第77話 第3戦団
翌朝、9時35分。
戦艦『朱雀』中央デッキ下の格納庫で、台座に腰掛けるGV3Xの前で御堂は、入鹿を待っていた。側には刀自古がいる。
「玲、おはよう!」
格納庫に姿を見せた入鹿に大声で呼びかける御堂。入鹿の方は、一瞬だけ視線を向けたが無言で視線を逸らす。6歳の婚約を揶揄われた件は、入鹿の中では遺恨のまま。その遺恨を、御堂が逆に面白がっているのだが……それは入鹿の理解の外だ。
「御堂准尉を、確かにお返ししました」
そう言って、刀自古は深めに頭を下げる。刀自古の顔には、疲労の色が浮かんでいるように見えた。
寝坊した御堂を叩き起こして、シャワーを浴びさせ朝食を食べさせ着替えさせて、ここへ連れてきたと言う。その、寝起きの悪さを語ろうとしても言葉にできない風だった。
刀自古が格納庫を去って。入鹿は、興田大尉をはじめとする夜間作業でGV3Xを整備してくれた整備班スタッフに礼を言い頭を下げる。
入鹿につられて御堂も頭を下げるが、スタッフからはヤジとも応援とも取れる声が飛んだ。
「返品されて元サヤかぁ!」
「やっぱり坊ちゃんが責任持つないなぁ」
「今度は満足させろよ!」
当の御堂は、ヤジに手を振って応えている。入鹿は呆れと感心の混じる複雑な感覚を覚えた。
戦艦『朱雀』の中央デッキから飛び立てば僅か数十分の空の移動である。直ぐに工廠施設が見えてくる。
「玲、ちょっと」
五感の優れる御堂は、正面スクリーンの映像から工廠施設の異変に気付く。
「ジークフリード型が6機いる!」
「え?」
サブウィンドウに、機械眼球が捉えた映像を拡大させてみる。空中移送機の発着路に、第2戦団の山本機と新藤機が片膝をついた姿勢で駐機し、山本中尉と新藤中尉が立っている。
その2人に対峙するように、近衛軍の制服を着た軍人が3人。その背後には6機のジークフリード型重甲機兵があった。
後方の3機は直立姿勢で、後方支援用の火器を装備。前方の3機は片膝をついている。山本中尉と新藤中尉の正面で対峙している3人がそのパイロットだろう。
「第3戦団の戦団章よ」
緑地に黒い不死鳥を描いた紋章。第3戦団の戦団章であり、6機のジークフリードの胸部にはそれが描かれている。
空中移送機で、6機のジークフリードの脇を通過しながら『着陸を希望』『発着路を空けろ』の信号弾を射出した。しかし、6機のジークフリードからの返信はなかった。
「第3戦団の6機のジークフリードを撃退します」
Cユニットからは入鹿の姿は見えない。しかし、その声には拒否を許さない決意が感じられた。




