第89話 同調調整
御堂は、GV3Xで3回目の2番機との模擬戦を行っていた。
ジークフリード型A級機体である2番機の機動性に、B級機体のはずのGV3Xが見劣りせずについて行く!
(あの娘、結構すごいじゃん!)
2番機が行う補助推進制御を見よう見まねで学習し、それをGV3Xの機体で実現させているのだ。
臨機応変な対応は苦手だが、マニュアル化された操作は正確で習得が早い。御堂も、見直さざるを得なかった。
今回の模擬戦では、既に1時間も鍔迫り合いで互角の鬩ぎ合いを続けている。
「ごめんなさい、バッテリー切れですぅ!」
語尾に妙なアクセントが入る独特な喋り方をするのは青柳礼子少尉。
「え……ええ?」
なんで?……と思っているうちに、青柳は停戦の信号弾を打ち上げていた。
戦艦『朱雀』の中央デッキ格納庫で台座に座すGV3X。その脚下に降りたところで、青柳が御堂に何度も頭を下げている。
「ごめんなさい。バッテリー残量に気が回らなかったんですぅ」
何度も何度も下げる姿を見てると、御堂も怒るタイミングを失してしまう。
(何か……怒れないのがストレスになってない? あたし)
同じB級機体でもGV3Xのバッテリー消費は、GV4やGV3よりずっと激しい。バッテリーの残量は、特に神経質にチェックすべき項目だった。
(玲なら絶対しないミスだよね、これ)
今回は模擬戦だった。もしも実戦ならば……今日も死んでいたかも知れない。
「嬢ちゃん、お嬢ちゃん。お客さんだよ」
整備班の主任である興田大尉が2人に声をかけてきた。興田は、御堂を「嬢ちゃん」と呼び、青柳を「お嬢ちゃん」と呼ぶ。青柳の方が、御堂よりも年上で階級も上ではあるが、見た目は幼いためだ。
興田の声で御堂が振り返る前に、青柳が直立して敬礼する。そんな青柳に違和感を感じながら後ろを向く。
「八須賀大佐!」
不死鳥京へ向かい、戦艦『朱雀』を留守にしている月夜見に代わってルージュピーク遠征部隊を任されている八須賀和紀大佐だった。その後ろには、直前まで模擬戦を行っていた2番機のパイロット2名もいる。
「GV3Xの同調調整はどうか?」
「……え、あの……バッテリーで……その」
八須賀大佐の問いかけに、緊張で呂律が回らない上に支離滅裂な返答をしている青柳。見かねた興田が、青柳の代わりに状況を説明する。
模擬戦の状況も、2番機でSVを務める有本大和大尉が説明してくれている。青柳の方は、顔を真っ赤にして俯いていた。
(ホントに……ホントに大丈夫なの? この娘で)




