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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

売り言葉に買い言葉

掲載日:2026/05/19

****BL**** 初めて大喧嘩をした。 ハッピーエンド



「分かったよ!まだ元彼が好きって事でしょっ?もういいよ!」

「だから、違うって!」

「いいんだって!放っておいてよ!早く、彼の所に行けばいいじゃ無いかっ!」



**********



 初めて大きな喧嘩をした。



**********



 僕と賢が知り合った切っ掛けは、彼が振られて落ち込んでいたからだった。

 友達の友達。

 彼に振られたばかりの賢は、それはそれは憔悴していて、僕達二人で慰めた。 

 一人暮らしの僕の家を溜まり場にして、毎晩飲んでいた。

 何度も何度も、元彼との写真を見せられた。


 まだ、忘れられない。

 どうして俺を振ったんだ。

 あんなに仲が良かったのに。


 そう言って泣き崩れる日があれば、静かに涙を流す日もあった。


 人にこんなに好かれるなんて、羨ましいな、、、。そう思った時もあった。


 最初の三日位は、元彼に会いたがり、スマートフォンで連絡を取りたがった。

 流石に元彼の彼氏が怒り、通話口で何かを言われたらしい。それからは、少し大人しくなった。


 それでも、やっぱり忘れられないらしく、週末になると僕の家に飲みに来る。

 その内、友達がいなくても一人で僕の家に来て飲む様になり、一年後に僕達は付き合い始めた。



 彼の様子が変だと思ったのは、いつだろう、、、。

 何と無く、何かが変わり、僕の中に「?」マークが増えて行った。

 そしてとうとう賢が

「アイツ、彼氏に振られたらしいんだ」

そう言った。


 連絡していた事も知らなかった。


 告白したのは僕だった。


 どうして連絡を取っていた事を隠したんだろう、、、。

 きっと、僕がヤキモチを妬くのが面倒臭いんだろうな、、、。


 そんな事があって、僕は自分の誕生日を祝って欲しい、と言えなくなった。

 こちらから連絡しても、通話中になっている。

 勿論仕事の電話かも知れない。

 でも、夜中に繋がらないと、きっと仕事じゃ無いな、、、と考えてしまう。


「来週末、ちょっと用事が出来た」

僕の誕生日だった。

 今日、やっとの思いで

「来週の週末、僕の誕生日なんだ」

と、言おうと思ったのに、先に言われてしまった。

 いつも週末は一緒に過ごしていたから、改めて

「誕生日だから一緒にいて欲しい」

と言えなかったんだ。でも、僕の誕生日だと言ったら、どこかデートに誘ってくれるかも、、、淡い思いを抱いていた。



 初めて二人で過ごす筈の僕の誕生日は、独りぼっち確定だ。



 それから数日して、やっぱり誕生日の事が気になった僕は、彼の誕生日を聞いてみた。

 彼の誕生日を聞いたら、僕の誕生日も聞いてくれると思ったから、、、。でも、僕の誕生日は聞いてくれ無かった。



 彼の用事がなんなのか気になって、、、でも、聞けなくて、、、。僕は少しイライラしていた。二人がギクシャクし始めて、お互いすれ違う様になった。

 そして、僕の誕生日の前日、彼のスマートフォンに元彼から連絡があった。


「明日だろ?ちゃんと行くから、、、。朝からだな、、、」

確認の電話みたいだった。

 僕は本当にイライラして

「あの人に会うの?」

と聞いてしまった。


「、、、」

「まだ、好きなんだ」

彼は僕を睨んだ

「何をバカな事、、、」

「だって、あの人、彼氏と別れたんでしょ?」

「、、、だから?」

「色々相談に乗ってる間にさ、元鞘もとさやとか、寄りを戻すとか、、、色々あるじゃん」

「お前ね、、、」

と言って、彼はため息をいた。

