売り言葉に買い言葉
****BL**** 初めて大喧嘩をした。 ハッピーエンド
「分かったよ!まだ元彼が好きって事でしょっ?もういいよ!」
「だから、違うって!」
「いいんだって!放っておいてよ!早く、彼の所に行けばいいじゃ無いかっ!」
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初めて大きな喧嘩をした。
**********
僕と賢が知り合った切っ掛けは、彼が振られて落ち込んでいたからだった。
友達の友達。
彼に振られたばかりの賢は、それはそれは憔悴していて、僕達二人で慰めた。
一人暮らしの僕の家を溜まり場にして、毎晩飲んでいた。
何度も何度も、元彼との写真を見せられた。
まだ、忘れられない。
どうして俺を振ったんだ。
あんなに仲が良かったのに。
そう言って泣き崩れる日があれば、静かに涙を流す日もあった。
人にこんなに好かれるなんて、羨ましいな、、、。そう思った時もあった。
最初の三日位は、元彼に会いたがり、スマートフォンで連絡を取りたがった。
流石に元彼の彼氏が怒り、通話口で何かを言われたらしい。それからは、少し大人しくなった。
それでも、やっぱり忘れられないらしく、週末になると僕の家に飲みに来る。
その内、友達がいなくても一人で僕の家に来て飲む様になり、一年後に僕達は付き合い始めた。
彼の様子が変だと思ったのは、いつだろう、、、。
何と無く、何かが変わり、僕の中に「?」マークが増えて行った。
そしてとうとう賢が
「アイツ、彼氏に振られたらしいんだ」
そう言った。
連絡していた事も知らなかった。
告白したのは僕だった。
どうして連絡を取っていた事を隠したんだろう、、、。
きっと、僕がヤキモチを妬くのが面倒臭いんだろうな、、、。
そんな事があって、僕は自分の誕生日を祝って欲しい、と言えなくなった。
こちらから連絡しても、通話中になっている。
勿論仕事の電話かも知れない。
でも、夜中に繋がらないと、きっと仕事じゃ無いな、、、と考えてしまう。
「来週末、ちょっと用事が出来た」
僕の誕生日だった。
今日、やっとの思いで
「来週の週末、僕の誕生日なんだ」
と、言おうと思ったのに、先に言われてしまった。
いつも週末は一緒に過ごしていたから、改めて
「誕生日だから一緒にいて欲しい」
と言えなかったんだ。でも、僕の誕生日だと言ったら、どこかデートに誘ってくれるかも、、、淡い思いを抱いていた。
初めて二人で過ごす筈の僕の誕生日は、独りぼっち確定だ。
それから数日して、やっぱり誕生日の事が気になった僕は、彼の誕生日を聞いてみた。
彼の誕生日を聞いたら、僕の誕生日も聞いてくれると思ったから、、、。でも、僕の誕生日は聞いてくれ無かった。
彼の用事が何なのか気になって、、、でも、聞けなくて、、、。僕は少しイライラしていた。二人がギクシャクし始めて、お互いすれ違う様になった。
そして、僕の誕生日の前日、彼のスマートフォンに元彼から連絡があった。
「明日だろ?ちゃんと行くから、、、。朝からだな、、、」
確認の電話みたいだった。
僕は本当にイライラして
「あの人に会うの?」
と聞いてしまった。
「、、、」
「まだ、好きなんだ」
彼は僕を睨んだ
「何をバカな事、、、」
「だって、あの人、彼氏と別れたんでしょ?」
「、、、だから?」
「色々相談に乗ってる間にさ、元鞘とか、寄りを戻すとか、、、色々あるじゃん」
「お前ね、、、」
と言って、彼はため息を吐いた。
「それで、最近イライラしてたのか、、、」
バカにされたみたいだった。
