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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第六章

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第87話 青柳礼子

 御堂の新パートナーとなった青柳あおやぎ礼子れいこ少尉。整備班のスタッフには、すこぶる評判がいい。整備班の主任である興田おきた大尉は言う。


「坊ちゃんは、とにかく機体の扱いが荒い。機体丸ごと全部、消耗品としか思ってなかったんだろうな」


 坊ちゃん、とは入鹿のことだ。御堂のことは、嬢ちゃんと呼んでいる。ちなみに、見かけが御堂より幼く見える礼子のことは「お嬢ちゃん」になっている。


「お嬢ちゃんは、優しいんだよ。各部の過負荷が小さいし消耗部品の減りも少ない。再出撃に要する時間を大幅に短くできそうだ」


 興田大尉の褒め言葉に、礼子はにへら(・・・)と顔を弛ませる。


「お嬢ちゃんは、もう一度Sユニットに入ってくれ。操縦席のサイズ調整と、神経電流の接続も調整するから」


 機体とパイロットの同調調整には、通常なら2週間は要する。それを、今回は1週間で行うように指示が出ているらしい。GV3X(サンダーバード)と礼子には、整備班のスタッフが付きっきりである。

 御堂は、礼子を残して『朱雀』中央デッキを後にする。



 相変わらず、月夜見つくよみが不在の司令官室では、刀自古とじこが自由に振る舞っている。


「あの娘、ホントのホントに大丈夫なんですか?」


 2番機との模擬戦の戦闘記録を提出しながら、御堂はつい疑問を口にしてしまう。


「貴女よりも年上ですし、階級も上ですよ?」


 あの娘……呼ばわりしたことを注意する。とは言え、青柳礼子の見た目は御堂より幼く見えるのは事実だし、本人自身が御堂の妹然として振る舞っている。


「18歳で近衛軍に志願入隊し、6年の軍務経験があります。SVとしての能力ならば月夜見様が大変評価しています」


「実戦の経験は、どれくらいなんですか?」


 御堂の問いかけに、刀自古が数秒沈黙した。


「実戦に参加したのは3回。撃破数はゼロですね」


「3回って……仮配属の、あたしより少ないじゃないですか!」


 主に工場からロールアウトしたGV3型式重甲機兵を調整する任務に就いていた、と御堂も本人から聞いている。実戦経験が少ないから、実戦に慣れている御堂はお姉さん(・・・・)なのだそうだ。



 工廠施設での第3戦団南部方面軍との戦闘。そこでの御堂の命令違反は、入鹿の急な異動と重なって有耶無耶になっているらしい。御堂に特に厳しい刀自古も、その件には全く触れてこない。


「間もなく大きな戦闘になるそうです。大きな戦闘と言っても、決して重要とは限りません。ですから無理はしないで下さい」


 ……え?

 刀自古が、御堂を労るような発言をしたのは初めてな気がする。

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