「それで、最近イライラしてたのか、、、」

バカにされたみたいだった。

「夜中にこそこそ連絡取ったり、平日に飲みに行ったり、休日出掛けたり。彼の所に戻りたいなら戻れば良いじゃ無いか!」

語尾が強くなってしまった。

「そんなんじゃねぇよっ!」

「じゃあ、明日は僕と一緒に過ごしてよっ!」

「な、それは無理だっ!もう約束してるっ!」

「、、、僕の誕生日でも?、、、」

ずるい言い方なのは分かってる。

「嘘だろ?、、、」

「こんな事嘘()いてどうするんだよ」

「でも、約束が、、、」

「分かったよ!まだ元彼が好きって事でしょっ?もういいよ!」

「だから、違うって!」

「いいんだって!放っておいてよ!早く、彼の所に行けばいいじゃ無いかっ!今晩いまからでも行けば良いだろっ!」

「行かねーよっ!」

僕は、彼をおいて家を出た。



 彼から連絡は無かった。

 どうせ、僕の頭でも冷やせって事だろう。

 今日はもう、帰らない。

 帰ったら、明日彼が元彼の所に行く音を聞く事になるから、、、。


 早々に簡易ホテルを探し、宿を確保した。



**********



 惣一郎そういちろうと飲む様になって、元彼を忘れる事が出来た。

 少しずつ、アイツが気になり、好きだな、、、と思い始めた頃、惣一郎から告白された。

 先を越された、と思いながら嬉しかった。


 でも、元彼から連絡があった時、つい出てしまった。

 それが悪かった。

 元彼は彼氏と別れて様子がおかしかった。

 一年前の俺もこんなだったと思いながら、連絡が有れば暫く話しをしていた。

 淋しい時間は夜中の方が多い。昼間は仕事で気が紛れるから。

 深夜に、急に話したくなる時があるらしく、その度に俺に連絡をして来た。

 いよいよ、元彼は身体を壊し、実家のある田舎に帰ると言い出した。

 引越しの準備の手伝いと、見送りを頼まれた。

 他に頼める人がいないと言う。

 これが最後になるかと思うと、俺も何か手伝いたかった。

 

 惣一郎がイライラしているのは分かっていた。

 多分、俺が元彼と連絡を取っている事に気付いている。

 でも、週末の引越しが終われば、それで最後だからと甘えた、、、。



 まさかその日が、惣一郎の誕生日だとは思わなかった。


 

 前日の夜、惣一郎は帰らなかった。

 あんな喧嘩をして、俺は、俺が悪い訳では無いと無視をした。

 ちゃんと惣一郎の事が好きだったし、元彼の事は、もう何とも思っていなかったからだ。



 週末、朝から元彼の家に行く。

 荷物は大分纏まっていた。

 でも、彼氏の荷物はまだあった。

「この荷物、どうするんだ?」

「連絡してある、、、。僕がいなくなったら、帰って来ると思う」

「本当に出て行くのか?」

「だって、、、あれから連絡も無いし、、、」

「そうか、、、」

「手伝ってくれてありがとう、、、。もし、さ、、、もし、まだ僕の事好きなら、やり直さない?」

そう言って、泣いた。

「ごめん、、、」

元彼は首を振って笑う。涙を流しながら。

「僕、どうして君と別れちゃったんだろう、、、。こんなに優しいのに、、、」

俺は元彼を駅まで送り、家に帰った。



*****



 家の中は昨夜から変わっていなかった。

 つまり、惣一郎はあれから帰っていない。

 まあ、夜には帰るだろう。

 今日は彼の誕生日だって言っていたから。



 帰りに何か買えば良かった。

 惣一郎が帰って来てると思ったから、急いで家を目指した。

 夕方、窓の外を見て「逢魔が時ってこんな時間を言うんだろうな」と、思いながら、、、。何だか、嫌な事が起こりそうな、不安になる空気を感じた、、、。


 スマートフォンに連絡は無かった。

 俺もしていない。

 暫く部屋で彼を待つ。

 夜の7時。まだ帰らない。

 連絡を取ろうにも、何てメッセージを送る?