「夜中にこそこそ連絡取ったり、平日に飲みに行ったり、休日出掛けたり。彼の所に戻りたいなら戻れば良いじゃ無いか!」
語尾が強くなってしまった。
「そんなんじゃねぇよっ!」
「じゃあ、明日は僕と一緒に過ごしてよっ!」
「な、それは無理だっ!もう約束してるっ!」
「、、、僕の誕生日でも?、、、」
ずるい言い方なのは分かってる。
「嘘だろ?、、、」
「こんな事嘘吐いてどうするんだよ」
「でも、約束が、、、」
「分かったよ!まだ元彼が好きって事でしょっ?もういいよ!」
「だから、違うって!」
「いいんだって!放っておいてよ!早く、彼の所に行けばいいじゃ無いかっ!今晩からでも行けば良いだろっ!」
「行かねーよっ!」
僕は、彼をおいて家を出た。
彼から連絡は無かった。
どうせ、僕の頭でも冷やせって事だろう。
今日はもう、帰らない。
帰ったら、明日彼が元彼の所に行く音を聞く事になるから、、、。
早々に簡易ホテルを探し、宿を確保した。
**********
惣一郎と飲む様になって、元彼を忘れる事が出来た。
少しずつ、アイツが気になり、好きだな、、、と思い始めた頃、惣一郎から告白された。
先を越された、と思いながら嬉しかった。
でも、元彼から連絡があった時、つい出てしまった。
それが悪かった。
元彼は彼氏と別れて様子がおかしかった。
一年前の俺もこんなだったと思いながら、連絡が有れば暫く話しをしていた。
淋しい時間は夜中の方が多い。昼間は仕事で気が紛れるから。
深夜に、急に話したくなる時があるらしく、その度に俺に連絡をして来た。
いよいよ、元彼は身体を壊し、実家のある田舎に帰ると言い出した。
引越しの準備の手伝いと、見送りを頼まれた。
他に頼める人がいないと言う。
これが最後になるかと思うと、俺も何か手伝いたかった。
惣一郎がイライラしているのは分かっていた。
多分、俺が元彼と連絡を取っている事に気付いている。
でも、週末の引越しが終われば、それで最後だからと甘えた、、、。
まさかその日が、惣一郎の誕生日だとは思わなかった。
前日の夜、惣一郎は帰らなかった。
あんな喧嘩をして、俺は、俺が悪い訳では無いと無視をした。
ちゃんと惣一郎の事が好きだったし、元彼の事は、もう何とも思っていなかったからだ。
週末、朝から元彼の家に行く。
荷物は大分纏まっていた。
でも、彼氏の荷物はまだあった。
「この荷物、どうするんだ?」
「連絡してある、、、。僕がいなくなったら、帰って来ると思う」
「本当に出て行くのか?」
「だって、、、あれから連絡も無いし、、、」
「そうか、、、」
「手伝ってくれてありがとう、、、。もし、さ、、、もし、まだ僕の事好きなら、やり直さない?」
そう言って、泣いた。
「ごめん、、、」
元彼は首を振って笑う。涙を流しながら。
「僕、どうして君と別れちゃったんだろう、、、。こんなに優しいのに、、、」
俺は元彼を駅まで送り、家に帰った。
*****
家の中は昨夜から変わっていなかった。
つまり、惣一郎はあれから帰っていない。
まあ、夜には帰るだろう。
今日は彼の誕生日だって言っていたから。
帰りに何か買えば良かった。
惣一郎が帰って来てると思ったから、急いで家を目指した。
夕方、窓の外を見て「逢魔が時ってこんな時間を言うんだろうな」と、思いながら、、、。何だか、嫌な事が起こりそうな、不安になる空気を感じた、、、。
スマートフォンに連絡は無かった。
俺もしていない。
暫く部屋で彼を待つ。
夜の7時。まだ帰らない。
連絡を取ろうにも、何てメッセージを送る?
