第82話 謝罪
一部を破壊された工廠施設。重甲機兵の整備に支障が出ることが判明して、放棄が決定する。軍事拠点として再稼動できないよう要所を爆破する準備に入った。
「申し訳ありませんでした!」
作業が一段落し、ロビーに集まった兵員たちの前で御堂は頭を下げる。
B級重甲機兵が6対3の不利な状況。機体から降りたパイロットに空中移送機をぶつける奇襲……成功するかに見えた奇襲も、御堂の衝動的な行動により失敗し、乱戦となる。
入鹿が敵リーダー格の将校と白兵戦となったため、Sユニット操縦者を欠くGV3Xは戦えなかった。
5対2の不利な乱戦をかろうじて凌ぎ、施設の一部破壊だけで済んだのは幸運だったと言える。
今回の御堂は、足を引っ張った上に役立たずであった。
御堂の謝罪に、パイロットの山本中尉と新藤中尉は、返答ができずに顔を見合わせるしかなった。絶対に許されない行動である以上、厳しくすべきだが……可哀想との心情が働いてしまう。
「まあ、もともと長期の駐屯の予定ではなかったからな」
施設班・責任者の新藤少佐が、御堂を慰める発言をして頭を上げるように促した。パイロットの新藤中尉は、施設班の新藤少佐の弟である。
兄が許したのを受け、新藤中尉も御堂の謝罪を受け入れる。山本中尉もそれに続いてくれた。
「鉄のロボットは壊せても、生身の人間は殺せなかったかい?」
「……はい」
ベテランの2人の中尉は、ため息をつく。しかし2人とも御堂の心情には、同情を寄せている風である。
御堂が、一番謝らなければいけないのは入鹿なのだが……その入鹿の姿が、ロビーのどこにも見つからない。
「玲!」
発着路のアスファルトの上に、片膝をついた姿勢で駐機しているGV3Xの側に入鹿は立っていた。いつの間に着替えたのか、入鹿はパイロットスーツではなく第2戦団の赤い軍服を着ている。
「玲ってば!」
入鹿の背中に向かって御堂は繰り返し呼びかける。入鹿は、その声に一瞬だけ振り向いたが、無視するようにまた前を向く。
「こらあ! 無視すんな!」
入鹿の前に回りこんで、胸座を掴む。
「貴女とは口を利きたくありません……と言ったはずです」
「何よ、それ。6歳離れた婚約者の話をした時のことじゃん!」
入鹿は顔を背けて、御堂の顔を見ないようする。
「空中移送機の件を謝りたいから、ちょっとの間だけ口をきいて下さい!」
「謝らなくても結構ですから、話しかけないで下さい」
「じゃあ、許してくれるのね。ありがとう!」
入鹿の胸座を掴んだまま、御堂は感謝の礼を述べた。




