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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第六章

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第99話 『胡蝶』第一艦橋

「駆けつける……との言い方はどうなのでしょうね。どうせ、我が軍の邪魔をするために来るのでしょう?」


 主艦橋後方の司令官席に腰掛けた月夜見とその側に立つ射流鹿の会話に、戦艦『胡蝶』の艦長が加わって来る。


「帝の私兵である近衛軍としては、日嗣皇子が戦場に出たと聞いたら駆け付け(・・・・)ざるを得ない。その上で『加勢しない』ためにどんな理屈を捏ねるか……楽しみにしようではないか」


 月夜見はパウチ容器の紅茶を飲みながら笑う。


「もしも、率先して第3戦団が州都を焼き払う行動に出たら……僕としては、振り上げた拳を下ろせなくって立場がなくなりますね」


 射流鹿の冗談(・・)に、主艦橋にいる全員が笑う。



「あの……月夜見つくよみ様」


「何か?」


 おずおずと近付いてきた『胡蝶』の艦長が、月夜見の耳元で小声で囁く。


「この席は、部隊の司令官のす席ですので……この度は、大兄おおえ様に譲られては如何いかがでしょうか」


「……」


 言われて、月夜見自身が「しまった」と言う顔になる。


「射流鹿!」


 隣に立っていた射流鹿を呼び、月夜見は席から立ち上がる。


「ここがお前の席だ」


「あ、有り難う御座います」


 取り敢えず、礼を述べて月夜見が退けた席に座すことにする。


「私の尻で暖めておいたぞ」


「……」


 なんと返事をしたらいいのか困惑する射流鹿。


「……有り難う御座います」


 唐突過ぎて意味が解らぬうちに、もう一度礼を言ってしまった。その様子を眺めている幹部将校たちからは、再び笑い声が漏れた。



 第2戦団で「入鹿玲=射流鹿」であることは、月夜見とその側近しか知らない事実だったが、第1戦団に所属する『胡蝶』は、射流鹿専用機の11番機の母艦であり射流鹿を知る者(・・・・・・・)の艦でもある。

 乗員の年配者には、射流鹿を幼少時から知るものもいる。


「大兄様()女の尻に敷かれるタイプだな」


 大兄は次の帝の候補者のことだ。月夜見と射流鹿のやり取りを見ていた幹部将校の印象は、それだった。



 第3戦団、その南部方面軍の重甲機兵だけでも機体数は約20機。これを『朱雀』と『胡蝶』の約10機で迎え撃つのだから、楽な戦いではないはずだった。


「ナーガオウ州軍も、黙ってはいないでしょうね」


「州軍の正規部隊が出てくれば、その場で州都を焼き払います。ルージュピークに立て籠もる叛逆部隊制圧に際して『戦力がない』と、彼らは逃げましたからね」


 幹部将校の一人の問いに、射流鹿は即答する。


「協力する責務を果たさなかった以上、襲撃事件の協力者として無制限かついかなる法の制限も受けない報復を行います」


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