分からない、、、。
事故に遭っているかも知れない、、、。急に不安になった。
メッセージを送るより、通話がいいだろう。俺は発信ボタンに触れた。
出ない、、、。
二度目も出ない。
三度目も、、、。
俺だから出ないのかも知れない。俺は友達に連絡した。
暫くして、惣一郎が飲んでる場所が分かった。
何だかんだで21時を回り、俺は車で迎えに行く。
店の近くに車を停めた。店に入ると惣一郎はカウンターにいた。一人だった。
隣の席に誰かいたのか、飲み掛けのウイスキーがある。席を外している様だった。
俺は、バーテンダーに小さな声で
「迎えに来ました」
と言うと、ウイスキーを隣の席に移動してくれた。
**********
知らない人と飲んでも良いじゃないか。
僕に優しくしてくれるなら、誰でも良いんだ。
だって、彼氏がいるのに、付き合って初めての誕生日に、彼氏は元彼と会うんだよ?僕は淋しかった。
カウンターでカクテルを飲み、隣に座る人と束の間の擬似恋愛。
声が彼に似ていた、、、。この人となら、一晩一緒に過ごしても良いと思った。
結構酔っ払ってるのかも、、、。
さっき、彼にホテルに誘われた。その時は即答出来なかった。時間が経って、程よく酔いが回っていた。
「僕の事、乱暴にしてくれますか?」
僕は頬杖を突いて瞼を閉じる。
何も経験の無い、可愛い女の子では無い。一晩の関係を持っても良い年頃だ。
「彼を忘れる位、乱暴にされたいんです」
「、、、分かった、、、」
と、その人は彼の声で言った。
バーテンダーに支払いをしている。
僕は眠くて、遠くで聞こえる会話と、小さな音を聞いていた。
**********
夜中、目が覚めると僕はホテルにいた。
知らない男が後ろから抱き締めていた。
ああ、とんでもない事をした、、、。
そう思いながら、でも、彼も今頃元彼と一緒なんだから、、、と泣いた。
男が後ろから抱き締める。今、優しくされたら、困るのに、、、。
そう思いながら、少し声を漏らして泣いた。
頭がふわふわする。酔っ払っているのが分かる。
*****
朝が来た、シャワーを浴びないと。そう思って、布団から出ると、上着を着ていないものの、昨日のシャツのままだった。スラックスもベルトをしている。
、、、何だ、何も無かったんだ、、、
安心した。
本当は、不安で一杯だった。
酔っ払っていたからって、見ず知らずの人と肌を合わせていたら、僕は罪悪感を一生抱えて生きて行っただろう、、、。
「良かった、、、」
ポロリと涙が溢れた。僕は、指先で涙を拭う。
「何が?」
隣で寝ていた彼が、ベッドサイドに座る僕の腰に腕を回す。
「一夜の過ちを犯す所でした」
僕に回した彼も洋服を着ていた。ホッとした。
あれ?
シャツの袖口から、見覚えのある時計が見えた。
高くて、ゴツい、文字盤が光沢のあるダークブルーで、彼に良く似合う時計。
僕はそっと振り向いた。
「何、、、で?」
「迎えに行った、、、」
「元彼は?」
聞かない方が良いのに、つい聞いてしまった。
「昨日、夕方の飛行機で実家に帰ったよ。引越しも手伝って来た」
「じゃあ、用事って引越しの手伝いだったの?」
「ああ、、、」
そう言って、僕に回した腕に力を込めた。彼は僕にしがみ付く様に身体を寄せた。
「ごめん、、、淋しい思いをさせた、、、」
「そんな事いいよ、、、」
彼はベッドを広く使い、両手を広げた
「おいで」
僕はそっと彼の胸に抱かれた。
「惣一郎、、、済まなかった。、、、あんな事、絶対に言わないでくれ、、、」
「、、、?、、、あんな事?」
「自分を傷付ける様な事」
「、、、?」
「彼を忘れる位、乱暴にされたい、、、とか何とか、、、」
賢は、僕をギュッと抱き締めた。
「お前が他の男とそんな事をしたら、俺は嫉妬に狂って、惣一郎を傷付けてしまう、、、」
「、、、ごめんなさい、、、」
「俺がお前にそう言わせたんだ、、、悪かった」
*****
僕達は、ホテルで朝食を取り、賢の車で帰った。
日曜日のまだ早い午前中。車も少なくて、静かな街だった。窓の外の景色もいつもと違う。
車で走る道は、知らない道だった。
僕は免許を持っていない。大抵は公共の乗り物と徒歩で移動する。だから、ちょっと不思議な感じだった。
ウィンカーのカチカチする音が僕は好きだ。
賢が左折して建物に入る。
「賢?」
「ごめん、、、やっぱり、シャワー浴びたい、、、」
「あ、、、」
駐車場に車を停めると、僕が降りるのを待って、鍵を掛ける。薄暗い駐車場に、鍵が掛かるピピッと言う音が響いた。
こんな朝早くからやってるんだ、、、。
賢は迷う事無く、一つの部屋のボタンを押して鍵を受け取ると、僕の手を引く。
誰とも会う事も無く、部屋に着いた。
彼は鍵を掛けると、ネクタイを解きながら
「乱暴にしたら、、、ごめん、、、」
と言って、キスをした。
1日遅れの誕生日




