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機械仕掛けの聖剣使い  作者: epina
Episode01 Sword Saint Aram
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Vol.13

 俺は、聖鍵の調査能力を過信していたかもしれない。

 ディーラちゃんをレッドドラゴンと間違えていたこと。

 白閃峰剣の特性を知らずにアラムと戦ってしまったこと。

 いずれも、俺がもっとよく調べていれば事前に対策を立てられたはずだ。


 要するに、現代のインターネットと同じなのだ。

 興味のある情報しか調べられない。

 複数のソースで確認しなければ、見落としに気づけない。


 俺は、衛星写真で確認した影がドラゴンだとわかったとき「赤い ドラゴン」と検索してしまった。検索トップに躍り出たのはルビードラゴンではなく、レッドドラゴン。その時点で、俺はディーラちゃんがレッドドラゴンだと決めつけてしまったのである。

 それはまだ、大した間違いじゃないから良かった。


 だけど、アラムの白閃峰剣の見落としはまずい。


 俺がシミュレーションで戦っていたアラムは、バトルアライメントチップに使われていたデータだ。戦闘経験の蓄積であるチップには、本物が所有している武器のことまでは含まれない。

 俺はこの時点で、アラムが特殊な武器を所持している可能性を失念した。

 剣聖アラムに代々伝えられる剣であるなら、事前に調べる機会もあったし、一度俺は白閃峰剣をこの目で見ておきながら、検索を面倒がってスルーしてしまっている。ドラゴンと戦う前なら、アラム本人やリオミに聞いておくだけでも知る機会はあったのだ。


 ルナベースのデータは極めて正確だが、俺が使いこなせるかどうかは別。それが浮き彫りになった。

 あらゆるデータを検索して知ることができるのは強みだが、わかったつもりになるのは危険だ。図書館を背負って歩いても、自分の頭がよくなるわけじゃない。


「結局、まるでダメって話だな」


 そんなことは今更確認するまでもないので、ショックはない。

 だけど、改善点を放置するのは論外だ。この件に関しては、ルナベースにも状況を報告し、プランを練ってもらう。無論、自分でも対策を考えたり、検索癖をつけたりと注意しよう。


「ごめんなリオミ。また心配かけて」

「いえ……今回のことは仕方ないかなと思いますし」

「そう言ってもらえると、心が楽になるよ」

「ゃぅ……」


 しばらくアラムの意識が戻るまで、時間がある。

 今のうちに、ディーラちゃんの処遇を決めてしまおう。


「ディーラちゃん。アラムのやつにはきつく言っておく。キミたちの安全は俺が保証するから、安心してほしい」

「あ、ありがとうございます」

「アースフィアで暮らすには、まだ人々の理解を得づらいと思う。しばらくは、ここでほとぼりを冷ますんだ」

「あ、あの~。ここ、どこですか?」

「俺の家……みたいなもんかな。ちょうどいいから、リオミにもちゃんと案内するよ」

「アキヒコ様の家……あ。はい、おねがいしますね」

「で、でもお姉ちゃんが……」


 ああ、そういえば。

 ディーラちゃんは、あの子を隠したままだった。


「お姉ちゃんは、ちゃんとしたところで休ませてあげよう。そうしたほうが、早く目を覚ますかもしれないし」

「う」

「……まだ信じてもらえない?」

「ううん、お兄ちゃんはいいひとかもって思う。ちょっとコワイけど……」


 お兄ちゃんキター!

 ドラゴンの女の子が妹になったようです。


「ごめんね、お兄ちゃんが時々ひどいっていうのは、わたしに対してだけですから」


 それは全然フォローになってない。

 リオミも言うようになってきた。


「そういえば、ディーラちゃんもお姉ちゃんみたいに人間の姿になれる?」

「えっと、うん」


 ディーラちゃんの宝石のような鱗が輝いたかと思うと、一瞬で巨大なドラゴンが人の姿をとった。

 真紅の長い髪に、赤い瞳。見た目は14歳ぐらいの女の子。綺麗なルージュカラーのワンピースを着ている。美人ではあるけど、どっちかというと可愛らしい印象だ。

 変身でよくある「生まれたままの姿」ってパターンではなかった。リオミがいるし、ラッキースケベイベントは地雷でしかない。


「お姉ちゃんより年上に見えるね」

「むー、でも、お姉ちゃんなの!」


 そんなやりとりをかわしつつ、医務室にディーラちゃんのお姉ちゃんを横たえた。必要なら、後でもっと高度な医療施設に移送しなくては。

 ん、そういえば。


「お姉ちゃんの名前はなんていうの?」

「ザー……あ、えっと。ラ、ラディです」


 ふむ?

