらいいんだが、生憎あいつは巨神ガメの甲羅で俺に成りすましているんだ。

 つまり、これはレーミア様の指示ではない。俺単独で動いている。


 バレたらどうなるか……


 っと、今はそんな事考えている場合じゃねぇ。


 敵の数だけでも把握しておきたい。


「ポッ!……いけね、ポゥ」


 小さい声をあげながら鼻を摘んで離す。

 現数力を発動させてみると、あーら不思議、闇夜の森に青白い15の数字が浮かび上がった。


 敵の数は15か。

 その中にはヤツもいるはずだ。

 果たして今の俺の力でヤツを振り切れるかどうか……


 と、不意に暗闇の中から何かが飛んで来た。

 身を伏せて避けると、俺の頭があった木の幹の位置に細い針が何本も突き刺さっている。


 こっちの位置が気づかれたか。


 俺は再び木々の間を駆け抜けた。

 このまま体勢を立て直せるところまで逃げ切りたい。


 足にさらに力を加えて地面を踏み込む。と、柔らかい感触に包まれたかと思えば、俺の右足は穴の中に落ちていた。


 予めここら辺を掘り返してやがったな!


 上手いこと誘導されたのかもしれん。

 俺は体勢を崩してしまった。

 そのほんの一瞬の隙を突いて液体状の触手が俺の顔面に迫っていた。


 マズい、あれが顔に張り付いたら窒息しちまう。


 ≪風鎧≫!!


 ダークエルフの風で全身をガードする。

 触手は俺に触れることなく弾き飛ばされた。

 魔手羅を展開し、思いっきり地面を突いて木の幹に飛びつく。


 足音でこっちの位置がバレてやがるようだ。前もそうだったもんな。

 だったら、木を飛び移って逃げるまでよ。本当は空を飛んで逃げられたらいいんだけど、さっきも言ったようにこの森には伐士隊と魔王軍が目を光らせているからな。


 枝から枝へと魔手羅を使って移動する。

 そうやってある木に着地した時、頭上から木の枝が折れる音が聞こえた。

 咄嗟に身構えて上を見ると、上から若い女が落ちて来ているではないか!


「ぬぁ! めっちゃエロい恰好!」


 俺は思わず抱きとめた。

 あ、下に落ちたら危ないからだよ。下心はない……

 

「ナイスキャッチ!」


 女は嬉しそうに言った。

 その女は黒く長い髪に青い目が特徴的、そしてバニーガールのようなけしからん恰好をしていた。


「ねぇ、このまま私とイイことしない?」


 フォー!!


「いや、今はちょっと立て込んでて無理ぃ」

「えー、いいじゃないの」


 女は身をくねらせる。

 その体の感触が――フォー!!


「ね、私の目を見て……」


 その青い目を見ていると吸い込まれそうになる。

 夢見心地で気持ちいい。


≪夢魔の誘い≫


 頭の中で魔鬼理の名前が浮かぶ。


 ふああああああぁぁぁ! 気持ちいいいぃ!!

 でも、これ魔鬼理いいいぃぃ!!


 魔手羅で自分の頭を殴りつける。

 よし、頭が少しスッキリした。


「お嬢さん、せっかくですが、また今度にしましょう。さらば!」


 俺は女を優しく枝に降ろして別の木に飛び移った。


 危なかった。

 ありゃサキュバスだな。リリアンナも成長したらあんな風になるんだろうか……レーミア様にしっかり教育してもらわないとな。


 再び木々を飛び移りながら周囲を警戒する。

 今度こそ逃げ切れたかと気を抜きそうになったのだが、二度あることは何とやらだ。


 前方から赤い刃が何本も飛んできた。

 身を躱しながら木から飛び降りる。刃に切り裂かれた枝が周囲に飛び散った。


 着地すると同時に上の魔手羅を槍状に展開する。脇腹の魔手羅はいつでも使えるように服の中に隠しておく。

 

 さっきの赤い刃は間違いなくヤツのモノだ。

 あぁ、今この森で最も出会いたくなかったヤツと遭遇しちまった。


 森の中を強い風が吹き抜ける。

 俺は前方の木々に目を凝らした。すると、黒い影が物凄い速さで突進してくる。そして赤い閃光。


 俺は二本の魔手羅で赤い刃を受けとめた。

 背筋が引きつる。結構強い力だ。


 風によって雲が移動したのか、月明かりが森に差し込んだ。

 光は相対する追手の顔を照らし出す。


 その男は、西方将軍ファントムであった。



 ……はい。

 えー、どんな場面から始めてやがんだこの野郎と思われているでしょう。


 ヤツらって誰だよ? 静寂の森ってどこだよ? とか。

 ごもっともです。(あ、静寂の森は俺が最初に入った森だよ)


 ほら、映画とかドラマでさ、冒頭を緊迫した場面から始めるってヤツあるじゃん?

 ここぞって所で「12時間前」とか「4日前」とかになるやつ。


 そう、アレをやりたかったのこのアーティは。

 ただそれだけ。なんかのミスリードがとかないから、ド直球ですよ。


 ……うん。

 それじゃいってみよう。



 2日前に戻る――


 

 





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