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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第五章

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第84話 議会の原則

 帝国の首都、不死鳥(きょう)の皇城府の安全保障局本部。

 その一室で、同盟議会の議長・錦城(きんじょう)ジンは数日ぶりに手足の拘束を解かれた。

 尋問室である。シングルの客室程度の広さで、入口は一つ。その入口の近くに一脚の椅子があるが、錦城議長は部屋の中央に立たされている。



 入口から振袖の女性と白小袖しろこそで緋袴ひばかまを纏った女性が入ってくる。白小袖の女性が椅子に座り、振袖の女性はその脇に立った。


「さて。同盟議会の議長さまに、お願いがあります」


 錦城議長は、返事をせずに目を背けた。


「貴男は同盟議会を私物化し、『ルージュピーク侵攻部隊の指揮権を第3戦団に委ねる』との議決を通しました」


「私物化などしていません! 議会の、帝国市民の意思です!」


 錦城議長は強い口調で否定した。しかし、白小袖の女性は全く意に介さずに言葉を続ける。


「その時の評決は反対51、賛成58、棄権41だったそうですが……賛成を投じた議員は、貴男と同じく反逆罪です。安全保障局の逮捕の対象ですので、その投票データを渡して頂きたいのです」


 何を今更……と思う。同盟議会のサーバー上のデータは、全て安全保障局に押収されている。議長の同意など必要なく解析されているはずだ。


「貴男が投票データを提供してくれないと、賛成した者を特定できません。そうすると同盟議会の全議員を逮捕しないといけません」


 全ての議員を逮捕する等できるはずがない!……と思った。だが、錦城議長は考え直す。安全保障局ならやりかねない、と!


「貴男の都合も理解しているつもりです。貴男の派閥議員は皆が『賛成』に投じたと思いますので、派閥の力関係に影響がでるかも知れませんね。再選挙で新しい議員が選出されることになっても、貴男の派閥はかなり減少するでしょうね」


 それなら全議員が逮捕され、全議席で再選挙の方が派閥的には影響が小さい。


「でも正しい投票した議員が、巻き添えになるのは理不尽だと思います」


 錦城議長は理解した。今、自分が試されているのだと。

 派閥が多数派を維持するために、議会の匿名性の原則を口実(・・)にできる。無辜むこの議員を巻き添えにして。

 無辜むこの議員を巻き込まないために、議会の匿名性の原則を捻じ曲げて、更に自らの派閥を衰退させるか。


「どうでしょう、協力して頂けますか?」


 錦城議長は『議会の匿名性の原則』を選んだ。



 再び手枷と足枷を嵌められ、錦城議長は審問室から連れ出される。


「ほらね。利権にしがみついてる人間は、我が身が滅んでも利権を手放そうとしないものなのよ」


 白小袖に身を包んだ太后おおきさきはクスクスと笑った。

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