 ディーラちゃんの逆読みか。


「じゃあ、ラディお姉ちゃんはここにいるから、また後で戻ってこようね」


 ディーラちゃんはちょっと名残惜しそうにしてたけど、素直に言うことを聞いてくれた。


 そんなわけで、マザーシップツアーが始まった。

 今回は聖鍵の転移で区画移動というわけにはいかないので、きちんと設置型のテレポーターを使った。

 ふたりとも驚きっぱなしで、俺は質問攻めにあった。


「あれは何ですか、アキヒコ様」

「工廠だよ。あそこで、俺のしもべを量産しているんだ」

「お兄ちゃん、あれはなーに?」

「あれはね、お菓子を作っているんだよ。そうだ、ふたりにちょっと味見してもらおうかな」

「じゃあ、このきのこを」

「たけのこがいい!」


 お菓子は大変好評だった。

 特にリオミは甘いものに目がなかったらしく、「アキヒコ様、本当に持って帰ってもいいんですか!?」と何度も確認した後、大量にバックに放り込んでいた。

 やっぱり今度、祭りか何かのときには戦略爆撃機で配ろう。


「あと、重要な区画には俺の許可がないと入れないようになってるから、光ってないテレポーターは使えないからね」

「そうなんですか」

「まあ、用があるとも思えないけど」


 マザーシップのルールを説明しつつ、様々な区画を見て回った。

 それにしたって、マザーシップは歩いてみると広い。とてつもなく広い。案内は丸一日使っても足りない。今度、案内用のボットでも造らせるかな。

 そんなこんなで休憩も兼ねて、食堂で夕食を摂る。ふたりとも、勝手に料理が出てくる装置に目を輝かせていた。


「とてもおいしいです、アキヒコ様」

「おいしーい!」


 ふたりとも気に入ってくれたみたいだ。ディーラちゃんはおかわり自由だと知ると、もりもり食ってた。まあ、ドラゴンだしな。


「これも聖鍵の御力なのですね……」


 リオミは食後に祈りを捧げていた。

 それを見たディーラちゃんも、見よう見まねで祈っている。


「そういえば、アースフィアでは聖剣の信仰があるんだっけ」

「はい。聖剣教団といいまして、予言詩の管理をし、広めた組織です。今では町人や農民にも信仰されています」


 本当は聖鍵なんですよね、とリオミは笑った。まあ、俺が強硬に呼び名を改めさせる必要もないだろう。


 食事が終わったあと、ディーラちゃんとはすっかり打ち解けた。やっぱり、美味いモノは女の子の心を掴むのに効果的だ。リオミはお菓子、ディーラちゃんはご飯だな。

 覚えたぞ!


「じゃあ、そろそろ戻ろうか」


 ラディちゃんを寝かせた部屋に戻る。


「お姉ちゃん……」


 一緒に寝ると言い出したディーラちゃんは、そのまま姉の眠るベッドで寝てしまった。


「ふぅ」


 思わず、一息ついてしまう。まだギルドへの報告などが残っているが、ようやく仕事が一段落した。


 仕事……か。

 この俺がね。


「疲れていたのですね。きっと」

「ラディちゃんを守ろうと、寝ている時も気を張っていただろうしな」


 リオミの手がディーラちゃんの頭に触れた。ちょっとだけピクンと反応したが、紅の髪の少女はそのまま眠り続けている。くすりと笑い、リオミはディーラちゃんを撫で始めた。


「ほんとうにドラゴンも手懐けてしまうのですね、聖鍵のちからは」

「え? いや、これは……」


 くすくす、と。リオミは面白そうに笑った。


「冗談です。これは他でもない、アキヒコ様のお力です」

「そ、それもどうだろう」

「そうなんですってば」

「うーん。でも俺なんてどうせただの……」

「めっ。そうやって、自分を卑下しないでください」


 怒られてしまった。


「今のわたしが信じているのは、予言でも聖鍵でもなく、アキヒコ様ご自身です。それをお忘れなく」


 そんな風に言われてしまっては、俺だって何も言えなくなるじゃないか。

 くぅ、今どんな顔しちゃってるんだろう。

 リオミが楽しそうに見てくる。


「ち、ちょっとアラムの様子見てくるよ。リオミはふたりを頼むっ!」


 逃げるように部屋を出た。

 ああ、俺のヘタレ……。

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