第86話 新しいパートナー
「さあて、行きますか!」
御堂は、GV3XのCユニットからSユニットへ呼びかけた。
「は、はい!」
Sユニットからは、オドオドした女性の声が返ってくる。
(大丈夫なのかな?……この娘で)
脳裏を過る不安を振り払って、眼前のスクリーンに映っている相手に集中する。
GV3Xが腰の模擬刀を抜いて、剣先を右脇から後方へ回す。それを受けるように、正面のA級ジークフリードも模擬刀を構える。
ジークフリード型A級重甲機兵の2番機。第2戦団のエース機で、ルージュピーク制圧部隊に派遣された唯一のA級機体。
帝が所有するとされる22機のA級ジークフリード型機体は、タロットカードの大アルカナに準えて0から21の番号で呼ばれている。俗に『アルカナ・ナンバー』と呼ばれる機体の一つであり、帝国が保有するA級機体の中でも頂点とされる。
機体の性能、パイロットの技術……全てにおいて御堂が優位を取れる要素はない。
2番機との距離は100メートル以上ある。GV3Xは、全身の推進機関を一気に全開にして突進した。
間合いに飛び込むなり、右脇に引いた模擬刀を全力で回転させる。
(同時の打撃判定で、相打ちだったら儲けもの!)
敢えて左肩に隙を見せて、そこに打ち込みが来るのを誘った。しかし、2番機はそれに乗らず、同じく推進機関を全開にして突進してきた。
剣先に勢いが乗る前に、2番機の模擬刀で弾かれてる。勢いを殺しきれずに機体が流されて、再び距離が離れる。
2番機を正面に捉えようとして振り返ると、そこに模擬刀が投げつけられた。
「え、えー?」
Sユニットから頓狂な声が響く。
2番機に投げつけられた模擬刀を、GV3Xは機体の正面で剣を逆袈裟に振るって薙ぎ払った。
剣先が天に向かう刹那、2番機はGV3Xの間合いに飛び込んで、その頭部を素手の右手で押した。
「あ、ああーーーー」
バランスを崩したGV3Xが背中から倒れ込むのと、Sユニットから脱力した悲鳴が響くのはほとんど同時だった。
GV3Xと2番機の模擬戦は、GV3Xの完全なる敗北で決した。
「ホントに申し訳ないですぅ」
御堂に、ひたすら頭を下げているのは青柳礼子少尉。入鹿に代わってGV3XのSVとなり、現在は機体との同調調整をしている。
「いや、どうせ調整のための模擬戦だしさ」
24歳で、御堂より年上。階級も少尉。
しかし、その容姿は小柄で幼く見える。なのにパイロットスーツの上からでもわかる胸の大きさ。
(この娘……わざとやってる?)




