第80話 カウントダウン
御堂をCユニットに残し、入鹿は1人で地表へ降りた。
これから、5分のカウントダウンがスタートする。
山本機と新藤機の足下。2人の中尉は、振り向いて入鹿を待っている。更にその先に、緑の軍服の第3戦団のパイロットが3人。
軍刀を腰に吊す将校……第3戦団陣営の指揮官だろう。他の二人を従えるように2歩程度前に立っている。
ゆっくりと歩き出す。
山本機と新藤機の間を通り抜ける時に、両機が重く低い駆動音を響かせているのを確認しておく。2機ともZCF機関は臨界状態で、戦闘モードへ移行すれば直ぐに戦える。
軍刀を腰に吊す将校は「第3戦団の南部方面軍より派遣された大崎ケン中佐」と名乗った。
大崎中佐は、士官候補生の入鹿を無視しようとした。3機のジークフリード分隊の指揮権を入鹿が有すると知ると、今度は山本中尉と新藤中尉を挑発するように嘲笑する。
表情を変えず、挑発に乗らない2人に対して苛立つのが見て取れた。
「士官候補生ごとき指揮下の部隊と話し合う必要はない。これより直ちに、貴官らは私の指揮下に入って貰う。異議は認めん」
大崎中佐は2人の部下を手招きし、工廠の建物に入ろうとした。
その3人の前に、入鹿は立ち塞がった。
交渉開始から2分経過。
「俺は、同盟議会の『ルージュピーク侵攻部隊の指揮権を第3戦団に委ねる』議決に基づき南部方面軍から派遣されている。帝国民を護るべき近衛軍人が、同盟議会の意思を蔑ろにする気か?」
……心にやましさのある人間ほど、主語を大きくしたがる。
「同盟議会を私物化し『不法な決議』を誘導した議長は、安全保障局に反逆罪で逮捕されました。反逆者に加担することが、第3戦団の意思ですか?」
「……」
大崎中佐の顔が歪み、そして大声で怒鳴り出した。
「それはどこの情報か? デマに踊らされ、それでも近衛軍人か!」
……不都合な真実を突き付けられるとデマ扱いか。
「情報の精査もできない馬鹿者に施設を任せておけるか! この件は不問としてやるから、管理用のIDカードを置いて帰還せよ!」
……反逆に加担するのを承知の上で、息をするように嘘を吐く。
交渉開始から4分経過。
「……お前?」
大崎中佐は、入鹿の顔を凝視していた。そして、入鹿に従う2人の将校に改めて視線を向けた。
「そうか……そう言うことか」
大崎中佐の左手が軍刀の鯉口を握り、右手が柄へ伸びる。
刹那!
「身を隠して下さい!」
山本中尉・新藤中尉に指示を飛ばす。そして、山本機と新藤機の陰に3人が走り出した。
上空から、空中移送機が突進して来る!




