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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第六章

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第96話 面倒くさい女

 ルージュピーク演習場の放棄そしてナーガオウ州議事堂の包囲への方針変更は、戦艦『朱雀』に伝えられる。八須賀はちすか大佐は、重甲機兵の装備変更を整備班に指示した。

 戦艦『朱雀』のジークフリードは、左腰の打刀はそのままで右手にロケット砲、左手に凧型盾(カイトシールド)を装備した。凧型盾(カイトシールド)の内側にはロケット砲のカートリッジを装着する。

 人型である重甲機兵は、遠距離攻撃をしながら距離を詰めて、盾とロケット砲を捨てれば、剣を抜いて近距離戦へそのまま移行できる。



 GV3X(サンダバード)も、他のジークフリードと同様の装備に変更される。珍しく刀自古が中央デッキに降りてきて、御堂と青柳に対してヒアリングをしていた。


「お二人で上手くやっていけそうかしら?」


「はい! 大丈夫ですぅ」


「はい……多分」


 元気に即答する青柳に対して、御堂は少し煮え切らない。

 青柳の習得力と適応力の高さには、整備班も模擬戦の相手をしていた2番機パイロットも驚嘆していた。青柳自身は、GV3X(サンダバード)を気に入ったようで色々なことに意欲的とは聞いている。


「何か、気になることはありますか?」


「何にもないですぅ!」


「……」


 元気一杯な青柳に気圧されて言葉を出せない御堂。刀自古には、何となく御堂の考えていることが想像できた。

 ……面倒くさい女。御堂に対する印象が甦ってくる。


「御堂准尉が体調不良のようですから、GV3X(サンダバード)は戦闘には参加しなくて結構です。パイロットは、トイレ掃除を担当していて下さい」


「ええぇ?」


「……はあ?」


「艦の乗員には作戦行動に専念して欲しいですからね。トイレ掃除の当番を肩代わりしてくれる者がいたら、皆さんから喜ばれると思いますよ」


「ええぇ!」


「ちょ……待って下さい!」


八須賀はちすか大佐には、わたしの方から伝えておきます。青柳少尉の分も、御堂准尉が引き受けることでよろしいですね?」


「それならいいですぅ!」


「待て! こらアァァァ!」


 戦艦『朱雀』の中央デッキに、御堂の怒声が響き渡った。



 猫のような素早さで青柳は、刀自古の背中に隠れていた。背中で震えている青柳をチラリと見て、刀自古は御堂をいさめる。


「御堂准尉、上官を虐めては駄目ですよ」


 御堂よりも年上で階級も上である青柳は、小柄で童顔。知らない者なら、10代の少女と疑わない見た目である。


「虐めてないじゃないですか!」


 刀自古への抗議の声が、思わずまた大きくなる。


「うわぁ、ごめんなさいぃですぅ」


 半泣きになって脅える青柳の頭を刀自古が撫でている。それを見て、御堂の胸には絶望に近い不安が過る。

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