 分からない、、、。

 事故に遭っているかも知れない、、、。急に不安になった。

 メッセージを送るより、通話がいいだろう。俺は発信ボタンに触れた。


 出ない、、、。


 二度目も出ない。


 三度目も、、、。


 俺だから出ないのかも知れない。俺は友達に連絡した。

 暫くして、惣一郎が飲んでる場所が分かった。

 何だかんだで21時を回り、俺は車で迎えに行く。

 店の近くに車を停めた。店に入ると惣一郎はカウンターにいた。一人だった。

隣の席に誰かいたのか、飲み掛けのウイスキーがある。席を外している様だった。


 俺は、バーテンダーに小さな声で

「迎えに来ました」

と言うと、ウイスキーを隣の席に移動してくれた。 


**********



 知らない人と飲んでも良いじゃないか。

 僕に優しくしてくれるなら、誰でも良いんだ。

 だって、彼氏がいるのに、付き合って初めての誕生日に、彼氏は元彼と会うんだよ?僕は淋しかった。


 カウンターでカクテルを飲み、隣に座る人と束の間の擬似恋愛。

 声が彼に似ていた、、、。この人となら、一晩一緒に過ごしても良いと思った。

 結構酔っ払ってるのかも、、、。

 さっき、彼にホテルに誘われた。その時は即答出来なかった。時間が経って、程よく酔いが回っていた。

「僕の事、乱暴にしてくれますか?」

僕は頬杖を突いて瞼を閉じる。

 何も経験の無い、可愛い女の子では無い。一晩の関係を持っても良い年頃だ。

「彼を忘れる位、乱暴にされたいんです」

「、、、分かった、、、」

と、その人は彼の声で言った。

 バーテンダーに支払いをしている。

 僕は眠くて、遠くで聞こえる会話と、小さな音を聞いていた。



**********



 夜中、目が覚めると僕はホテルにいた。

 知らない男が後ろから抱き締めていた。


 ああ、とんでもない事をした、、、。


 そう思いながら、でも、彼も今頃元彼と一緒なんだから、、、と泣いた。

 男が後ろから抱き締める。今、優しくされたら、困るのに、、、。

 そう思いながら、少し声を漏らして泣いた。


 頭がふわふわする。酔っ払っているのが分かる。



*****



 朝が来た、シャワーを浴びないと。そう思って、布団から出ると、上着を着ていないものの、昨日のシャツのままだった。スラックスもベルトをしている。


 、、、何だ、何も無かったんだ、、、


 安心した。

 本当は、不安で一杯だった。

 酔っ払っていたからって、見ず知らずの人と肌を合わせていたら、僕は罪悪感を一生抱えて生きて行っただろう、、、。


「良かった、、、」 

 ポロリと涙が溢れた。僕は、指先で涙を拭う。

「何が?」

隣で寝ていた彼が、ベッドサイドに座る僕の腰に腕を回す。

「一夜の過ちを犯す所でした」

僕に回した彼も洋服を着ていた。ホッとした。


 あれ?


 シャツの袖口から、見覚えのある時計が見えた。

 高くて、ゴツい、文字盤が光沢のあるダークブルーで、彼に良く似合う時計。


 僕はそっと振り向いた。


なん、、、で?」

「迎えに行った、、、」

「元彼は?」

聞かない方が良いのに、つい聞いてしまった。

「昨日、夕方の飛行機で実家に帰ったよ。引越しも手伝って来た」

「じゃあ、用事って引越しの手伝いだったの?」

「ああ、、、」

そう言って、僕に回した腕に力を込めた。彼は僕にしがみ付く様に身体を寄せた。

「ごめん、、、淋しい思いをさせた、、、」

「そんな事いいよ、、、」

彼はベッドを広く使い、両手を広げた

「おいで」

僕はそっと彼の胸に抱かれた。

「惣一郎、、、済まなかった。、、、あんな事、絶対に言わないでくれ、、、」

「、、、?、、、あんな事?」

「自分を傷付ける様な事」

「、、、?」

「彼を忘れる位、乱暴にされたい、、、とかなんとか、、、」

賢は、僕をギュッと抱き締めた。

「お前が他の男とそんな事をしたら、俺は嫉妬に狂って、惣一郎を傷付けてしまう、、、」

「、、、ごめんなさい、、、」

「俺がお前にそう言わせたんだ、、、悪かった」



*****



 僕達は、ホテルで朝食を取り、賢の車で帰った。

 

 日曜日のまだ早い午前中。車も少なくて、静かな街だった。窓の外の景色もいつもと違う。

 車で走る道は、知らない道だった。

 僕は免許を持っていない。大抵は公共の乗り物と徒歩で移動する。だから、ちょっと不思議な感じだった。

 ウィンカーのカチカチする音が僕は好きだ。

 賢が左折して建物に入る。

「賢?」

「ごめん、、、やっぱり、シャワー浴びたい、、、」

「あ、、、」

駐車場に車を停めると、僕が降りるのを待って、鍵を掛ける。薄暗い駐車場に、鍵が掛かるピピッと言う音が響いた。

 こんな朝早くからやってるんだ、、、。

 賢は迷う事無く、一つの部屋のボタンを押して鍵を受け取ると、僕の手を引く。

 誰とも会う事も無く、部屋に着いた。

 彼は鍵を掛けると、ネクタイを解きながら

「乱暴にしたら、、、ごめん、、、」

と言って、キスをした。



1日遅れの誕生日

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