お客様は神様です
「お弁当を、温めてもらってもいいかな?」
「あざっーす、うぃーっす、了解っす」
隆々とした体格であるが、高貴で気難しい雰囲気の壮年男性に、アルバイトの樋口くんは無遠慮に、そう答えた。
先ほどまで、外は快晴であったのに急に暗雲が現れ稲光が走る。
ヒヤヒヤする。彼はお客様をなんだと思っているのか。壮年のお客様は、少し苦笑いをしたように見えたが、気にしてはいないようだ。私は、胸をなで下ろした。
私は、このコンビニの店長だ。この辺りの客層を知らないのか樋口くんの対応は雑すぎる。
スラリとした黒髪が印象的な女性のお客様が、フルーツサンドをレジに置いた。
「あと、ホットコーヒーのレギュラーをお願いできるかしら」
「あざっーす。お姉さん、超美人っすね。」
お客様様は、樋口くんの言葉にまんざらでもない様子で微笑んだ。
外の暗雲が晴れ、雲間から光が店内まで差し込んだ。この辺りは、やけに天気が変わりやすいのだ。
もう、バカバカバカ! 樋口のバカー!今どき、そんな対応したらどうなるか、わかっているのか?下手をしたらウチの店はおしまいだぞ。
たまりかねた私はバックヤードに樋口くんを呼び、注意をする。
「樋口くん!駄目だよ!お客様は神様なんだから!」
「は? なんすか? お客様は、お客様っすよ。神様じゃ無いっす。同じ人間じゃないっすか? 今どき、そういうのは流行らないっすよ」
「もう、バカバカバカ! 樋口くん! さっきのお客様は、ゼウス様と天照大神様だよ。本物の神様なの!お客様で神様なのっ!」




